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永井豪のダイナミックなまんが道! 『激マン!』が激アツ!
『激マン!』(永井豪、ダイナミックプロ/日本文芸社)
世界に誇る日本のボーイズ玩具・超合金が誕生して40年が過ぎた。「超合金」の名称が「マジンガーZ」劇中の架空の金属に由来すること、マジンガーの生みの親がマンガ家・永井豪氏であることは、日本人なら誰でも知っている(いて欲しい!)。
今年で生誕70周年を迎える永井氏の創作意欲は、衰えを知らない。昨年末より連載が始まった『デビルマンサーガ』を筆頭に、今なお新作を発表し続ける永井氏の自伝的マンガ『激マン!』(日本文芸社)が熱い。
本作は永井氏のマンガ家人生を作品ごとにフィーチャーし、執筆当時の舞台裏を熱く描いた、永井版「まんが道」だ。その第1部はデビルマン編。今でこそ「永井豪最高傑作の1つ」と誰もが認める『デビルマン』だが、その船出は決して順調ではなかった。
なんと『デビルマン』の連載は一度、少年マガジン編集部に断られていたという。「ストーリーマンガは、しっかりした人間ドラマを描くもの」というマガジン編集部の方針に照らすと、TVアニメ用に考案された『デビルマン』の企画は「“いかにも”な勧善懲悪のヒーロー物」だと判断されたのだ。
だが、永井氏は編集長に直談判し伝えた。
「だからこそマガジンなのだ。単なるヒーロー物にしたくないからこそ」持ち込んだのだと。ギャグマンガ家としてデビューした後、『ハレンチ学園』や『あばしり一家』などの大ヒットを飛ばし、社会現象まで巻き起こした永井氏だったが、自分はストーリーマンガ家だという挟持があった。『デビルマン』には、傑作への予感めいた手応えがあったのだ。「この機会を逃せば永井豪はストーリーマンガ家として生きる道を失うかもしれない」
強い決意と覚悟で、永井氏は『デビルマン』の連載を始める。
原作版のデビルマンは、ごく平凡な学生だった不動明が、親友・飛鳥了の導きによって悪魔の肉体を手に入れ「悪魔人間=デビルマン」となって、人類の敵・デーモン(悪魔)と戦う、という物語だ。これだけなら、よくあるヒーロー物だが…「『デビルマン』は悪魔を描くヒーロー物のファンタジーだけど、ストーリー設定のベースにリアルがあることが大事だと思うんです!」と、永井氏は当時の世界に立ち込めていた「平和崩壊への危惧」を物語のテーマとした。折しも、連載が始まった72年は、浅間山荘事件やベトナム戦争など、大きな事件が続発していた。
永井氏はデーモンを「強力な軍事力を持った兵士を抽象的な姿に表現した魔物」、悪魔との戦いは「戦争」そのものと考えた。
対するデビルマンは、人間の心や意志を保ったまま悪魔の体を乗っ取り戦う「兵士」だ。
日本が軍事化し、第二次世界大戦時のように徴兵制が復活し、戦争に参加させられるのなら「不動明は日本人の若者代表」と位置づけた。「戦争の残酷さ、人間の愚かさ、戦争の勝利の虚しさ」すら描けたら本望だと告げた永井氏に、担当編集は共感し「編集部的にOKを出しづらい場面があっても、極力通すようにガンバルよ」と後押しした。
永井氏は『デビルマン』執筆に情熱を傾け、物語も盛り上がっていくが、反比例するように執筆速度が落ちていく。自らを「なりきりマンガ家」だと称する永井氏は、作品を憑依させるように物語を生み出し、ペンを走らせる。『デビルマン』の1話分を描くと、他作品では感じたことのないような疲労感を味わうようになったからだった。
すると永井氏は他誌での連載を終了させて、集中できる環境を作ってしまう。そうまでして打ち込んだ作品だったが、アニメ打ち切りの報を受け、少年マガジン編集部から連載終了が告げられてしまう。「アニメとマンガは別物」と言われ、作品を描き続けてきたはずが、ようやく作品の全貌が見え始めたところでの終了決定。残された時間は2ケ月半(連載10回ほど)しかなかった。
そこから物語をまとめて行く永井氏のアイデアの練り込み方、表現に対する編集部との対立、連載延長へ息詰まる交渉…物語の緊迫度とリンクするかのような、緊張感あふれる舞台裏の戦いは必読だ。
『激マン!』は、永井氏の分身である、ながい激の作劇風景と、『デビルマン』本編の場面を適宜クロスさせる巧みな構成で、本編未読の人でも楽しめる。激闘の末に完結した『デビルマン』の最終回は、果たして永井氏の望んだ形になったのか…? ぜひ本書を読んでいただきたい。
現在は第2部『マジンガーZ編』が連載中だ。渋滞のタクシーの中で思いついた巨大ロボットのアイデア。たった1枚のスケッチからアニメ化が決まった『マジンガーZ』誕生の奇跡。なぜ、マジンガーZのコクピットはホバーパイルダーなのか? 男女が半身ずつのあしゅら男爵はいかに生まれたのか? マジンガーの口元のデザインの由来は? 次々と明らかになっていく衝撃の事実から目が離せない。
ひとつだけ苦言があるとすれば、マジンガーZの鼻は、マスクで覆い隠す「原作版」で描いていただきたい! 何の話かって? それもぜひ本書で! 豪快さと人間の業を合わせた激烈な作品で、我々の心に号砲を轟かせ続けるマンガ家・永井豪の人生はまさに、ダイナミックだ!
文=水陶マコト
本記事は「ダ・ヴィンチニュース」から提供を受けております。
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