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大塚家具、骨肉の争い 娘社長の勝利濃厚か 多数派工作激化、創業家・経営陣も真っ二つ
2月26日の東京株式市場で、ジャスダック市場に上場する大塚家具の株価が急騰した。取引開始とともに買い注文が集まり、値幅制限いっぱいのストップ高に当たる前日比300円(27%)高の1405円で取引を終えた。売買高は前日比22倍の103万株に達し、昨年来高値(1174円)を一気に更新した。翌27日も一時ストップ高(300円高)の1705円まで買われ、終値は238円高の1643円だった。2日間で49%上昇した計算だ。
大塚家具では創業者の大塚勝久会長と、その長女の久美子社長が経営権をめぐって激しく対立。父と娘の骨肉の争いは連日、メディアを賑わしている。それまで株価は1000円台に張り付いたままだったが、一気に暴騰した。
2月25日、勝久氏が沈黙を破り緊急会見を行い、自らの社長復帰と久美子氏の社長解任を求め、「委任状の勧誘を開始する」と宣言した。すると同日、久美子氏側は15年12月期の年間配当を80円(前期は40円)と2倍に増やす株主還元策を打ち出した。株主に会社側の方針を理解してもらうため、増配に踏み切ったのだ。期末増配が好感されたことと、双方が株主総会に向けて多数派工作を有利に進めるために株式を買い増せば、株価が上昇するとの思惑から買い物が入った。
翌26日には、久美子氏も騒動勃発以来初めて記者会見を開いた。勝久氏が久美子氏の社長解任を求める株主提案したことを受け、多数派工作に向け「すでに大株主に接触している」ことを明らかにした。接触した株主から実際に賛同を得たかどうかについては「回答は差し控える」とした。
また、3月末の定時株主総会の提案で勝久氏を取締役候補から外したことについて、「会社は発展段階で、創業者の庇護から離れなければならない地点がくる」と説明。父と娘が公の場で対立する騒動に発展したことを「理想的とは言えない」としながらも、解任は「可能な選択肢の中で最もスムーズな選択だと考えている」と述べた。
●プロキシファイト
3月27日の株主総会に向けて、父と娘のプロキシファイト(委任状争奪戦)の火ぶたが切られた。プロキシファイトとは株主が株主総会で自らの株主提案を可決させるために、他の株主の委任状を会社(現経営陣)側と争奪する多数派工作を指す。勝久氏側は、勝久氏(持ち株比率18.04%)と妻の千代子氏や会長の弟である春雄氏名義分を含め、発行済み株式の22.72%を保有している。
一方、久美子氏側は第2位株主のききょう企画の9.75%を押さえている。同社は一族の資産管理会社で、千代子氏と久美子氏ら5人の兄弟姉妹が株主だ。勝久氏は、「ききょう企画の議決権を掌握するために虚偽の名義変更を行った」として、久美子氏に株式の返還を求めて訴訟を起こしている。
大株主は日本生命保険(5.88%)、東京海上日動火災保険(3.22%)、日本トラスティ・サービス信託銀行信託口(3.05%)、日本トラスティ・サービス信託銀行(三井住友信託銀行再信託分・三井住友銀行退職給付信託口、2.94%)、大塚家具従業員持株会の2.84%、ジャックス(2.47%)など(持ち株比率は14年6月30日現在)。このほか米投資ファンドのブランデス・インベストメント・パートナーズ・エル・ピーが、今年1月14日時点で10.77%を保有していることが明らかになっている。同投資ファンドは、久美子氏の経営改革を支持している模様だ。こうした大株主を対象に、多数派工作が繰り広げられることになる。
●「クーデターだと思っている」
大塚家具をめぐるプロキシファイトは、従来のそれとは色合いが異なる。これまでは乗っ取りを仕掛けた株主側と経営側の攻防だったが、今回は創業家と経営陣が2つに割れた。創業家で勝久氏についたのは、千代子氏と長男の勝之専務。久美子氏を支持したのは、執行役員で次男の雅之氏と舞子氏、佐野(旧姓大塚)智子氏たち。久美子氏側は第2位株主のききょう企画の経営権を掌握した。14年7月、当時の久美子氏が勝久氏によって解任され、勝久氏が会長と社長を兼務。久美子氏はヒラ取締役に降格された。久美子氏は社外取締役の支持を取り付け、復権を目指す。
力関係が逆転したのは、勝久氏側の社外取締役の中尾秀光氏が1月の取締役会を前に自ら辞任したこと。14年12月期決算で赤字に転落する責任を、久美子氏らから追及されたためといわれている。中尾氏を追い落として取締役が7人となったことで、取締役会の勢力図が変わった。1月28日の取締役会で勝久社長(当時)を解職、久美子取締役(同)の社長復帰を求める緊急動議が提出され、賛成4、反対3で可決した。取締役会は久美子氏派が多数を占め、一旦は父から解任された娘が父を解任する絶好の機会が巡ってきた。
2月13日の決算取締役会で、勝久氏の会長解任が決議された。勝久氏は25日の会見で、取締役会の舞台裏をぶちまけた。
「三女の旦那で取締役の佐野(春生)が解任に回ったからだ。佐野の1票で4対3となり、(私は)解任となった。三女の家庭に目をかけてきたのに、なぜ(解任に)賛成したのかわからない。(私は)クーデターだと思っているが、社員はテロだといっている」
大塚家具は2月17日、会長で筆頭株主の勝久氏が株主総会に提出した株主提案について、「会社として反対する」ことを取締役会で決議したと発表した。勝久氏が提出した株主提案は、久美子氏が社長に復帰した翌日の1月29日に提出されている。勝久氏や長男の勝之専務を含む5人の社内取締役を選任するよう求めているが、候補に久美子氏の名前はない。久美子氏が勝久氏の会長復帰を一蹴したことで、勝負はついたと思われた。
しかし、勝久氏は捨て身の反撃に転じる。2月25日、東京・千代田区の大手町ファーストスクエアで開かれた「大塚家具の新経営体制構築を目指した株主提案に関する記者会見」は異様なものだった。会見の冒頭、勝久氏と長男の勝之専務ら株主提案の役員候補6人が登壇したほか、背後に部長クラス8人が居並ぶ。司会者から、部長8人は「大塚家具の危機的な状況を憂慮し、自らの意思で、久美子社長の速やかな退任と、勝久会長の復帰を望んでいます」と説明された。
報道陣からは父娘の衝突についての質問が相次いだ。「久美子氏を社長に選んだのは失敗だった。悪い子供をつくった。残念だ」。一度は自分の後継者に久美子氏を選択した勝久氏は、そう言って悔やんだ。そして久美子氏を解任するために、プロキシファイトを宣言した。
●久美子氏優勢との見方
久美子氏には、東京丸の内法律事務所パートナーで大塚家具社外取締役の長沢美智子氏など、有力なブレーンがついているため、次々と先手を打ってきた久美子氏側の勝利は揺るがないものとみられている。3月27日の株主総会に久美子氏側が提案している取締役のリストには、三越常務本店長だった宮本恵司氏や小売り部門のアナリストとして有名だった朝永久見雄氏、監査役には元新聞記者でイトーヨーカ堂取締役だった稲岡稔氏の名前が入っている。「小売りのプロフェッショナルを揃えた」と、大株主を説得する材料に使うつもりだ。
これに対して、勝久氏側は後手に回って追い詰められた感は否めない。「株主総会で結論が出る」(久美子氏)とはいっても、骨肉の争いの爪痕は深い。勝久氏の子飼いの部長クラスは反久美子氏の態度を鮮明にした。久美子氏と彼ら幹部たちの関係修復は不可能だろう。大塚家具再建のためには、「勝久氏と久美子氏の双方が経営の第一線から退き、外部からトップを招くべき」(市場関係者)との声も強まっている。
(文=編集部)