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コラム:雇用統計後のドル独歩高に「自滅」リスク=上野泰也氏
上野泰也 みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 11日] – 3月6日に発表された米2月雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比29.5万人増と予想を上回る強い数字となり、失業率は2008年5月以来の水準である5.5%に下がった。これらの数字を材料にして「米利上げ6月開始」説が市場で久しぶりに勢いを増したため、米国債利回りは急上昇し、為替市場では幅広い通貨に対してドルが買い進まれた。
週明け9日以降もドル買いの勢いは止まらず、ドル上昇幅において出遅れ感があるとみられていた対円相場は、10日の東京市場で一時122円台に乗せた。
だが、今般の円安ドル高の持続性について、筆者はかなり懐疑的に見ている。統一地方選を控える日本の政府・与党から過度の円安をけん制する発言が出やすいという事情もあるが、最大の理由は、イエレン議長が率いる米連邦準備理事会(FRB)の利上げがアグレッシブなものになる可能性が極めて低いことである。
今回の米雇用統計を見ると、利上げ開始時期との関連で市場の注目度が高い民間部門の時間当たり賃金は24.78ドルで、前月から0.03ドル増にとどまった(前月比プラス0.1%)。前年同月比ではプラス2.0%で、過去5年ほど推移してきたレンジ内にしっかり収まる穏当な数字である。サービス分野のインフレ動向に大きな影響を及ぼす賃金の伸び率が加速し始めた兆候は、今回も見られなかったわけである。
昨年12月のFRB理事・地区連銀総裁経済見通し(中心的傾向)で、失業率の「長期」水準(自然失業率に相当)として示された数字は5.2―5.5%だった。このレンジの上限である5.5%まで実際の失業率が低下したため、米国では完全雇用が実現したのではないかとする論者もいる。だが、雇用の「量」だけではなく「質」についてもイエレン議長は以前から十分目配りしており、5.5%という数字が半ば機械的に早期利上げのトリガーになるとは考えにくい。
FRBが課されている2つの責務である「物価安定」と「最大雇用」のうち、利上げに始まる金融政策の正常化を推し進める際の議論の軸足は、「物価安定」へとすでに傾斜しつつあると筆者は見ている。実際、イエレン議長は2月下旬に行った定例議会証言の中で、以下のように述べている。
「労働市場の状況が改善を続け、さらなる改善が予想される場合、入手されるデータをベースにして、インフレ率がわれわれの2%の目標に向けて中期的に戻っていくだろうとFOMC(米連邦公開市場委員会)が合理的に確信する時に、FF(フェデラルファンド)レートの目標レンジを引き上げることが適切になるだろうとFOMCは見ている」(筆者訳)。2%に向けた物価上昇率加速について「合理的な確信」が得られたというコンセンサスがFOMC内で得られるまでには、データの蓄積を含め、少なからぬ時間が必要だろう。 続く…
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