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『世にも奇妙な物語』スペシャルで楳図かずお、伊藤潤二の名作ホラーが実写化。恐怖対談が実現
『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)が今年25周年を迎えるにあたり、4月11日放送のスペシャル版で日本が誇る二大ホラー漫画家・楳図(うめず)かずお先生と伊藤潤二先生の作品を実写ドラマ化することが決定。
【写真】二大ホラー漫画家の恐怖対談画像はこちら
それに先立ち、週プレで世にも奇妙な〝恐怖対談〟が実現した!
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―そもそも伊藤先生がデビューするキッカケとなったのは、1986年に『月刊ハロウィン』(朝日ソノラマ)の「第1回楳図賞」を受賞したことなんですよね?
伊藤 はい、小学生の時に初めて買った漫画が楳図先生の『おろち』(*1)で、それ以来、ずっと大ファンです。「楳図賞」には『富江』(*2)のもとになる作品を送ったんですが、プロになりたいというより楳図先生に読んでもらいたい一心でした。
(*1)1969年に発表。不思議な能力を持つ謎の美少女おろちが、運命に翻弄される人々を傍観して見守るオムニバスホラー
(*2)1987年に発表。川上富江は何度殺されてもよみがえり、彼女に魅了された男たちを狂わせていく
楳図 伊藤さんは当時から絵が上手でね。ホラー漫画って絵に品がないとダメ。ただでさえ内容がどぎついのに絵までそうだと読者が引いてしまうし、雑な絵だと微妙なズレの怖さが表現できない。
伊藤 『ダリの男』(*3)がまさにそれですよね。家の中が微妙にゆがんでいくという。
(*3)1969年に発表。美しい妻を持つ醜い男が主人公。妻の美的感覚を狂わせようとたくらむのだが、最終的に妻の肉体が…
楳図 その点、伊藤さんは絵と内容のバランスがすごく取れていると思います。
―おふたりが初めて会ったのも「楳図賞」の時?
伊藤 いえ、3年前に参加した小学館の謝恩会です。偶然、そこに楳図先生がいらっしゃって。
―初対面までに30年もかかっているんですか!?
楳図 結果的にそうですね。ただ、僕らはひとつの作品ができるまでが1サイクル。それが一日っていう感じで、漫画家は精神的なスパンが長い。ストーリー構想中は 何もない空白な時間だと思っていますし、普通の人とは違う時間軸で生きているんですよ。浮世離れしているのが漫画家であって、浮世と一緒に進んでいたら、 この仕事をやっていられませんから。
伊藤 確かに僕もそんなに時間がたっている気がしませんでした。ただ、憧れ続けた楳図先生を目の前にして、あの時は何を話したのかあまり覚えていなくて…。実は今もすごく緊張しています。
楳図 いやいや、緊張なんてしないでください(笑)。
―数々の名作を生み出してきたおふたりですが、その中には実体験も含まれているんですか?
楳図 まったくないですよ。
伊藤 僕も…。
―では、どのようにして話を考えているんですか?
楳図 一概には言えないのですが、その時々のニュースから着想を得たこともありますよ。『人形少女』(*4)というお話は、子供のいない夫婦が人形をわが子のように育てているという新聞記事がヒントになっているんです。恐怖漫画っていうのは、人間離れしたあり得ない世界を描いているからこそニュース性が大事になってくる。
現実性を踏まえつつ、非現実性を入れていかないと読者に共感してもらえないし、怖さが伝わっていかないんですよ。
(*4)1960年に発表。主人公は小学6年生の久美子で、人形をめぐってさまざまな事件に巻き込まれていく
伊藤 楳図先生の作品は人間の心理や心の闇を巧みに描いていて、身近に想像できるから余計に怖いです。
楳図 伊藤さんはクライマックスの絵柄がしっかりしているので、お話に迫力がある。
伊藤 僕は絵を先に決めるタイプなんです。どうしても抽象的なイメージから始まるので、それをカタチにしていくのが毎回大変で。
楳図 僕も最後に派手なシーンを見せるには、どう展開していけばいいのか、よく逆算しながら話を考えていました。ストーリーづくりで心がけているのは常に5本ストックしておくこと。週刊誌3本と月刊誌3本を同時に連載していた頃はそうじゃないと回らなかった。毎日、寝る寸前まで怖いことを考えていましたよ(笑)。
―楳図先生には『漂流教室』(*5)というSFの傑作もありますよね。
(*5)1972年に発表。学校の校舎ごと未来の世界に送られてしまい、隔絶された地で少年たちが懸命に生き抜いていくSFロマン
楳図 僕は家の中で起こることがホラーで、家の外はSFだと思っているんです。どっちも不可思議なことが起きるのは同じなんだけど、家の中はホラーとしての空間設定がつくりやすいんですよ。「地下室」や「開かずの間」など怖さを強調させる場所を出すこともできるので。
伊藤 楳図先生の作品は、洋館が舞台になっている印象が強いですね。
楳図 四畳半のアパートではダイナミックな恐怖が表現できないんです。広々とした洋館がちょうどよくて。日本の場合は小さい家屋が多いので、病院や学校を舞台にすることも多くなりますね。
―漫画を描きながら怖くなることってないんですか?
楳図 それはないです。でも、クモは気持ち悪いから自分では描きません。足が8本あるのがイヤだ~!
伊藤 『紅グモ』(*6)には大量に出てきますけど…。
(*6)1965年に発表。財産目当ての後妻が、目や鼻から体の中に入り込む紅グモを使って娘たちを殺そうとする
楳図 クモはアシスタントに任せていました(笑)。「前脚のカタチが違う」とかいろいろ思ったんだけど、文句をつけたら自分で描かないといけなくなるのでグッと我慢しましたね(笑)。でも、自分が気持ち悪いと思うモノほど漫画の中に入れると面白いんですよ。
伊藤 巣を張って待ち構えていて、飛んでくるものを陥れる…とか恐怖漫画にはもってこいの生き物ですよね。
■この続きは、発売中の『週刊プレイボーイ』14号でお読みいただけます!
■楳図かずお(うめず・かずお)
1936年9月生まれ、高野山出身。1955年に漫画家としてデビュー。『おろち』『漂流教室』『まことちゃん』『14歳』などの大ヒット作を世に送り出す。1995年に腱鞘炎が悪化したことにより、休筆。昨年は映画『マザー』で初監督を務めた
■伊藤潤二(いとう・じゅんじ)
1963年7月生まれ、岐阜県出身。歯科技工士として働いているときに応募した作品で、『月刊ハロウィン』の「第1回楳図賞」を受賞。代表作の『富江』『うずまき』はともに映画化されて大ヒット。日本でホラー映画ブームを巻き起こした
■『世にも奇妙な物語 25周年スペシャル・春~人気マンガ家競演編~』
4月11日(土)21時~23時10分 フジテレビ系にて
1990年にスタートした『世にも奇妙な物語』は今年25周年。スペシャル企画として、人気漫画家とコラボしてのドラマ化が実現。楳図かずお先生の『蟲(むし)たちの家』、伊藤潤二先生の『自縛者』のほか、『ONE PIECE』のルフィも登場する!
(取材・文/高篠友一 撮影/本田雄士)