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「ひとり親」だから事件が起こるわけじゃない―教育カウンセラーが語る、子どもを守れない日本
諸富祥彦教授
凶悪な少年犯罪や痛ましい虐待事件が起こるたびに報道される加害者、あるいは被害者の家庭環境。子どもの保護者がひとり親だった場合には、ことさらセンセーショナルに書き立てられることも多い。ひとり親の子育てとは、いったいどうあるべきなのか。
心理学者で明治大学教授でもある諸富祥彦さんが、『男の子の育て方』『女の子の育て方』など子育てシリーズの最新刊として『ひとり親の子育て』(WAVE出版)を刊行。子育てにまつわる日本の制度の歪み、そして孤独な子育てを強いられているひとり親に対し、私たちができることとは?
子育てをどうしたらいいのかわからない
——諸富先生が『ひとり親の子育て』を出版された背景とは?
諸富祥彦さん(以下、諸富):担当編集者と話していた時、ひとりきりの子育てで苦しんでいる人が身近にいる、と聞きました。シングル、あるいは夫がいてもひとりきりで育児をしている「実質シングル」を含めると、日本にはひとりきりで子育てを担っている人がいかに多いか。その観点から「ひとり親」で括ってみよう、ということになりました。
私は千葉県市川市でスクールカウンセラーもやっていて、シングルの方がいらっしゃることもありますが、皆さん本当に大変です。時間の余裕は全くありませんね。
——カウンセリングにいらっしゃる方は、どういった悩みを抱えているのですか?
諸富:子育てをどうしたらいいのかわからない、という悩みが多いです。シングルマザーには真面目で熱心な方もたくさんいて、思春期のお子さんを持つ方から、「子どもに『死ね』と言われると、悲しくて死にたくなります」という相談を受けたことがあります。思春期の子どもの反抗や親を責める言葉は、その時期の子どもの務めのようなものです。自立に向けた一歩ですから。それを真に受けてしまい、自分を責めているんです。
子育て問題は「不足」でなく「過剰」が原因なことも
——何か気になることが起こると、「自分がシングルだから」と結びつけてしまう人もいるのでしょうね。
諸富:こういった反抗期に父親と母親がいる場合には、お互いに愚痴をこぼすこともできますが、ひとりで考え込んで追い詰められ、うつになってしまう人がいます。これは性格が真面目であるほど危ない。あるいは、父親の代わりもしなくては、と気負い過ぎた結果、厳しくしすぎて子どもを追い詰めてしまうのです。これは母性が薄れて父性が強く出ている状態です。…