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震災の痕跡 集めて残す

 震災の痕跡 集めて残す

 紙くずのように丸まった道路案内標識や地震発生直後に止まった時計。やかんの中で温められていた缶入りのお茶――。2月下旬、福島県の南相馬市博物館で開かれた展示を見て、「こんな、よう集めてくれた」と、地元の来場者が感嘆の声を上げた。

  • 福島県南相馬市で、昨年7月に回収された道路案内標識。折れ曲がり破断した部分が、津波などの威力を物語る
  •  

      これらは福島県立博物館(会津若松市)など8団体で構成する「ふくしま震災遺産保全プロジェクト」による収集物だ。いずれも震災前、住民たちの生活の場にあったものだ。写真や映像では伝えきれない地震や津波の激しさ、奪われた日常生活を雄弁に物語る。

      福島県立博物館の高橋満学芸員(45)は「小さなものでも発見場所や関わった人たちの話が加わると貴重な記録になる。大震災を永遠に語り継ぐことが出来るはずです」と指摘する。

      東日本大震災から4年が経過した被災地では壊れた建物の解体や、がれきの撤去が進む。復興への足音が聞こえ始めたが、震災の痕跡は次々と消えていく。

      実物を残すことが難しい建物や街並みなどをデジタルデータとして保存する活動に取り組むのは、東北大学総合学術博物館のチーム。建物の内外を特殊な装置で計測、そのデータを基に作成した立体映像をメガネ型端末に表示する。目の前には仮想空間が広がり、実際に被災地にいる感覚が得られる。

      20年前の阪神大震災から復興を遂げた神戸市には、崩壊した岸壁の一部が当時の姿で残る。管理する神戸港振興協会の西哲(さとし)さん(60)は「地震を知らない住民も増えたが、岸壁は震災を伝える大事な存在。これからも、このまま守っていきたい」と話した。

      写真と文 竹田津敦史

      (2月19日から26日に撮影)

    • 津波で冠水したアスファルト路面のがれき。大量のフジツボが付着していた

       

      • 東日本大震災の被災地の美容室に残されていた時計。発生時刻の直後を指し示し止まっていた

         

        • 新聞販売店のストーブの上に残されていたやかん。店員が急いで避難したため、中には缶入りのお茶が入ったままだ

           

          • 被災した建物が今も残る福島県浪江町で、漁協の職員から話を聞く高橋満学芸員(中央)。収集物の背景を知るために丁寧な聞き取り調査が欠かせない

             

            • 被災現場を仮想空間で再現する研究を進める東北大学総合学術博物館の研究員(仙台市で)

               

              • 1995年の阪神大震災発生当時のまま保存されている神戸港の岸壁。夜はライトアップされ、観光客も足を運ぶ

                 

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