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「ラジオの恋」街に流れる絆の物語
◇オール広島ロケ映画 時川監督に聞く
すべて広島で撮影された映画「ラジオの恋」が各地で好評を博し、公開から1年ぶりに広島に戻り、府中町のシネコン「広島バルト11」で20日まで凱旋(がいせん)上映されている。広島の様々な景色を背景に、中国放送アナウンサー・横山雄二さん演じる仕事に疲れたDJが、ラジオの女神と出会う物語。監督の時川英之さん(42)は「人と人が強く結びついている、この街を描きたかった」と語る。(聞き手・山本美菜子)
――反響はいかがですか。
昨年の初公開時には、劇場にパイプ椅子を並べるほどにぎわい、「こんな広島は見たことがなかった」と言っていただけました。外国の映画祭で上映すると、「(原爆で)何もないと思っていたけど、こんなにきれいな街なのか」と言われ、普段の広島の話を映画にする意味にも気づきました。
――劇場では、映画の終盤にさしかかると、涙ぐむ観客も多かったようです。
ストーリーは、SFや恋愛ものなど8本ほど候補を作りました。横山さんと何度も居酒屋で話し合い、ラジオ番組で実際にあった体験を織り交ぜる形に落ち着きました。アコーディオン弾きの女性に恋をした男性リスナーの告白を、番組のリスナーたちが次々応援するなど、広島の人たちの温かさを感じてもらえるような話を登場させました。
「もうラジオなんて誰も期待してないんじゃないか」など、生放送をこなす横山さんが言うからこそ、切なさが伝わるセリフも多いです。広島は都会と違って人と人とのつながりが濃い。広島の話を広島のキャストでやっているのですが、内向きな内容にせず、心のつながりを描こうと考えました。
――路面電車の車窓、お好み焼きの鉄板、流川のネオンや瀬戸内の島々など見たことがある景色も、スクリーンを通すと新鮮でした。
僕自身、地元・広島で映画を撮ったことはなかったのですが、6本の川が流れる美しい街の景色や、人柄の良さなど、「いいな」と思うところを詰め込みました。原爆のことは知られていても、これだけ復興して平和になった広島の今を伝えるのは、大きな意味があると感じています。
◆時川英之(ときがわ・ひでゆき)
1972年生まれ、広島市西区出身。海外のドキュメンタリー専門のディスカバリーチャンネル・アジアで多くの番組に携わった。同市在住。