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タイの犯罪報道記者ジム・ジュリー登場!

 タイの犯罪報道記者ジム・ジュリー登場!

 

  ジム・ジュリーは1年前まで「チェンマイ・メール」の犯罪報道記者だった。有能であり、もしかするとタイで2人目の上席犯罪報道記者の地位を獲得できたかもしれない。しかし今は、タイ南部の小さな漁村マプラーオでホテルの料理人兼洗い場担当として働いている。そのガルフベイ・ラヴリーリゾート・アンド・レストランは、名前こそ立派だがその実は倒壊寸前のおんぼろだ。当然客など来るはずもなく、いつも閑古鳥が鳴いている。

  ある日ジムは、飼犬のゴーゴーとスティッキー・ライスを散歩させている途中で人の生首を見つけてしまう。なんでも食べてしまうスティッキー・ライスを引っ剥がし、善良な市民としての報告義務を果たそうとするが、面倒くさがりの村長プーヤイ・ブーンはなかなか取り合ってくれない。ようようのことで警察が到着するも、死体回収を行うレスキュー業者(タイでは救急制度が整備されておらず、民間業者に託されている)の男たちの態度が非常に悪く、ジムの祖父で元警察官のジャーと一触即発の険悪な雰囲気になってしまうのである。おかげでジャーが、違法に拳銃を所持していることも判明した。やれやれ。

 『渚の忘れ物 犯罪報道記者ジムの事件簿』(集英社文庫)は、タイ在住のイギリス人作家コリン・コッタリルが2012年に発表した長篇だ。コッタリル作品はこれ以前に、ラオス在住の74歳の検死官を主人公とした『老検死官シリ先生がゆく』、続篇の『三十三本の歯』(ともにヴィレッジブックス)が邦訳されている。ゆったりめの雰囲気が魅力であった前シリーズに比べると本書はアップテンポで、どこかジャネット・イヴァノヴィッチを連想させるスラプスティックな味がある。

 〈ステファニー・プラム・シリーズ〉を引き合いに出したのは、ジムの家族もまたプラム家に負けず劣らずの曲者揃いだからだ。ジム自身のことは上に書いたとおり……だが、名前からは判りにくいけど女性である。34歳で離婚歴あり、なんとか犯罪記者として復帰することを夢見ている彼女は、生首事件を自分で追及することを誓う。そのために思わぬ陰謀のただなかに巻き込まれてしまうのである。彼女が職まで投げ打って住み慣れたチェンマイから見知らぬ地へとやってくることになったのは、元ヒッピーで時折突飛な行動に出る癖のある母親(通称はママ)を放っておけなかったからだ。それにつきあってマプラーオに移住してきたのは前述のジャーお祖父ちゃん(異常に偏屈で怒りっぽい)と弟のアーニーだ。…

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