仕事で役立つ人気ビジネスアプリおすすめ!
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
本好きリビドー(49)
◎快楽の1冊
『十二月八日の幻影』 直原冬明 光文社 1600円(本体価格)
第18回日本ミステリー文学大賞新人賞を得た小説である。今年2月に刊行された作者のデビュー作だ。
スパイ小説の一種ではある。けれども、単にスパイを主人公にしているわけではないところが面白い。主人公がスパイを捜し出そうとする物語なのだ。
時代は太平洋戦争が始まる少し前だ。私たちにとってはあまりに有名な真珠湾攻撃。しかし本作はフィクションだから、まだ攻撃は始まっていない。ストーリーは攻撃を始めようとしている軍部の計画を外国に漏らした人間がいるらしい、と察した者が活躍する。その漏らした人間は誰なのか、突き止めようとする話である。
主人公の潮田三郎は物語の冒頭、海軍軍令部に所属している。しかし彼は落胆の毎日を過ごしていた。在アメリカ日本大公使館から送られてくる新聞や雑誌の翻訳をする仕事を命じられていて、退屈なのである。前線で活躍したい、という思いを抱いているのだけれど、それは実現しそうもない。そういう境遇の中で突然、特別班なるものへの異動を命じられる。上司の渡海少佐は中性的な外観をしており、一見するとたくましさは感じられない。喋り方、物腰が少しも男らしくないのだ。しかし頭脳は明晰であり、潮田は彼の指導を受け、スパイを見つけ出すために全力を尽くす。
潮田はいわば青春を忘れない男であり、熱情を抱き続けている。一方、渡海は極めてクールである。このコンビの不釣り合いのようでいて、実はうまくいっている関係がいい。
スパイ小説は、あらゆるミステリーの中でもかなりスリリングなものだと言っていいかもしれない。人をだまして情報を得ようとする人間の姿は悲痛なのだ。本作はスパイを見つけ出そうとするスパイを描いているので、なおさら悲痛なのだろう。二重のスリリングを味わえる小説である。
(中辻理夫/文芸評論家)
【昇天の1冊】
フリーランスライター亀山早苗さんの著書『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版/1300円+税)は、不倫事情に関する生々しいドキュメントだ。
夫が家庭外で自分とは別の女と深い関係にあることに気付いた妻。揺れ動き、焦る心情が、やがて彼女を“夜叉”へと変えていく。
家の中の物を次々と破壊し続ける、夫を監視しGPSで追跡する、「死んでやる」と泣き叫び脅しをかける、不倫相手の女への執拗な嫌がらせに走る、ついには復讐のため、自ら他の男とセックスしてしまう。…