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出張中に行ける勝手気ままな私的世界遺産の旅 (20) 北京から青島へ、いよいよ始まる北京五輪開催地を巡る旅(後編)

出張中に行ける勝手気ままな私的世界遺産の旅 (20) 北京から青島へ、いよいよ始まる北京五輪開催地を巡る旅(後編) 

 ところで、北京五輪というからには、開催の中心は北京なのだが、実は結構いろんなところで競技は行われる。そこで、もう1カ所、北京五輪のヨット競技が開催される街、青島(チンタオ)を紹介しよう。

 青島は、北京から飛行機なら1時間弱、開業したばかりの新幹線(4月に起きた大事故は、この路線を走るローカル列車なのだが……)を使えば、6時間ほどで行ける港町だ。1900年ごろにはドイツの租借地として利用され、現在は経済特区に指定されており、日本企業を始め世界の多くの企業が青島に進出している。東京からでも直行便で2時間ちょっとという限りなく日本に近い、九州の向こうにある中国である。

 中国山東省の副省級市、青島。人口700万人を超える地方都市だ。日本からの観光客は少ないが、夏には避暑地として北京などから多数の観光客が訪れる

 青島は、日清戦争の後、三国干渉の末、中国からドイツへと租借されている。その後、第一次大戦で日本軍に占領されたが1922年に中国に返還。日中戦争で再び日本軍の占領下に置かれ、戦後は米軍が駐在、米軍が退いた後も対岸に朝鮮半島を望む立地から、中国の朝鮮半島戦略の拠点となったという複雑な歴史を持つ街である。そして現在は、経済特区として中国経済の一大拠点となっている。

 複雑な歴史を持つ場所には独特の文化が発展する。青島は、ドイツ文化の影響を強く受けており、建物などはヨーロッパ風。これは現在でも受け継がれており、青島の建物は多くが赤い屋根の洋風建築だ。中国にいながら、ヨーロッパ調の街並みが楽しめるのである。

 青島を一望できる信号山公園から見た青島の街並み。この写真だけを見ると、中国とは思えない雰囲気

 旧ドイツ領事館。肉まんを頬張りながら、青島の旧市街地を歩くと、雰囲気も良く、肉まんもおいしくてとても贅沢な気分に浸れる

 (右)天主教堂は、以前紹介したホーチミンの天主教堂そっくり。天主教堂って、作り方が決まっているものなのだろうか? (上)天主教堂近くの路地をぶらぶらしていると見つけたテディベアのお店。たぶん本物だと思うのだが、この国に来ると懐疑的になってしまう(笑)

 こうしたドイツ租借時代の古い街並みを残す青島だが、ホテルは現在の中心である新市街にとるほうが便利だ。洋館が建ち並ぶ旧市街の落ち着いた雰囲気とはがらりと変わり、新市街地では現代中国の経済発展を目の当たりにすることになる。

 高層ビルが建ち並ぶ新市街地のメインストリートが香港路。とにかく今の中国の都会は、スケールがでかいので、歩き回るのも一苦労

 旧市街地とはまったく異なる雰囲気。ちなみに、こんなところをブラブラ歩いている人は、ほとんどいなかった。地元の人たちを見ていると、移動はもっぱらタクシーを利用するらしい

 それでも路地を一歩入ると、中国らしい食堂が並ぶ。この通り、港町らしく海鮮料理の専門店が並んでおり、新鮮な魚介類を驚くほど安く食べることができる

 食堂の開店前、従業員のミーティングらしい。この辺りの食堂、生ものは柔な日本人のお腹には合わないと思うが、焼いたり煮たりした魚介類は絶品。あわび1個数百円程度で食べることができる

 もちろん、中国の避暑地というだけあって、リゾート施設も青島には多い。ところで、僕は、この「避暑地」という言葉に期待して、8月終わり頃、青島を訪れたのだが、気温は30度以上でものすごく蒸し暑い! まったく避暑には向かない場所である。青島は、紅葉の季節よりちょっと早い9月頃に訪れるのが、もっとも景色もよく、気候も快適なのだそうだ。

 青島にはたくさんの海水浴場がある。北京あたりからの観光客は、おそらくこれが目当てなのだろう

 夜になっても、海水浴場は人で賑わっていた。さすがに泳ぐには肌寒かったのだが、どうやら潮干狩りを楽しんでいるようだ

 市街地から少し離れた石老人海水浴場。このあたりまで来ると、海はきれいで、辺りは静か。時間がゆったりと進んでいく

 市街地から車で小一時間のところに労山という山がある。遠くに見える山は、道教の名山と讃えられる山

 新旧入り交じった不思議な雰囲気の青島から一変。荘厳な雰囲気の労山は景勝地としても知られており、中国の人たちが旅行したい場所として常に挙げられる所

 標高1000mを超える労山は、中国の太平洋沿岸ではもっとも高い山。海岸からいきなり1000m級の山がそびえるという立地のおかげで、ここ固有の植物なども多い

 青島市内にある青島ビールの工場。なお、歩いていくには不便な場所なので、タクシーを利用しよう

 ところで、労山は美味しいミネラルウォーターが湧くことでも有名である。この労山の美味しい水とドイツの文化が生み出した青島の名物が、青島ビールである。中華料理のお供として最近は日本でも飲むことができる青島ビールだが、僕は正直、青島ビールがうまいと思ったことがなかった。だが、「青島で飲む青島ビールは別物」と噂されている。そこで、うまい青島ビールが飲みたくて、青島にやってきたのである。青島ビールの工場は、簡単に見学することができる。

 ガイドなどいなくても、係員は観光客慣れしているので、片言の英語で入場券を購入できる。工場内では、青島のビール作りの歴史などを学ぶことができる

 現在の製造ラインもガラス越しに見学できる。ま、どうってことはない工場見学なのだが、お楽しみは最後に待っている

 いよいよ最終工程。実はこの後、入場券とともに受け取った半券で、出来立ての青島ビールを試飲することができるのだ

 「青島の青島ビールは別物」、この言葉の意味がよくわかった。青島で飲む青島ビールは、ものすごーくうまい! のである。工場で試飲したビールは、まったく冷えてなかったのだが、それでもものすごーくうまい。中国各地で飲める青島ビールだが、どうやら他の土地で飲めるのは、青島ビール会社が買収した地元ビール会社が製造したビールで、それを”青島ビールブランド”で売っているらしい。ドイツ直伝の製法で作っているのは、青島のみ。それって、青島以外の”青島ビール”が偽装ってことじゃ……? と思えてしまうのだが、とにかく、青島で飲む青島ビールはうまいのだ。なお、工場見学の最後にある売店では、青島ビールを購入することもできる。その場で、宅急便で送るよう手配することもできるのでビール好きなら一度はここを訪れてほしい。

 というわけで、北京の世界遺産巡りからまったく違う方向に飛んでしまったが、アジアで飲める格別のビールは、ビール好きの僕的にはまさしく世界遺産級なのである。まあ、ビールに興味はなくても、北京や青島は五輪開催に向け、日本人の想像を絶する急激な変化を遂げている。その変化は、多くの弊害も招いているようだが、これほど大きく変わっている国を間近で見れるチャンス逃してはもったいない。五輪を観戦できる幸運な人も、そうでない人も、”今”の中国は是非見ておくことをオススメしたい。

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