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デビューほやほやの榊原郁恵に森繁久弥が授けた“金言”

デビューほやほやの榊原郁恵に森繁久弥が授けた“金言”

榊原郁恵さん(55)が、あの俳優・森繁久弥さん(享年96)からもらったサイン色紙には、先達の教えが添えられていた。それは時が経てば経つほど重みを増す、人生訓ならぬ“芸能訓”だった。デビュー39年目を迎えた今でも、その金言がマルチタレントとして活躍中の榊原さんを支えている。

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 1976年の「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリに輝いた榊原さんがデビューしたのは、翌年1月1日。

「デビューして半年ぐらいの時に、テレビ朝日(当時はNET)系列の『だいこんの花』というシリーズ物のドラマに、出させていただいたんです。牟田悌三さんと春川ますみさんが夫婦で営む酒屋さんの一人娘役。私が出たのは第5シリーズで、17歳の時でした。森繁久弥さん、竹脇無我さん、加藤治子さん、いしだあゆみさん、松山英太郎さん……。そうそうたるメンバーでしたね。

 で、テレビ朝日の稽古場で何日目かの稽古が終わった後に、森繁久弥さんにサインをいただいたんです。芸能界の大御所で、私にとっては雲の上の存在のような方にサインをお願いするなんて、失礼に当たるんじゃないかと思いましたけど、番組のスタッフの方が『勇気を出して、お願い致しますって言えばいいのよ』と後押ししてくださって。

 森繁さんは墨でサインされると聞いたので、色紙を2枚、それからマジックではなく墨と筆を用意して、『すみません、サインをいただきたいんです! 私とおばあちゃんに』ってお願いしたんです、フフフ。そしたらサッと色紙を手に取ってくださって、おばあちゃんには<スズさんへ>と書いて、風景画みたいなのも描いてくださいました。私のは、墨を垂らしたのに筆はお使いにならず、机の上にあったマッチ棒のリンが付いてない方、あの四角い先っぽにチョチョチョと墨をつけられて、ある言葉を書いてくださったんですよ~」

■ピーターパン卒業で増したありがたみ

 森繁さんが色紙に添えたのは、こんな言葉――。

「ちょっと字が薄いですけど、<拍手は 君を育てもするが ダ落もさせる>。当時は正直、その意味がよく分からなかったですねぇ。少しでも早くお仕事に慣れようと無我夢中でしたし、まだ17歳でしたから」

 この翌年(78年)、7枚目のシングル「夏のお嬢さん」が大ヒット。81~87年はブロードウェーミュージカル「ピーター・パン」で主演を務め、スターの座を不動のものとしたが……。

「森繁先生からいただいたお言葉の意味を最初に感じたのは、ピーターパンを卒業する時。7年間、本当にお客さまの拍手に育てられましたから。堕落もさせるという部分については、20代の時は忙しかったにもかかわらず、一つ一つのお仕事が印象深く残っていたんですよ。それなのに40代、50代になったら、1年をひとくくりに考えていたような……。お仕事をいただくことに慣れっこになっちゃって、ありがたみを忘れて流してるんじゃないだろうかって、反省したこともあります。

 この色紙は今も自宅の部屋に飾ってあります。時々眺めては思うんですよね~。森繁先生は、何で17歳の小娘にこんなに重いお言葉をくださったんだろうって……。芸能界で生きていく上で、拍手をいただいてるうちは気が付かないだろうけど、テングになってたら知らぬ間に落ちるよ、という戒めでしょうか。おまえ、頑張れよって後押ししてくださったんでしょうか。いずれにしても、いくつになっても私にいい緊張感を持たせてくれて、思い出すたびに背筋がピンとするお言葉です」

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