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悪条件にも自然体 英ランナーに見た「無の境地」
4月のかすみがうらマラソンでスカッとしたタイムを出すぞという意気込みはあるのだけれど、ランナーとしてはだらしがない日々を送っている。海外にいることが長かったせいもあり、トレーニングらしきものはできていない。
ブラックプールの海岸から吹きつける冷たい風雨にも負けず、ランナーたちは黙々と走った
■心の疲労に、悪天候が追い打ち
東京マラソンがあった2月22日に、滞在中の英国でハーフマラソンに出るつもりでいたが、直前になって見送った。理由はいくつかある。愛媛マラソンから2週間しかたっていなかったため、心身の身というより心のほうに何となく疲労を感じた。
かつては2週連続でフルマラソンを走ったこともあるのに、いつの間にかそういうことには脳がブレーキを掛けるようになったようだ。年齢のせいといわれれば、そうかもしれない。ハーフマラソンとはフルマラソン以上にゼイゼイするものなので、「そんなことしたくない」と脳が拒否したのではないだろうか。
ハーフはつらいよねと思っているときに、天気予報を見てしまったのがまたよくなかった。レースが行われる英国北西部ブラックプールの2月22日の天気は「大荒れ」で「強風に雨のち雪が重なる」という予報だった。最高気温は2度らしい。
私の心は前夜のうちに「棄権」に傾いた。宿泊先の友人が前日、パスタをつくってくれて、当日朝は弁当としておにぎりを握ってくれたというのに、私は出かける前からできればレースを避けたいという気持ちになっていた。
海岸には荒涼とした景色が広がっていた
まあ、とにかく現地まで行ってみようと、重い腰を上げブラックプール入りしたが……。スタート時間の2時間前の午前9時に到着すると、すでに風がかなり強くなっていた。気温はやはり2度。コースは海沿い。大西洋の波は荒れていた。
「やめる」と友人にメールを送ると「おにぎり返してください」と返信がきた。何といわれようと構わない。やめる。ぜったい、走りません。
風が吹き付けているので体感温度は氷点下だったと思う。それでも袖なしのランシャツに短パンのランナーが何人かいる。あの肌はいったい、どういうつくりになっているのだろう。ちょっと触ってみたくなった。たぶん固いんだろうな。それとも、長袖シャツを持っていないのだろうか。その疑いもある。
スタート会場にはもちろん震えているランナーもたくさんいた。若者に「走るには寒すぎじゃない?」と尋ねると、「レースがきのうだったらよかったんだけどなあ。正午には雪が降り始めるらしい」と憂鬱そうに答える。