＜埼玉放火殺人＞「被告がした…には合理的疑い」無罪判決

　

　２００８年に埼玉県志木市の自宅に放火し、妻子２人を殺害したとして、殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた無職、山野輝之被告（４０）の裁判員裁判の判決で、さいたま地裁は２３日、無罪（求刑・無期懲役）を言い渡した。河本雅也裁判長は「被告が放火したとするには合理的疑いが残る」と述べた。
　
　　山野被告は事件の約５年後に逮捕され、０８年１２月３日、家族を殺害する目的で自宅に放火し、妻（当時３３歳）と次女（同４歳）を一酸化炭素中毒で死亡させたとして起訴されたが、一貫して関与を否定していた。
　
　　公判で弁護側は「火災は漏電やペットのいたずらによる失火の可能性もある」と主張、判決は「失火の痕跡はない」と退け、放火による火災と認めた。
　
　　その上で、被告が自宅近くの防犯カメラに映っていた時刻と、燃焼実験に基づいた出火推定時刻を検討。「被告が外出中に出火した可能性が高く、証拠は第三者による放火を示唆している」と指摘し、「精神的に不安定だった妻が睡眠薬の副作用で放火した可能性を否定できない」と結論付けた。
　
　　被告の弁護人の岩本憲武弁護士は「裁判員に非常に丁寧に証拠を分析していただいた。刑事裁判の原則通りの正しい判決が出た」と語った。
　
　　さいたま地裁では今月３日にも、両親に対する殺人と非現住建造物等放火の罪に問われた被告の裁判員裁判で無罪判決が出ている。さいたま地検は「（３日の判決に対しては）控訴して是正を求めている。今回の判決内容を精査し、上級庁と協議のうえ適切に対処したい」とのコメントを出した。【木村敦彦】