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初めて「読者のため」に書いた これぞ道尾秀介流エンタメ小説の極致

初めて「読者のため」に書いた これぞ道尾秀介流エンタメ小説の極致 

 『透明カメレオン』(道尾秀介/KADOKAWA 角川書店)

  道尾秀介は2015年に作家デビュー10周年を迎える。それを記念して刊行される作品が、長編『透明カメレオン』だ。実はこの小説、道尾が初めて「読者のため」に書いた作品だという。

 「これまではすべて自分のために書いてきたんですけど、10周年記念ということで読者や書店さんにお礼をしたいと。小説の面白さ、感動やハラハラドキドキの要素をすべて詰め込んで、なおかつ物語として美しくまとまったものを目指しました」
  
  構想を練り始めたのは12年2月のことだった。新聞連載という媒体は決まっていたがそれ以外は白紙、今回はエンターテインメントに徹するという大目標だけがあった。

 「内容について最初に決まったのは全体のカラーです。泣けて笑えて、というエンタメの本流をいくものにしようということは、はっきりしていました」

  新聞連載ということで気を遣った部分はなかったのだろうか。

 「連載のごく限られた枚数だと、物語が動かない回も出てくるんです。だから会話だけでも楽しめるとか、キャラクターが動かなくても何かの要素に注目してもらえれば読み進められるとか、そういうことは新聞に限らず、いつも意識していることです。ただ今回の場合は、読者への恩返しという意味のある作品ですから、立ち上がりをゆっくりにせず、ページをめくり始めたらすぐその恩返しが始まっていることにしようと考えました」

  主人公の〈僕〉、桐畑恭太郎はラジオのパーソナリティだ。月曜日から土曜日までの深夜に放送している「1UPライフ」は、もう7年も続いている番組で、恭太郎が行きつけのバー「if」で見聞したことを脚色して伝えるトークも人気がある。しかし、思春期の頃の恭太郎にとって自分の声はコンプレックスの対象でしかなかった。地味な容姿にそぐわない美声が、周囲に違和感を与え不要な注目を呼ぶ。文字通り声をひそめるようにして生きてきた恭太郎だったが、ラジオという天職と巡り会ったことが人生の転機になった。

 「ラジオのパーソナリティという職業は、主人公の設定としていつか使ってみたいと思っていたものでした。声はいいけど見た目は駄目とか、この設定ならではというアイデアがたくさん溜まっていたんです。それらを詰め込んで、彼を設定しました。ただ、ラジオブースに彼がいる描写がよく出てきますが、深夜番組ということもあって風景がまったく変わらないんですよね。その閉塞感みたいなものを読者に感じさせないように、場面転換の仕方に凝ってみたり、ブースや『if』という小さいバーから彼が出たときには広いところに行かせて対比を出したり、配慮をしています。行動を派手にして最後はカーチェイスまで、というのもストーリーを決める前から考えていたことです」

  主人公がラジオのパーソナリティという設定は、構成にも影響を与えている。場面転換には恭太郎のトークが挿入され、物語の流れに一定のリズムを作り出しているのである。

 「肝腎のラジオ放送の部分がつまらなかったら意味がないので、読んでもおもしろいものにしたかったんです。話のブリッジにラジオ放送を入れていくということも早期の段階で決まっていました。でも、それがつまらなかったら、実際にラジオを聴いたほうが早い、と読者に思われてしまう。ですからラジオの部分に意味を持たせる必要があったんです」
  
 ●決して作り物にならないキャラクターを書くために

  道尾作品は大きく2つに分類できる。1つは直木賞受賞作『月と蟹』のように、登場人物が等身大に近く感じられるもの、もう1つは『カササギたちの四季』などの、デフォルメが効いたキャラクターが活躍するものだ。『透明カメレオン』はコミカルな場面も多く、どちらかといえば後者に属する作品である。

 「どこまで人物描写をリアルに徹するかということが創作の手順では最初に考えることだと思います。両者の違いを説明するときによく、一方は普通の卵でリアルエッグタイプ、もう一方はコンビニのサラダなどに載っている、金太郎飴のように長く加工されたロングエッグタイプという風に言っているんです。どちらも「卵」であることには違いがない。ただリアルエッグタイプの方は、取り扱いにより注意する必要があるんです。例えば『月と蟹』の最後に意外な落ちを持ってくることは書こうと思えばできますが、それだと畳の上に電子レンジが置いてあるような違和感を持たれてしまう。キャラクターにやらせられないことがあるんです。対してロングエッグタイプは、物語のためのキャラクターなので作者としては使い勝手がいい」

  動きの多い『透明カメレオン』にはぴったりというわけだ。しかし、だからといってキャラクターが薄っぺらいものになるということではない。登場人物の一人ひとりに寄り添い、彼らと同化するようにしてその心情を書いていくというのが道尾のやり方だが、本作のキャラクターたちも、端役に至るまで全員が陰影の濃い人物として描かれている。主人公をはじめ、その喜怒哀楽がダイレクトに読者には伝わってくるのである。

 「ラジオのパーソナリティというのは特殊な職業ですが、決して人としては特殊にしたくなかったんです。小説は普通の人が読むものですし、読んでいる自分と同じ弱さを持っている人間の姿を見てほしいなと思いました。主人公たちの身の上に起きる出来事の中に、現実にはありえないものは一つもありませんから。人間の持っているいろいろな面を、できるだけデフォルメして書きたかったんです」

  物語は、「if」に三梶恵という若い女性が訪ねてくることから始まる。いっぺんで彼女に心を奪われてしまう恭太郎だったが、実は恵は一筋縄ではいかない性格の持ち主で、「if」の常連たちは彼女のために散々振り回されることになるのである。

 「恵は人を傷つけることができない性格なんだと思います。書いていると、ちょっとした仕草とか言葉のはしばしでそれがわかるんですよ。たぶん彼女は人を傷つけてしまったら、心の底から後悔してしまうような人でしょうね。そんなキャラクターに、すれすれの嘘を吐かせるのは、書いていて楽しかったです」

  その通り。トラブルメーカーだが、どうしても憎めない。そんな魅力ある女性が本作のヒロインなのである。読者は恭太郎になりかわり、恵の一挙一動にどぎまぎさせられることだろう。いつもながら、登場人物に感情移入させてしまう道尾の力には嘆息させられる。

 「重要なのは全部書かないこと。例えば現実の中でも、他人の悲しい話を聞かされて自分もそういう気持ちになっても、一晩寝れば忘れてしまったりする。でも、ふとしたことで誰かが悲しい顔をしているのを見てしまうと、そのことを何日も忘れられなかったりしますよね。自分が気づいたことは深いところで考えるからなんだと思います」
  
 ●展開、題名、そして文体 すべてが備わった完全作

 『透明カメレオン』という題名にまつわるエピソードは物語の中途で出てくる。書いた瞬間、題名はそれしかないと迷わずに決めたという。執筆の間ずっと道尾の卓上には、スワロフスキーの透明なカメレオンの置物がお守りとして鎮座していた。

  今回の作品のもう一つの特徴は、物語にふさわしい文体を選択できた点にもあるという。

 「ラストを書くまで決めかねていました。それこそ修正の段階で全部文体を直してもいいかな、と思っていたくらいで。でも、いざ書き終えてみたら、それまで使っていた文体が、恭太郎の気持ちに最も合ったものだということに確信が持てたんです。それで変える必要がないことが判り、最後の最後にはそれに意味を持たせる形で彼の言葉を加えることもできました。全体を読み通すと文体全体に意味があることが判る、という書き方ができたのはこれが初めてです」

  そういう意味でも完成度の高い作品なのである。構成を見ても、全5章がそれぞれ単独で読んでも短編として楽しめるように完結している点や、章ごとにコミカルだったり、スリリングだったりとテイストが違う点など、読んでいて決して退屈しないように工夫が凝らされている。しかも笑いと涙の2つの間で物語が揺れ動き、その往復運動が読者を巻き込む波を作り出すという憎い展開なのである。

 「笑ったり泣いたり、ずっと高いレベルで読んでいけて、最後にそれまでの面白さを遙かに越えるものが待っている、という風にできればいいな、と。また、読んでくださった方が、持って帰って実人生に役に立つというものがどこかに見つかる、というのが僕の考える良いエンタメの理想だと思いますので、そうなることを目指しました」

  厳しい水準で小説を生み出し続ける書き手が、エンタメの基本に立ち戻り、最高を目指して書いた作品だ。10年間の創作の成果がすべて入った珠玉の作品をぜひ味わってほしい。

 取材・文=杉江松恋

 本記事は「ダ・ヴィンチニュース」から提供を受けております。
 著作権は提供各社に帰属します。

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