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離島ブームで移住者が求めるストイックな魅力。厳しいゆえに生きる力が強まる
近年、静かなブームになりつつある若者の“離島移住”。
本土の田舎よりさらに辺鄙(ぴ)な土地になぜ? “離島博士”こと公益財団法人「日本離島センター」の三木剛志さんに聞いた。
―移住が可能な島は日本にどれくらいありますか?
三木 難しい質問ですね(苦笑)。参考までに、周囲が100m以上の島は日本に約6800島あり、そのうち有人島は約430島です。さらに戦後に無人化した島が約60島、その中にはまだ最低限のインフラが残されている島もあります。
―人気の島は、やはり石垣島(沖縄県)、屋久島(鹿児島県)あたりでしょうか。
三木 そうですね。しかし、地元の行事に参加しないなど移住者の都会感覚が優先してしまうと、住民との間に摩擦を起こすケースもあります。
―隠岐島の海士町(島根県)も注目されていますね。
三木 海士町は移住者に高学歴の有能な若者が多いのが特徴ですね。例えば、廃校寸前だった県立高校を数年でよみがえらせたのもソニーの元社員や京大卒などの若者たちです。この町では、地域おこしに関わる国のいろんな支援事業を真っ先に活用したり、地域再生に関心の高い有能な人材がキャリアアップの場ととらえて続々と流入する動きがある。いわば壮大な“社会実験場”なんです。
―島への移住者が増えているのは全国的な傾向ですか?
三木 統計はありませんが、佐渡島(新潟県)や対馬島(長崎県)、種子島(鹿児島県)など移住・定住支援に熱心な島ほど人口を増やしています。特に最近は、あえて厳しさを求めて移住する若者が増えているように感じます。
―厳しさを求めて島へ?
三木 宝島(鹿児島県十島村)がいい例です。島にはコンビニはおろか、役場も病院も銀行もガソリンスタンドもありません。鹿児島市までは週2便しかない定期船で13時間かかります。それでも移住する若者は多く、過去5年間に村へ定住したUⅠターン者の総数は100人を超えます。
―銀行もない島なのに!
三木 ええ(笑)。移住者は牛の畜産の手伝いをしたり、島バナナや海塩などの農水産物を製品化しネット通販で生計を立てたりしています。
―たくましいですね。
三木 もう少しソフトな島だと粟島(新潟県)。移住者や離島留学生の受け入れに積極的で、対岸の村上市へも高速船なら1時間程度。海産物が豊富で温泉もあります。ただ、この島はドクターがいない無医村。病気の際は船で村上市まで行く必要があります。
―島暮らしの魅力とは?
三木 島の過疎化は深刻です。ただ、移住する若者の存在が住民に活気をもたらし地域の潜在力を引き出している島も数多い。厳しい環境ゆえに生きる力が強まり、それが地域を元気づける結果につながっていることも実感しやすい。若者にとって島の魅力はそこにあるのだと思います。
(構成/興山英雄)