仕事で役立つ人気ビジネスアプリおすすめ!
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
Cypress、携帯端末にUSB 3.0を提供するコントローラデバイスを発表
Cypress Semiconductorは、携帯端末のパフォーマンス向上を図るために設計されたUSB 3.0(SuperSpeed USB)向けソリューション「West Bridge Benicia(型番:CYWB0263)」およびモバイルデバイス向けの新しいUSB OTGおよびUSB 2.0ソリューションとして周辺コントローラ「West Bridge Bay」を発表した。2製品はすでに、主要カスタマ向けにサンプル出荷を開始しており、2011年9月までに量産を開始する予定としている。
West Bridgeのコンセプトは、PCのようにプロセッサに複数のチップセットなどを繋げていては携帯機器の小型化、BOMコストの低減などが難しいことから、1チップでそれらのすべてを代替しようというもの
Beniciaは、最適化された「Data transfer Offload Engine(DtOE)」で、モバイルデバイスにおける、従来品比2倍のIOPSスループット、ハイビジョンビデオのストリーミング、最大200MB/秒のマルチメディアコンテンツのサイドローディング、充電電流を最大900mAまで増加させたことによるバッテリ充電時間の半減を実現する。
また、周辺装置、メモリ、およびプロセッサ間で複数の独立した経路を管理し、最大のデータ スループットを実現する、同社の第2世代「Simultaneous Link to Independent Multimedia(SLIM II:独立したマルチメディアへの同時リンク)」アーキテクチャを採用しており、頻繁なメモリアクセスを必要とする起動、ページの読み込み、アプリケーション間の切り替え、その他のタスクで、デバイスのパフォーマンスが向上できるようになっている。
さらに、SD 3.0(UHS-I対応SDXC)やe-MMC4.4xなどの最新マスストレージ規格に対応しており、高速なデータアクセスと大容量記録が可能だ。加えて、外部の電源管理デバイスを必要とせずに充電器やアクセサリの検出が可能になる、同社の最新世代の「EZ-Dtect」機能も搭載している。
一方のBayコントローラは、USB 3.0機能を搭載していないデバイスに、Beniciaと同じ利点である、SD 3.0やe-MMC4.4xへの対応、EZ-Dtect機能、SLIM IIアーキテクチャを提供するデバイス。
携帯端末の内蔵アプリケーションプロセッサに対するデータ転送コプロセッサとして機能するため、データ集約型の処理からプロセッサを解放することができるようになる。ARM9プロセッサコアを採用しており、低消費電力オーディオコプロセッサとして機能することも可能である。
Microchip、60MIPSの性能を実現したPICマイコンなどを発表
Microchip Technologyは7月5日(米国時間)、次世代のdsPIC DSC/PIC24MCUコアを用い60MIPSの性能を実現した「16ビット dsPICデジタルシグナルコントローラ(DSC)」とPIC24マイクロコントローラ(MCU)「dsPIC33E/PIC24E」を発表した。
dsPIC33E/PIC24Eのパッケージイメージ
PIC24Eの機能ブロック図
これらの製品は、従来品に比べ、より大容量となったフラッシュメモリ(536KB)およびRAM(52KB)、144ピンパッケージの採用により強化されたI/O機能、USB2.0 OTGインタフェースに加え、従来世代のdsPIC DSC/PIC24 MCUコアから拡張されたモータ制御、グラフィック、オーディオ、リアルタイム組み込み制御機能を提供するものと同社では説明している。
dsPIC33EおよびPIC24Eシリーズの第1弾として9製品が用意され、サポートツールとしてマルチメディア拡張ボード、モータ制御開発キット、Explorer 16開発プラットフォームと使用できる2つのUSBスタータキットと5つのプラグイン モジュール(PIM)も発表している。また、30のソフトウェアライブラリと、音声/音響、暗号化/復号化、通信、モータ制御などのトピックに関するアプリケーションノートも用意している。
さらに、4つのSPIおよびUARTインタフェースと2つのI2Cインタフェースを内蔵しているほか、新たな補助フラッシュモジュールにより、設計者は通常のCPU動作を低速化する事なくフラッシュデータをプログラムまたは消去することができるようになった。加えて、改善されたダイレクト・メモリ・アクセス(DMA)機能によりリンクされたDMA動作を自動的に起動し、同じく改善されたデバッガ機能により複雑なブレークポイントを可能にしてデバッグの迅速化が図られたほか、タイマ機能の拡張により、入力キャプチャモジュールと出力コンペアモジュールの柔軟性と性能が向上した。
なお、同社では60MIPSという性能により、これらのシリーズが工業/商業用ハイエンド アプリケーション(サーボモータ制御、純正弦波インバータ、3相モータ2基の並列運転など)に対応できるほか、新たに開発した独立パルス幅変調(PWM)モードにより複数のステッピングモータとデッドタイム補償がサポートされ、ソフトウェアのオーバーヘッドを削減することができるようになったとしている。
なお、dsPIC33E DSCとPIC24E MCUは、144ピンLQFPパッケージのほか、64ピンQFN/TQFPパッケージ、100/144ピンTQFP、121ピンBGAパッケージ品が用意されている。
ポスト「京」コンピュータはどうなるのか (1) 次世代スパコンの開発開始で米国に遅れをとっている日本
先日、「京」コンピュータが8.162PFlopsを達成し、中国の天河1Aに3倍以上の差をつけてTOP500の1位になったばかりで、ポスト「京」コンピュータは気が早すぎると思われるかもしれないが、そんなことはない。
もちろん、先日の某紙の指摘のようなTOP500の1位にそれほどの意味は無く、いかに役立つ成果を上げるかが重要ということは関係者は十分承知しており、各アプリケーションの開発グループは「京」の使用にむけてアプリケーションの準備に余念がない状況である。
しかし、次のスパコンについても並行して考えていかなければならない。図1にTOP500の1位と500位のスパコンの性能とTOP500全部(500システム)のスパコンの性能の合計の年次推移のグラフを示す。
図1 TOP500 合計および1位と500位の性能推移(出典:TOP500 Webサイト)
一番上のTOP500合計のラインと一番下の500位のラインは非常にスムーズで、このTOP500全体の傾向が安定しており、信頼できるものであることを示している。TOP500 1位のラインはぶっちぎりのシステムが出現するとステップで上がり、しばらく、そのシステムの1位が続くので階段状になる。この1位のラインを延長すると、2019年6月に1ExaFlopsに達している。このため、業界では2019年、階段状のステップの上がり方によっては2018年に1ExaFlopsを超えるシステムが出現すると予想されている。
図2は、「京」コンピュータの開発スケジュールである。この図に示すように、2006年度から概要設計が始まり、製造が終わるのが2012年3月となっている。なお、今回のTOP500 1位となったシステムは全体の8割程度の規模で、まだ、製造は終わっていないのであるが、この工程よりも製造スケジュールは半年程度は前倒しで推移していると思われる。
図2 「京」コンピュータの開発スケジュール(出典:理研の次世代スーパーコンピュータ開発プロジェクトのWebサイト)
図2にみられるように、トップレベルのスパコンの設計、製造には5~6年の時間がかかる。また、この前に2005年度からスーパーコンピュータの要素技術開発というプロジェクトが行われており、これを含めると6~7年のリードタイムとなる。つまり、2018~2019年に1ExaFlopsの世界トップクラスのスパコンを開発しようとすれば、 2013年には概念設計を始める必要があり、それに先立つ要素技術の開発は2012年から始める必要があるという計算になる。実際には、技術チャレンジのレベルは「京」世代より大きいと見られており、その分開発期間を長くとる必要がある。ということで、もう、既に開発に着手していないと遅いという状況になっている。
米国では以前から次世代のExaFlopsスパコンへの取り組みがスタートしており、2008年5月にノートルダム大学のPeter Kogge教授を主査とする委員会のスタディレポートが作成され、昨年からDARPAのUHPCプロジェクトが開始されている。この米国の動きに対して、日本は、既に3~4年遅れていることになる。
6月27日、28日の両日、東京大学(東大)で「これからのスーパーコンピューティング技術の展開を考える」というシンポジウムが開催された。このシンポジウムの中で、「将来のスーパーコンピューティングへの挑戦」と「将来のスーパーコンピューティング技術の取り組みについて」と題するパネルディスカッションが行われた。
将来のスーパーコンピューティングへの挑戦に関しては、アプリケーション側とコンピュータサイエンス側から各4名のパネリストが発表を行った。
将来のスーパーコンピューティングへの挑戦パネルのメンバー
将来のスーパーコンピューティングへの挑戦パネルのモデレータの宇川教授
産業技術総合研究所(産総研)の池上氏は、クロックが上がり、昔のプログラムのままでドンドン性能が上がるFree Lunchが終わったというのはやむを得ないが、スパコンの世代ごとにマシンアーキテクチャにあわせてプログラムを作り直す毎回フルコースは勘弁して欲しい。ソフトウェアの寿命が長くなるように考えて欲しいという、当然の要望が出された。また、通信に関しては全ノード一様でない階層的なネットワークでも良いが、100ノード程度は超低レイテンシで短時間で通信できるようなものが欲しいとのことである。
東大の藤谷教授はD.E.Shaw研究所の分子動力学計算専用機のANTONの成功を指摘し、専用機も考慮に入れるべきと指摘した。また、東京工業大学(東工大)の牧野教授もカスタム設計の専用機の効率の高さを指摘し、自由度が小さく並列計算に向かず、長時間の計算が必要という問題も多く存在し、1億並列になると言われるExaFlopsシステムのような超並列だけで良いのかという疑問を呈した。
コンピュータサイエンス側の東大の中村教授は消費電力の制約下で演算能力とデータ供給能力をバランスよく向上させることと、アプリケーションの長寿命化を可能としてその開発コストを低減することが重要と述べた。そして各種の設計トレードオフをうまく選ぶことが重要であり、ハード、ソフト、アプリの3者が一緒に検討するC-Designが重要と述べた。
プログラマにハードウェアどのように見せるか、そして、アプリの長寿命化を実現するかの重要性は東大の田浦准教授も指摘し、アーキテクチャの決定には地道にケーススタディを繰り返す必要があることを指摘していた。
理研ら、「Aβ43」をアルツハイマーの強力な病態促進因子であることを発見
理化学研究所(理研)を中心とする研究グループは、アルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβペプチド(Aβ)のうち、これまで見過ごされていた亜種「Aβ43」が、アルツハイマー病の強力な病態促進因子であることを明らかにした。同成果は、理研脳科学総合研究センター 神経蛋白制御研究チームの西道隆臣チームリーダー、斉藤貴志研究員らと、同志社大学の井原康夫教授、舟本聡准教授、滋賀医科大学の西村正樹教授、Antwerp大学のChrstine V. Broeckhoven教授らとの共同研究によるもので、英国科学雑誌「Nature Neuroscience」(オンライン版)に掲載された。
アルツハイマー病は、老人性認知症の中で患者が最も多い疾患で、脳内に老人斑(アミロイド斑)といわれる過剰なタンパク質の「シミ」が沈着することが病理学的な特徴の1つ。このアミロイド斑の主成分がAβであることが近年判明し、Aβの過剰な蓄積がアルツハイマー病の発症の原因と考えられるようになり、Aβの産生を促進する遺伝子変異が、家族性アルツハイマー病を引き起こしているため、アルツハイマー病の治療には、Aβを脳内から除去することが重要だと考えられてきた。
Aβには、アミノ酸の長さが異なるAβ40とAβ42の存在が古くから知られており、これまでこの2種類のAβを中心にアルツハイマー病研究が進められてきたが、Aβ40やAβ42だけを標的とした治療では、アルツハイマー病の進行を食い止めることが難しかったものの、2005年頃の研究から、Aβ40やAβ42以外にもアミノ酸の長さが異なるAβ亜種が存在することが徐々に知られるようになり、従来の研究を見直す機運が高まっていた。
今回、研究グループは、孤発性(非遺伝性)アルツハイマー病患者4人のAβ種の存在率を免疫組織化学的に解析し、アルツハイマー病患者の脳内で、Aβ43がAβ40よりも高頻度で存在していることを発見した。
図1 アルツハイマー病患者の脳切片における各Aβ43の存在比率。アルツハイマー病患者の脳内では、Aβ42が70%、Aβ43が28%存在した
画像解析による定量の結果、アルツハイマー病患者の脳内では、Aβ42 が70%、Aβ43が28%と両者がそのほとんどを占めており、これまでAβ43が見過ごされていたことが判明した。
そのため研究グループでは、アルツハイマー病発症に対するAβ43の役割を明らかにすることを目指し、既存の抗体からAβ43に特異的な抗体を選定し、Aβ43を特異的に検出するELISAシステムを構築した。
図2 Aβ43に特異的な抗体の選定とELISAシステム。左が各種Aβを様々な量で電気泳動を行いウェスタンブロット法で抗体の特異性を確認したもので、結果として、選定した特異的抗体はAβ43と特異的に結合した。右がこの抗体を用いてELISAシステムを構築した結果。Aβ40やAβ42にはまったく反応せず、Aβ43のみを特異的に検出した
同システムを用いて、野生型マウスとアルツハイマー病モデルマウスとして既に知られているアミロイドβ前駆体タンパク(APP)トランスジェニックマウスそれぞれの脳内のAβ43濃度の定量を行った結果、野生型マウスでも、APPトランスジェニックマウスでも、加齢に伴って脳内のAβ43の濃度が増加したことが確認された。
図3 マウス脳内におけるAβ43量の加齢依存的増加。左が野生型マウス。若年齢マウス(3カ月後)の脳内では検出しなかったAβ43が、老年齢マウス(24カ月後)の脳内では有意に検出された。一方の右がAPPトランスジェニックマウス。加齢に伴って脳内のAβ43の濃度が増加しており、これは、アミロイド斑が出現するのに先行して始まり、Aβ43の増加が引き金となりアミロイド斑が形成されたと考えられる
このことから、ヒトやマウスの種を問わず、生まれながらに一定量産生されているAβ40やAβ42とは異なり、Aβ43は加齢性変化を示すAβ亜種であることが判明したほか、APPトランスジェニックマウス脳内でのAβ43の濃度の増加は、その脳内でアミロイド斑が出現する前から増加し始めていることを発見。これは、Aβ43の増加がアミロイド斑を形成する引き金になっている可能性を示すものであるという。
さらに研究グループでは、神経細胞に対する3つのAβ種の毒性を比較した。マウス胎児から調製した初代培養神経細胞に対し、それぞれ1~10μMの濃度で各Aβ種を添加した結果、Aβ42とAβ43が濃度の増加に伴い神経細胞の生存率が低下し、傷害率も上昇した。Aβ43がAβ42より強い毒性を示したが、図1のようにAβ43の量比はAβ42よりも少ないため、脳内ではAβ42、Aβ43が同様に強い神経毒性を発揮していると考えられ、このことは、これまでAβ42だけが神経毒性の本体と考えられてきたが、Aβ43も神経毒性の本体である可能性を示すものであると研究グループでは指摘している。
図4 神経細胞に対するAβ43毒性の比較。Aβ濃度の増加に伴い、Aβ43の神経細胞の生存率が顕著に減少し、傷害率が顕著に増加することから、Aβ43が最も強い毒性を示していることが示された
続けて、各Aβ種の凝集性の比較をチオフラビンTの取り込みを指標に行った結果、Aβ43が最も強い凝集性を示したほか、Aβ43は、他の2種に比べて少量でAβの凝集を促進する因子であることが明らかとなった。
図5 各Aβ種の凝集性とAβ43の凝集促進作用。左が20μMの濃度の各Aβ種に対するチオフラビンTの取り込みを解析したもの。蛍光強度が高いほど強い凝集性を示し、Aβ43が最も強い凝集性を示した。右はAβ40とAβ42がそれぞれ20μM、2μM存在している溶液中に、0.2μMの濃度の各Aβ種を添加し、チオフラビンTの取り込み強度を測定したもの。結果として、Aβ43を添加した時に顕著な凝集の促進が認められた
この凝集性の強さは、アルツハイマー病患者の脳切片の解析でも顕著に示されていた。アルツハイマー病患者のアミロイド斑を免疫組織化学的手法により可視化したところ、アミロイド斑の中心部分(図6の黄色で示される部位)にAβ43が凝集していることが明らかとなったほか、タンパク質の強力な凝集部位と特異的に結合するチオフラビンSの染色像とも重なっていることが確認された。これは、Aβ43の凝集が引き金となってアミロイド斑が、患者の脳内で形成されていることを示しているという。
図6 アルツハイマー病患者のアミロイド斑におけるAβ43の局在。Aβ全体(a)とAβ43(b)を重ね合わせる(c)とアミロイド斑の中心にAβ43が局在していた。また(d)ではタンパク質の強力な凝集部位と特異的に結合するチオフラビンSの染色像とが重なっていた
加えて研究グループでは、アルツハイマー病においてAβ43の量が何を規定しているのかを調べるために、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子の1つであるプレセニリン1のさまざまな変異を培養細胞に遺伝子導入し、Aβ43の産生能を解析した。その結果、アルツハイマー病を早期に発症する家系の変異(I143TやG384Aなど)ほどAβ43の産生能が高いことが明らかとなり、発症年齢とAβ43の存在量や存在比に高い相関関係が認められたという。
図7 家族性アルツハイマー病の発症年齢とAβ43の相関関係。家族性アルツハイマー病の発症年齢とAβ43の存在量に高い相関関係が見られた
これまでアルツハイマー病の有力候補だと期待されていたAβ40やAβ42に対する抗体を用いたAβワクチン法が多くの臨床実験で試みられ、ことごとく失敗してきたが、その理由として、Aβ43の毒性を除去しきれていなかった可能性があり、Aβ40とAβ42を中心とした研究を見直し、Aβ43も対象にしたAβワクチン法を研究していく必要があるかもしれないと研究グループでは述べており、Aβの産生抑制を目的とした薬剤開発に関しても、Aβ40とAβ42だけでなく、Aβ43を含めた指標作りが必要となるとしており、今後、毒性本体と考えられていたAβ42だけでなく、Aβ43も含めて標的とすることで、アルツハイマー病の根本治療や予防法の開発へ発展していくことが期待されるとしている。
また、研究グループでは今回の研究において、Aβ43の脳内濃度の増加が発症年齢を規定している可能性も示した。Aβ43が加齢に伴い脳内で出現してくることからも、アルツハイマー病患者の大部分(98%以上)を占める孤発性(非遺伝性)アルツハイマー病の発症と、Aβ43の脳内出現との間にも相関関係が認められるかもしれないとしている。アルツハイマー病に直接関連した因子で、加齢性変化を示す因子はほとんど発見されておらず、Aβ43が早期診断マーカーや老化の指標となる可能性があることから、Aβ43を指標としたアルツハイマー病の早期診断法の確立が期待できるという。
IMSのレーザープラグ技術
自然科学研究機構 分子科学研究所(IMS)などの研究グループは、IMSのWebサイトにて「ジャイアントマイクロフォトニクスの創成とレーザー点火」と題した研究成果を公開した。
同成果はIMSの分子制御レーザー開発研究センター、先端レーザー開発研究部門のNicolaie PAVEL 博士研究員、同 常包正樹 博士研究員、平等拓範 准教授および日本自動車部品総合研究所 Project General Managerの金原賢治氏らによるもの。研究の一部は、科学技術振興機構(JST)の支援を受け、日本自動車部品総合研究所、豊田中央研究所、デンソーと共同で進めているエンジン点火用マイクロレーザーの研究成果(JST 育成研究/育成ステージ)にかかるものであるほか、セラミックレーザー、マイクロチップレーザー研究では基盤A、地域連携研究などの科研費、振興調整費、JST地域結集事業、NEDOなど、また、浜松ホトニクス、リコー、三菱電機、島津製作所、コンポン研究所、川崎重工、新日鉄などの支援を得て行われたものとなっている。
高尖頭出力レーザーを用いた混合気の着火法であるレーザー点火は、非接触かつ時間・空間的な自由度が高いためシリンダ内での理想的な燃焼状態を作り出せることから、プラグに代わる点火装置としてレーザーの発明以来ずっと期待が寄せられてきたが、尖頭値がメガワット以上のジャイアントパルス固体レーザーは、一般に大型・不安定で効率も低いため環境の整った実験室から持ち出す事ができず、レーザー点火に関する原理は検証できてもそれ以上に議論が進むことは無かった。
図1 マイクロドメイン制御の概念
しかし、近年、分極反転素子など、物質・材料の光に対する性質をマイクロメートルの桁(光の波長)で制御することで、その特性の強調や新機能の発現が可能となることが示され、これに物性研究に則った新たなQスイッチ動作法の提案が融合したことで固体レーザーのダウンサイジングが進み、マイクロ固体フォトニクスに至った結果、従来不可能と思われてきたメガワット出力のジャイアントパルスの実現が可能となってきた。
一方、従来のパルスレーザーでは発生が困難であったピコ秒からナノ秒に至るパルスギャップ領域が点火に有効であることも発見された。この効果は、燃焼にはブレークダウンのための多光子吸収過程を誘起するに十分な高い尖頭値と火炎核形成に必要な電子加速の両方が求められるが、研究グループが開発したマイクロチップQスイッチレーザーでは、モードロックと従来Qスイッチのギャップを埋めることが可能で、上記の要求を満たすことが可能だという。
図2 レーザーによる燃焼過程とレーザーパルス幅の比較
これにより従来の報告値より低い投入エネルギーで点火が可能となり、エンジン動作実験でも、スパークプラグの1/10程度の投入エネルギー(2mJ程度)での効率的な動作が検証され、低燃費化・低エミッション化を可能とする希薄燃焼での優位性を実証できたとしている。
図3 プラグ型三ビーム・ジャイアントパルス発生可能なマイクロチップレーザーの外観
なお、研究グループは、マイクロ固体フォトニクスの展開により視野に入ってきたレーザー点火は、化石エネルギーの高度利用を可能とするもので近未来の低排出、低燃費の高効率・高出力自動車エンジンへの適用が期待できるとするほか、発電システムへの適用も検討が始まっており天然ガスや原子力などの分野への展開が期待されるとしている。