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グリコの新規事業を生む“世界に一つだけ”を開発する研究所
右から、江崎グリコ健康科学研究所の所長・栗木隆さんと研究員・釜阪寛さん
ものごころつく前から食べていた『ビスコ』、おまけも楽しみだったキャラメルの『グリコ』のほか、『パピコ』『ポッキー』『プリッツ』など懐かしいだけでなく、今なお愛され続けるロングセラーの数々。こうした商品を製造・販売している江崎グリコが作っているのは、馴染み深いお菓子だけではない。社名の由来でもあるグリコーゲン(糖原)を中心とした、糖質工学を軸に新素材を開発するなど、おいしさに加え“健康”を真面目に考え・追求した中で生まれた、さまざまな製品を形にしている。その基礎を支える、江崎グリコ健康科学研究所を取材した。
「昨今は企業が生き残りのために業界再編を行ない、近しい業態の企業が合併してより大きな競争力をつける――というトレンド。そうした流れの中でも“グリコは、グリコでありたい!”としたら、市場で唯一の存在になる必要があります。
そこでこの研究所では、まず企業メッセージである『おいしさと健康』の観点から、健康を科学する側面。もうひとつは、市場で唯一の存在になるための新素材の開発――既存のビジネスの中で、新しい開発の種を新素材や新技術で提供すること。さらには新規事業への進出として、高収益事業へ繋がる新素材を開発することです」と語るのは、同社の取締役でもある、健康科学研究所の所長・栗木隆さん。
こうした姿勢から多くの研究が行なわれ、栄養ドリンクやサプリメント、スキンケア商品といった新商品開発だけでなく、BtoB向けの新素材なども数多く生まれている。その中で今回は、“身近な商品”のガム『POs-Ca(ポスカ)』を軸にレクチャーを依頼。
栗木所長と共に説明してくれたのは、マネージャーで研究員の釜阪寛さん。
「歯の外側はエナメル質というカルシウムやリン酸から構成された、ハイドロキシアパタイトという結晶からできていて、この結晶が規則正しく並んでいることで、歯は強く硬い組織を持てるのです。しかし食べたり飲んだりすると、食品の酸によってリン酸やカルシウムが溶け出してしまいます。
このエナメル質からカルシウムが溶け出すことを脱灰(だっかい)と言い、それが進むと初期虫歯の『うしょく』になります。ただ脱灰の状態なら、溶け出したリン酸やカルシウムを補い、再石灰化することで、健康な歯に戻すことができるんです」
カルシウムが必要なら、乳製品や小魚などを摂取すればいいのだろうか?
「歯茎には血管がありますが、歯には血管がないので、栄養分として体の内側からカルシウムを届けることはできないんですよ。微量ですが、だ液にカルシウムが含まれていて、再石灰化できるのは、だ液に溶けているカルシウムだけです。でもカルシウムというのは水に溶けにくい性質で、一般的なカルシウム剤は普通はだ液に溶けません」(釜阪さん)
カルシウムが必要だからと牛乳を口に含んでも、歯にカルシウムがつくわけではなく、だ液には溶けずに栄養分として吸収されるため、骨には届くが歯には届かない。
「水に溶けやすい水溶性のカルシウムであれば、再石灰化を促進するガムの開発が可能になると考えました。実は商品名の『POs-Ca』というのは、水溶性カルシウムであるリン酸化オリゴ糖カルシウムの物質名の略です。このリン酸化オリゴ糖カルシウムが配合された『POs-Ca』は、さらに優れた再石灰化促進を実現し、再結晶化(歯の結晶構造を回復)・再硬化(硬い歯を取り戻す)の効果が実証された唯一のガムなんですよ」(釜阪さん)
大阪歯科大学の臨床実験では三重県下のある小学校で、給食後『POs-Ca』および『POs-Ca F』を2粒5分間噛む――というのを1年以上継続。その結果、エナメル質の再石灰化・再結晶化が進み、初期虫歯が改善されたケースが確認された。
「ウェブサイトの『POs-Ca TV-CM』動画の一部でも紹介していますが、兵庫県に世界最高レベルの設備を持つ、『SPring-8(スプリングエイト)』という実験施設があります。宇宙探査機・はやぶさが持ち帰った超微粒子を分析するなど、世界有数の研究機関です。
その最先端テクノロジーによって、『POs-Ca』を噛んでカルシウムが浸透した歯の再結晶化が、科学的にも証明されました。さらに『SPring-8』では、社会経済などの発展に寄与することが期待される研究成果を1年間に一つだけ、実施した何千件もの実験から選ぶ『ひょうごSPring-8賞』という賞があり、2010年度に『POs-Ca』が食品で初めて受賞したんです」(栗木所長)
ガムの機能レベルには、キシリトールなどの代替甘味料によって、初期虫歯の原因になる酸を作らせないようにした第1世代。酸で失われたカルシウムを補う機能(再石灰化)を持たせた第2世代、近年はさらに進化した機能(再石灰化・再結晶化・再硬化)を持つ第3世代領域に突入しているという。こうしたガムの進化は、世界的にもオーラル(口腔)ケアが健康に重要な役割を果たすことが認知され、歯磨きやデンタルリンスと並び、ガムが歯の健康を促進するアイテムとしてニーズが高まっているためだ。
この『POs-Ca』には、大阪歯科大学の臨床実験でも使用された、歯科専用品の『POs-Ca F(ポスカ エフ)』があり、失ったリン酸やカルシウムを補うだけでなく、さらに歯を丈夫にするフッ素が含まれている。
「カルシウムとフッ素は、一緒になると沈澱してしまって溶けない組み合わせの成分。でも『POs-Ca』の場合は、リン酸化オリゴ糖がカルシウムを守っているので、フッ素と結びついても、だ液に溶けて機能するんです。フッ素でより丈夫な歯にするガム――ここまでの機能を持って、しかも科学的に効果が実証されているガムは他にないです」(釜阪さん)
実はこのリン酸化オリゴ糖カルシウムが、北海道産の馬鈴薯のデンプンに多く含まれることはわかったが、当初は抽出できる量が少なく、製品化するには高いハードルがあった。しかしグルコースや異性化糖を製造する企業と協力、副産物としてのリン酸化オリゴ糖カルシウムを回収して、大量生産を可能にしたのだという。こうした新素材を開発し、他社と共同で製品化した商品では、O157、インフルエンザやノロウィルス対策に効果的な抗生物質である、ヨウ素を不織布に練り込んだマスク『快適オフィスAMYCELマスク』(オフィスグリコでの販売)が挙げられる。
その他にも、世界42か国で販売中のスキンケア成分「α-アルブチン」、アメリカで支持が広がっているスポーツドリンクに使用される「クラスターデキストリン」など、同研究所でしか開発できなかったり、大量生産化を実現できなかった新素材が数々あるという。
身近なお菓子を製造・販売しているグリコが、世界で活躍する素材を生み出している話は、まるで「近所の○○ちゃんが、世界で活躍する日本人としてTVで紹介されていた」ような、驚きとワクワクを感じる。“すごい!”と畏れ入るよりも、親しみを感じさせたのは、技術的・専門的なことをわかりやすく話してくれたから――だけじゃない。「研究所の理念」についても大上段に構えず、柔らかく語ってくれたのだ。
「『市場で唯一の存在となるために最高水準の科学をする――“The Best Science for the Only One”』が、この研究所の理念です。これは2001年4月に決めたものなので、“オンリーワン”と言っていますが、有名な“世界に一つだけの花”の歌の発売は2003年ですから、あの歌からのマネじゃないですよ(笑い)」(栗木所長)
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