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【うちの本棚】253回 上を見れば雲下を見れば霧/倉多江美
「うちの本棚」、倉多江美の単行本から『上を見れば雲下を見れば霧』を今回は取り上げます。再録作品も目につきますが、本書で初収録された作品や描き下ろし作品など、ファンなら見逃せない収録作品が魅力の単行本でした。
主婦の友社が刊行した「ロマンコミックス」シリーズは、A5判ハードカバーの愛蔵版で、少年漫画、少女漫画、青年漫画とジャンルを越えて人気作家、実力作家をラインナップしたものだったが、収録作品の多くは既刊の単行本に収録されたものが多く、すでに既刊の刊行本を持っていたりすると、愛蔵版だからといって改めて買おうという気持ちにならなかったのを覚えている。もっとも、いまではシリーズ全巻を揃えておけばよかったなという思いもある。
このシリーズにおける倉多江美の収録作品も、デビュー作『雨の日は魔法』を始め『かくの如き…!!!』『イージー・ゴーイング』そして「逸郎くんシリーズ」から『セブンスター』と、再録が目につく。ただ描き下ろし作品やまだ単行本未収録だった表題作など、入手して損はないと思える内容にはなっていた。ことに「リリカ」掲載の『レンとイルゼの夜の夢』は、初出誌が通常とは逆開きのセリフが横書きになったものでもあったので、他の単行本に再録される機会も少ないだろうという印象はあった。まあ、個人的には『かくの如き…!!!』と『イージー・ゴーイング』が既刊の単行本より大きいサイズ、上質な紙で読めるというだけでも買う価値はあったのだが(笑)。
『上を見れば雲下を見れば霧』、この作品は朝日ソノラマからも大判(A4?)の単行本が刊行されていたと記憶する。持っているはずなのだが、現在室内で行方不明(笑)。小学館や白泉社では多くの作品を発表していた倉多だが、秋田書店、講談社の雑誌では数えるほどだった気がする。これはその数少ない「ひとみ」掲載のモノ。ちょっとそれまでとは違うタイプの主人公が登場するラブロマンス。発表当時よりも、現在の方が受け入れられるのではないかなという気がした。 『湖水』はミステリー仕立ての作品。倉多らしい心理描写が見どころだ。 『江美式バカンス』は当時のティーンの女の子の生活を描いたもので、倉多作品としては珍しいもののひとつ。とはいえ倉多らしいセリフ廻しは健在で、この作家のオリジナリティの確立のされ方に驚かされる。 『尾長』は描き下ろし作品。扉を含めて9ページという実に微妙な枚数の作品で、作者の心境を描いたようにも、まったくの創作のようにも受け取れる小品だ。…