エアライン最前線 (5) デルタ航空が空港に巨額投資をする理由(後編)

　

　本拠地アトランタ空港に新国際線ターミナルをオープンさせたデルタ航空。前回に引き続き、同空港のサービスを詳しく紹介していく。

　アトランタ空港のメザナインレベル(中2階)には、デルタ航空の空港ラウンジ「スカイクラブ」を設置。「デルタはかねてより総額30億US＄を投じて空港、機内の施設、プロダクト、サービス向上とテクノロジー導入を進めている」(デルタ航空リチャード・アンダーソンCEO)。このラウンジはその象徴的な存在でもある。

　「デルタ　スカイクラブ」はメザナインレベル(中2階)に設置。ラウンジ内「ザ・リラックス・バー」にはスタッフが常駐。好みのドリンクを聞いてくれるなど細かいサービスをしてくれる

　音楽を聞いたり、エンターテインメントを楽しむなどしてリラックスできる「ビート・ラウンジ」。好みに合わせて利用できるよう細かく多彩なエリア分けがされている。ラウンジにこだわるデルタらしいデザイン

　1万2000平方フィート(約1115平方メートル)の広さを有する二層構造。300名収納可能な同社でも最大級のラウンジであり、8部屋のシャワールームやマルチタスクのビジネスエリア、ゆったりしたソファ、歓談向けのテーブル席とエリアも多彩。もちろんアルコールを含むドリンク類や軽食は無料で提供され、窓越しにはアトランタ空港の広々とした眺めが楽しめる。さらにオーディオ・ビジュアルを楽しめる「ビート・ラウンジ」、シャンパンやプレミアム・ワインなどを有料で提供する「ラグジュアリー・バー」は自慢の設備・サービスといえるだろう。

　窓からの眺望の良いエリア。ラウンジ内も二層構造

　シャワーも8部屋用意

入国後の手続きを簡略化

　「デルタ航空と70年以上にわたりパートナーシップを結んできたアトランタ市とアトランタ空港に感謝したい」との言葉で新ターミナル・オープンの喜びを表現したデルタ航空CEOのリチャード・アンダーソン氏。長い歴史と経験から生まれた乗客サービスでもあるのだ

　さらに、入国審査後の手続きが簡略化されたのも新しいターミナルのオープンに伴うサービス向上の1つ。従来、アトランタ空港では国際線で到着した乗客は入国審査後にターンテーブルで荷物を受け取った後、再度荷物を預けてセキュリティチェックを受け、国内線ターミナルへ移動して荷物を受け取らなければならなかった。この到着時の再度のセキュリティチェックと手荷物検査を受ける必要がなくなったのである。

　日本でもそうだが、世界中で低コスト航空会社(LCC)が利用者を増やす一方、従来のレガシーキャリアはそのLCC、さらには競合他社との差別化を図るためにサービス向上に力を入れており、その1つが空港の利便性や快適性の向上である。

　前述したようにデルタ航空では巨額を投じて様々なシーンでのサービス向上を進めているが、空港施設の改修や拡大はアトランタの他、ニューヨーク、シアトル、ロサンゼルス、ソルトレイクシティでも行う。さらに、ニューヨークのジョン・F.ケネディ国際空港では12億US＄を投じてターミナルの拡張プロジェクトを進行中。また、ロサンゼルス国際空港には40億US＄を投じて大規模な空港改修計画を進め、いずれも工事が終了すれば、「乗客の利便性や快適性が格段に向上する」(同社)としている。

　空港サービスの改善に力を入れる航空会社が増え、世界最大の乗降客を扱うアトランタ空港を拠点とするデルタ航空が進める空港の改修・拡大プロジェクトはその象徴だろう。

　「ヨーロッパ市場がクライシスで縮小している中、アジアは重要な市場」(同CEO)と位置づけるデルタ航空。当分は目の離せない航空会社である。

　ビジネスエリートのフラットベッドシート。ボーイング747-400、777、767の各機種で3年以内に標準化される