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列車ダイヤを楽しもう (36) JR北陸本線から第3セクター鉄道へ

 列車ダイヤを楽しもう (36) JR北陸本線から第3セクター鉄道へ

 

 北陸新幹線長野~金沢間開業にともない、旧JR北陸本線金沢~直江津間が第3セクター鉄道に経営移管された。金沢~倶利伽羅間がIRいしかわ鉄道、倶利伽羅~市振間があいの風とやま鉄道、市振~直江津間がえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインとなった。あわせて在来線特急列車の廃止、地域輸送重視の普通列車増発、快速列車の運転が実施されている。長距離輸送は新幹線に譲り、地域重視の鉄道になったわけだ。ダイヤ改正前後のダイヤを比較して、変化の様子を眺めてみよう。

 当連載第13回でも紹介したように、JR時代の金沢~直江津間は「特急銀座」だった。当時のダイヤは特急列車が最優先で、その隙間をついて普通列車が設定されていた。

 JR北陸本線だった頃の金沢~直江津間の平日ダイヤ(2015年2月)

 赤が特急列車、黒が普通列車。特急列車が多すぎて普通列車が埋もれてしまったので、普通列車を太線で示した。緑色は寝台特急「トワイライトエクスプレス」だ。「トワイライトエクスプレス」は上下ともに明るい時間帯にこの区間を通過する。下りはまさにトワイライトタイム。車窓からは景色をたっぷり楽しめて、沿線からはシャッターチャンスだった。

 列車の運行本数が多い区間は上辺側の金沢~津幡間だ。金沢~富山間の列車に加え、JR七尾線へ乗り入れる列車がある。大阪・名古屋からやって来た特急列車は、金沢駅で富山方面・和倉温泉方面の列車に分割され、それぞれ金沢~津幡間を走った。つまり、運行本数が倍になっていた。

 普通列車を見ていくと、金沢駅・富山駅付近の運行本数が多い。石川県・富山県の中心都市だから当然のこと。朝と夕方の通勤通学時間も増発している。富山駅では、高岡方面のほうが泊方面より運行本数が多い。泊方面の黒部駅までは富山地方鉄道があるので、その分運行本数は少なめといえそうだ。泊~直江津間はやや寂しい。運行間隔も1~2時間おきになっている。気軽にお出かけという気分にはなりにくい。行きも帰りも時刻表を調べて、時間を有効に使いたい区間だった。

 さて、この区間が現在はどうなっているか?

 第3セクター鉄道の路線となった金沢~直江津間の平日ダイヤ(2015年3月)

 こちらでは運行本数が激減した特急列車を赤い太線、第3セクター鉄道線内を走る快速列車を青い太線で強調してみた。緑色の「トワイライトエクスプレス」はもういない……、と感傷に浸ってもしかたない。「トワイライトエクスプレス」どころか、特急列車が消えてスカスカになっている。金沢駅から能登方面を結ぶ特急列車は残っているけれど、それでも運行本数は少ない。

 普通列車を見てみよう。全体的にJR時代とほぼ同じ運行本数が確保されているようだ。運行本数の多い区間も同じ。第3セクター鉄道に移管されたけれど、列車の運行については金沢駅から富山駅、富山駅から泊駅、泊駅から糸魚川駅、糸魚川駅から直江津駅で区切られている。第3セクター鉄道の境界駅は倶利伽羅駅・市振駅だけど、そこで列車を乗り換える必要はない。乗客の便利さは変わらない。

 むしろ、こちらのほうが普通列車の運行間隔が等間隔に近づいている。特急列車が消えたので、追い越されるために駅で待避する必要がなくなったし、始発駅の発車時刻も自由に設定できるようになった。とくに、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインは早朝と夕方に増発されている。通学生に便利なダイヤになったようだ。

 日中の普通列車を見ると、あいの風とやま鉄道の高岡~富山~泊間が等間隔になった。IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道の津幡~高岡間もほぼ等間隔になっている。運行間隔はやや狭くなったから、若干の増発といったところだろうか。

 青い線の列車に注目しよう。金沢駅と泊駅を結ぶ快速タイプの「あいの風ライナー」は、泊発金沢行が朝と夕方に1本ずつ、泊発富山行が夕方に1本、金沢発泊行が夕方に3本の設定だ。ホームライナーのような設定といえる。線の傾きが普通列車に比べると急角度で、かなりの俊足といえそうだ。この列車を日中にも走らせ、大阪・名古屋方面と金沢駅を結ぶ特急列車に接続できたら地元の人々にとって便利だと思う。新幹線に遠慮しないで走らせてもいいと思う。

 えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの快速列車も朝と夕方以降に設定されている。これも直江津方面への通勤を考慮しているようだ。ただし、糸魚川駅を10時台に発車する快速は通勤時間帯から外れている。これは普通列車でも良さそうだ。なぜ快速なのかというと、この列車は直江津駅で新潟行の特急「しらゆき3号」に接続している。それならもっと早く泊駅を発車して各駅停車でも良さそうだが、泊駅で高岡発の普通列車に接続している。2つの列車と接続するために、快速運転で橋渡しをしているようだ。

 もうひとつの謎がある。日本海ひすいラインの快速列車は1往復だけグリーン車を連結している。糸魚川駅を7時59分に発車する新潟行と、糸魚川駅20時13分着(新潟発)の列車で、ダイヤ改正前の特急「北越」に似た時間帯を走る。この路線で唯一のグリーン車だ。

 JR東日本のプレスリリースによると、この列車は485系6両編成とのこと。「新潟~直江津間でグリーン席をご利用の場合は、普通列車グリーン料金が必要となります」とある。しかし、えちごトキめき鉄道側にはグリーン料金の設定がない。JR時刻表3月号にはグリーン車マークが付いているから、車両締め切りで使用禁止というわけではなさそう。糸魚川~直江津間では、乗車券のみでグリーン車に乗れるようだ。北陸地方の第3セクター鉄道を乗り継ぐときは、ぜひ日程に組み込んでみたい。

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