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「若者の○○離れ」という統計データは信用できるのか?
巷に溢れる「若者の○○離れ」。もはや言ったもん勝ちな状況だが、果たしてそれらは本当なのだろうか?
「統計を見ると、世の中が思っている若者の姿と現実は違うと思います。まず、何と比べて離れているのかですが、だいたいがバブル世代や景気が良かった頃と比べていますよね」と、語るのはニッセイ基礎研究所の久我尚子氏。
しかし、これだけ世間で言われるからには実際に離れているものもあるはずだ。
「恋愛と結婚は離れています(苦笑)。恋愛に関しては異性の交際相手がいない割合を国立社会保障・人口問題研究所がとっていますが、交際相手のいない未婚者の割合はどんどん多くなっていますね」
では、大騒ぎされている割に実際離れていないものは?
「意外ですがアルコールですね。確かに飲酒習慣率は男女ともに20代は下がっています。ただ、男性は30~50代も下がっていますし、全世代的に健康意識が高まっている側面が大きいと思います」
このように若者のデータだけを見せて、若者離れと形容するケースはかなり多いという。
「海外旅行をしない、海外で働きたくないという海外離れに関しても違うと思います。確かに’90年代と比べて20代の出国者数は減っていますが、それは少子化の影響で、人口に対する出国率はむしろ上昇しているんです」
こういった海外離れが喧伝されるには2つの理由があるという。
「まず海外の大学で日本人の存在感が薄まっている問題。ただ理由は中国人やインド人の留学生が増えたからで、留学者率そのものは’90年代と比べて上がっています。もう一つは新入社員の海外就労意向の推移です。海外で働きたくないという人の割合は増えていますが、どこでも働きたいという積極的な人も増え、二極化しています」
また、20代人口の絶対数が’96年は1913万人、’12年は1332万人と大きく減少していることを考えずに言われることも多い。
「若者離れには経済環境の悪化や消費社会の成熟化など、社会環境の変化が大きい。リーマンショック後に『家中消費』という言葉が出ましたが、若者の嗜好というよりは経済状況やネット通販の拡大など通信技術の進化の影響ですよね」
若者の足が遠のいたというよりは、地盤がスライドしたというのが若者離れの真実のようだ。
【久我尚子氏】
ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員。専門は消費者行動、心理統計。著書に『若者は本当にお金がないのか? 統計データが語る意外な真実』など