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ライバルに勝つ「権謀術数」6

 ライバルに勝つ「権謀術数」6

 「本当にずる賢い人は、ずる賢く見えないもの。ずるいと思われたら、その時点で負け」――外交官として主に、ドイツや北朝鮮との交渉の現場を舞台に活躍した経験を持つ原田武夫氏は、そう語る。
 原田氏が「交渉に際して最も重要」と挙げるポイントは「あなた自身がゲームのルールをつくること。そうすれば、参加者はあなたがつくったルールやプロセスの中でしか動けなくなる」というものだ。たとえば米国の外交は、絶対に反論できないことを持ち出して前面に掲げ、世界の声を味方につけるのが得意だという。人権、環境、ダイバーシティ、民族性などを盛り込むわけだ。これには交渉の参加者も「うん」と容認せざるをえない。すると参加者は、提案者である米国に「では、ルールはどうしたらいいの?」と聞いてくる。そこで「待ってました」とばかりに、事前に用意しておいたドラフトを出す。この時点で世界は米国が想定した枠内で議論することになる。さらにそのうえで、米国にとって一番都合のいいルールが設定されていく。だから、絶対に勝つというわけだ。
 ただし「ここで自分が100%を取ろうとすると失敗する。これは日本人にありがちな行動パターン」と原田氏は警鐘を鳴らす。
 「欧州や米国は、勝者以外の国にも分け前を与える。すると、みんな文句を言わない。ライバルに勝つといっても、相手を打ちのめせばいいという発想ではなく、一見したところ、みんなのためにこれをやるんだよと定義するところが重要です」
 原田氏が経験してきた丁々発止の世界の交渉術は枚挙にいとまがないが、その中でも、かけひき下手な日本人のビジネスパーソンでも活かせるテクニックを解説してもらった。
 ■1. 論理をすり替える
 
 グーグル会長、訪朝の真意は
 外交の現場では、一見「論理のすり替え」と取られかねないような手法を用いて、相手を窮地に追い込み、自らの要求を実現させることがある。
 米国やヨーロッパでは常套手段といえるものだが、日本人は、まんまとこの手にはめられることが多い。
 たとえば最近、米国・グーグル社のエリック・シュミット会長が、いきなり北朝鮮を訪問して話題になったが、あれは「米国は北朝鮮に接近する」という意思表示にほかならない。ひいては、米国の同盟国である日本に対しても「北朝鮮と仲良くしろ」「日朝間にある拉致問題は、とりあえずいいじゃないか」と米国が言い出す可能性があるということだ。
 拉致問題について日本に真正面から働きかけても、テコでも動かないことは米国も百も承知。…

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