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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 高水準ベアは広がるか
3月15日、トヨタ自動車の労使交渉で、今年のベースアップが昨年比1300円上積みの4000円で決着した。予想されたより、やや高めの賃上げだった。
トヨタの賃上げが高水準に落ち着いたことは、賃上げ相場にも好影響を及ぼす。なぜなら、春闘では「トヨタルール」なるものが浸透していて、トヨタのベースアップの範囲内で労使が妥結するという暗黙の了解が、多くの企業でなされているからだ。
実際、パナソニック、日立、東芝、富士通、三菱電機などの家電大手は、トヨタに次ぐ3000円のベースアップで決着している。
こうした高水準ベアは、政府の圧力によって実現された側面もある。昨年末に政府と財界、労働組合のトップが一堂に会して政労使会議を開いた。そこでは、経済の好循環を実現するためには賃金の上昇が欠かせないとする合意文書が交わされているのだ。
政府は労使交渉に介入しないというのが資本主義経済の大原則であるのに、それを破ってまで政府が賃上げを要請した。今年の春闘が「官制春闘」と呼ばれる所以だ。
問題は、この高水準ベアが中小・零細企業にも広がるかどうかという点だ。もし中小の賃金が上がらなければ、今回の高水準ベアは、ただでさえ拡大している格差をさらに広げることになってしまう。
残念ながら、私は、そうなる可能性が非常に高いとみている。昨年、まさにそうした状況が起きているからだ。厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、昨年の賃金上昇率は、500人以上の事業所が1.8%、100~499人が1.5%、30~99人が1.2%、そして、5~29人の事業所は、何と0.0%という数字だったのだ。
中小・零細企業では、まったく賃上げなどされていない。これがアベノミクスの下で起きている経済の実態なのだ。経団連加盟の大手企業には賃上げ圧力をかけられるが、中小企業にはできない。
仮に圧力をかけられたとしても、そもそも中小企業に賃上げの余力がない。それは、アベノミクスの成長戦略で、市場原理主義化を進めることにより、強い企業をより強く、弱い企業はそれなりにという政策が採られているからだ。
それでは、大企業と中小企業間の格差を縮小するためにはどうしたらよいのか。国は、中小企業の賃上げを誘導することができないのだから、方法は一つだろう。それは、定額減税のような形で、庶民にカネをばらまくのだ。財源は大きな利益を出している大企業から、法人税増税のような形で徴収すればよい。
あるいは、消費税率を8%から5%に戻すということでも構わない。消費税は低所得者ほど負担が大きいからだ。
ただ、こんなことを書いていて、自分自身が虚しくなってしまうほど、そうした格差解消のための動きはまったくみられない。それは、安倍政権が格差拡大を目的にしているとは言えないけれど、少なくとも格差拡大を本音では容認しているからだ。
だから、大企業や公務員など、いわゆる勝ち組になれなかった人の採るべき道はたった一つ。毎年、節約を積み重ねることで、増えない給与の下でも家計破綻を防ぐことだ。