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泣ける猫本が増えている? 猫の物語に別れの日を思う
『てつぞうはね』に登場する“ソトとボウ”にソックリの筆者の猫たち
職場の同僚の飼い猫(10歳超)が乳がんだと診断され、さらに子宮筋腫まで見つかり、大手術を受けることになった。
「おたくの猫ちゃんたちは大丈夫?」と尋ねられ、ウチの“子たち”を思う。ウチには12歳のオスが1匹と11歳のメスが2匹の計3匹がいる。人間の年齢なら60~70代に相当する“高齢期”の猫たちだが、幸いにも目立った衰えもなく、健康だ。
けれど、振り返ると飼い始めてからの10年はあっと言う間だった。それはイコール、“残りの時間”もあっと言う間に過ぎる、ということなのだと、気づいた。筆者にとって3匹は人生で初めての猫。まだ“別れ”を経験したことがない。少なくとも、この先3回はある“別れ”のとき、自分はどんな気持ちになるのだろうか? 猫はどんな気持ちなのだろうか? そんなことを考えながら、猫好き仲間から勧められた本をいくつも読んだ。
『うちの老猫の言うことにゃ』(ふじのはるか:著/富士見書房)
作者のふじの氏の家庭で飼われていた老猫パプア・愛称プーさんが19歳という老猫になってからの日々を淡々と、それでいて愛情にあふれた目線で描いたコミックエッセイ。飼い主夫妻の言葉をまるで理解しているかのようなプーさんの言動(?)は、猫飼いの人なら「あるある」といちいち頷き、「ああ、それかわいいなぁ」と思わずニヤけてしまうエピソードがいっぱい。
夫・ぞぞ氏が寝坊し、「プーサンが起こしてくれないからだ」と言えば、翌日から起こしてくれるようになり、ご主人の旧車のパーツをねだりに来た“気に入らない若者たち”には速攻で噛み付いたり、猫なのになぜかハーブティーが好きだったり、歌うように長々と鳴いたり。
そして、20歳の誕生日を迎えたプーさんは、次第に衰え始める…。1度は「ヤバそうだ」という状況を乗り越えたプーさんだったが、しばらくの後、再び起き上がれなくなり、2日後…最後に「あまりにも優雅」な伸びをして、息を引き取る。
1度目の危機を乗り越えた翌日、「階段上ってる」「水飲んでる」「普通の姿がうれしくてうれしくて」と幸せを感じるふじの氏の反応。プーさんが息を引き取った後、会社で仕事中の夫・ぞぞ氏にかけた電話でうまくしゃべれなくなったり、火葬の際にダンボールの棺にプーさんの好きだったものを詰めてあげたり。夫妻が思い出して口にする「楽しかったね」の言葉。気づけば涙がこぼれていた。
小説や絵本にも“猫との別れ”を描いた作品がいくつもあった。
絵本『てつぞうはね』(ミロコマチコ/ブロンズ新社)では、「だれもがおそれるあばれねこ」“てつぞう”と、唯一心を許している“わたし”との物語。
白いふかふかのてつぞうは、大きなおにぎりのよう。“はるのてつぞう”は、散りゆく桜の花びらを追いかけ、“なつのてつぞう”は、ひんやりした洗面台で寝る。雷が怖くて震え、掃除機には止まっているときにパンチ。
そんなてつぞうは「8かいめのふゆ」に小さく小さくなって──動かなくなった。
次の春にうちに来た白黒のハチワレ猫のきょうだい“ソト”と“ボウ”は、てつぞうのトイレを使い、てつぞうの皿でご飯を食べる。そして、同じ洗面台で眠り、「さくらのはなびらをおいかけるのもいっしょだね」。
家族としての“猫の代替わり”が、ほのぼのと描かれている。今の猫たちとの別れのあと、やはり自分も“次の猫”を飼いたくなるのかな、と考えた。ちなみに、この絵本に出てくる“ソトとボウ”は、ウチの双子のメス猫たちにそっくりで、初めて読んだときには、その偶然に驚いた。
他にも『旅猫リポート』(有川浩/文藝春秋)では、とある理由から飼っている猫の貰い手を探す旅をする主人公と猫、それぞれの視点で“別れ”が描かれているし、対称的に『連れ猫』 (吉野万理子/新潮社)では、身勝手な飼い主のせいで離れ離れになった2匹の猫たちが、次から次へと別の人間に貰われて行く悲しい物語を、猫目線で描いている(最後は少しホッとします)。絵本『エングレペルス』(イベン・サンデモーセ:絵・文、小柳隆之:訳/ネット武蔵野)は、愛猫の死に直面したときに読むと、死んでしまった猫が幸せに暮らしているのだと感じられて、癒される1冊。
猫や犬など、かわいいペットを飼いたい人の気持ちは良く分かるし、いたら本当に癒やされる。けれど、かわいい“わが子”たちを見送るのは、間違いなく飼い主である人間だ。避けては通れない“ペットの死”を受け入れ、ペットロスにならないよう、“幸せな別れ”を読んで、心の片隅においておきたい。
そして、一緒に暮らすペットには、いつも優しく祈ろう。ふじのはるか氏の言葉を借りて。「長生きしなさい」と。
文=水陶マコト
本記事は「ダ・ヴィンチニュース」から提供を受けております。
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