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新社会人がストレスを感じる原因と知っておくべきストレスとの付き合い方
4月に入社式を控えるフレッシャーズたちには、多くのストレスが襲い掛かる
現代は何かと「即戦力」が求められる世知辛い世の中だ。会社に入って右も左もわからないまま、いきなり戦力として見なされることも珍しくない。また、企業の先輩は必ずしも新入社員に懇切丁寧に指導しなくなった。「教えても自分の仕事はすぐには楽にならない」「上司からの評価が上がるわけでもない」など、その理由はいくつかあるだろう。
企業は学校とは異なる。学校では、テストやレポートでいい点数を取れていれば大概は問題はなかった。だが、会社はそうではない。たとえ先輩らによるOJTが整っていなくても、目に見える形で一定期間内に何らかの”成果”を出すことを求められるケースもある。
そのうえ、時には自分のやりたくない仕事もやらなければならない。望まない先輩と親密な交流をしないといけないケースもある。そのストレスたるや、学生時代とは比べものにならないだろう。そしてこうした中、新入社員は新しい環境の中で多大なストレスを感じるものである。
今回は桐和会グループの精神科医・波多野良二先生に、新入社員がストレスを感じる原因とそのストレスとの付き合い方などについて解説してもらった。
新入社員のストレスはどこから来るのか
波多野先生は「理想と現実とのギャップ」によって、新入社員の精神的ストレスは起こると指摘する。
「そのギャップが大きければ大きいほど、強いストレスを感じます。学生時代は、テキストに書かれていることを理解・記憶し、それらをアウトプットしていればよかったわけです。しかし、社会に出ればテキストに書いてない想定外で理不尽なことも多いです。新入社員からすれば、『聞いてないよ』ということばかりです」。
学生時代は、サークルやアルバイト先などで、自分と関わりあう人を選ぶことができた。関わりたくない人と交わることなく、やり過ごすことが可能だった。ただ、社会に出ればいや応なくさまざまな人と接することになる。成果を早急に求める上司や怖い先輩、仕事を残して立ち去る同期、要望の多いクライアント……。ストレスを感じる対象はそこかしこにいる。
「『都会で一人暮らしをする』『行動範囲が広がり他人とのトラブルが起こる』『金銭面の問題が出てくる』といったプライベートな部分でも、ストレスを感じることがあるでしょう。こうしたストレスにより、抑うつやイライラといった心理面の変化、胃の痛みやじんましんなど身体面の不調が起こることがあります。また、作業効率低下のため長時間労働になり、集中力低下による事故も起こりえます」。
考え方を修正して行動に移す
環境の変化に心と体が追いついていかない日々に起因する危険を回避するには、どうしたらいいのだろうか。
「ストレスをかわし乗り越えていくためには、『社会は理不尽なことが多くて付き合う人を選べない』という現実を受け止め、少しでも良い状態に近づける努力が必要なのでしょう。『考え方を修正して行動に移す』ことは、精神科診療でいう『認知行動療法』にあたります」。
波多野先生はその具体例を解説する。
「例えば、自分が理不尽だと感じたことは実社会では当然のビジネスマナーであったり、学生時代に当然と思っていたことが、年上の先輩の立場からすると受け入れられないことであったりするかもしれません。『考え方の癖』を自ら認知して修正する。そのことにより、自分自身への負荷を減らすことが大切です」。
心身の不調を感じたら、きちんと相談を
「考え方の癖」を修正して負荷を減らすことができたとしても、ストレス耐性は個々でばらつきがある。中には、それでも体調を崩してしまう人もいるかもしれない。波多野先生はその際、臆(おく)することなく周囲に相談することが大切だという。
「職場では直属の上司に相談しましょう。上司が原因の場合は、人事担当者に相談してください。親や兄弟に相談した方が良い場合もあるでしょう。心や体のバランスを崩してしまったら、配置転換などで環境を調整してもらったり、休息を取ったりする必要があるかもしれません。それでもだめなら、精神科を受診して必要に応じて治療を受けてください。『肝心なのは気の持ちようだ』などと医療機関を受診せず我慢しすぎると、症状が悪化してしまうことがあります」。
ストレスとうまく付き合おう
現代社会で人と関わる以上、ストレスを全く感じることなく生きるのは不可能である。そうだとすれば、いかにしてストレスをコントロールするかが肝要となってくる。
「まずは『ストレスがない人間なんてありえない』と考えましょう。人間はストレスがあり、それを乗り越える努力をするから成長するのです。『自然に接して日光を浴びる』『飲酒を減らすなど生活習慣を見直す』『気分転換法を見つける』『学生時代の友人に愚痴を言う』『時間がなければとにかく寝る』といったように、自分自身に合ったストレス発散法を見つけるようにしてみましょう」。
記事監修: 波多野良二(はたの りょうじ)1965年、京都市生まれ。千葉大学医学部・同大学院卒業、医学博士。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。東京の城東地区に基盤を置く桐和会グループで、日夜多くの患者さんの診療にあたっている。