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マッサン人気と「受難の90年代」が招く空前のウイスキー品薄
3月28日の最終回に向けて連日20%超えの高視聴率が続くNHK連続テレビ小説『マッサン』につられるように、ウイスキー人気がうなぎ上りになっている。
ドラマゆかりの国産ウイスキーの中・高級品に注文が殺到。品薄になっているのは、“マッサン”のモデル・竹鶴政孝氏が創業したニッカウヰスキーの「竹鶴」、「余市」、「宮城峡」、サントリーの「山崎」、「響」、「白州」など。いずれも前年の3~4割増の売れ行きで全国的に入手困難な状況となり、バーや酒販店から「売れるタイミングなのにモノがない」と悲鳴が上がっているのだ。都内の洋酒販売店店主はこう語る。
「『竹鶴17年』は在庫切れ。『山崎12年』もあと数本で品切れです。入荷のめどはありません。これほど売れたのは記憶になく、急に来たウイスキーブームに驚いています」
サントリーは原材料高騰を理由に今年4月からの「山崎」「響」などの値上げを発表した。値上げ前の駆け込み需要も品薄に拍車を掛けているようだ。
ウイスキーは、“年代モノ”であるためブームが到来したからといって簡単には増産できない。『マッサン』のウイスキー考証を担当したウイスキー評論家の土屋守氏が語る。
「ドラマでも描かれたように、ウイスキーは原酒を長年熟成させる仕込みが欠かせません。今日仕込んで明日出荷するというわけにはいきません(苦笑)」
ウイスキーは大麦麦芽(モルト)を原料に糖化・発酵させ、蒸溜して原酒を作る。これを樽の中でじっくり寝かせて熟成させる。例えば「山崎12年」なら、12年以上貯蔵された山崎蒸溜所のモルト原酒のみを混和して作られる。
「品薄になっている原因の一つは、1990年代にウイスキー人気がどん底で生産量が抑えられていたからです。特にニッカはアサヒと提携する前の苦しい時代で、かなり生産調整していました。だから原酒が少ない。それが世に出るタイミングに、ブームが重なった」(土屋氏)
この状態はいつまで続くのか。
「保存調整している原酒の在庫があるので販売停止にはなりませんが、柏工場をフル稼働しても注文に追い付かず、出荷量を調整せざるを得ない状況です」(ニッカを販売するアサヒグループホールディングス広報部)
「将来の安定供給に支障を来す恐れがあるので出荷量を調整しています。販売停止は予定していません」(サントリーホールディングス広報部)
前出の土屋氏が語る。
「2000年代中盤にサントリーが火付け役となって起きたハイボールブームの際に作られた7~8年モノの原酒は結構あります。それが使えるようになるまで品薄が続きそうですね」
10年、20年先の需要を見越して作らなければならないのだからマッサンの苦労が偲ばれる。
※週刊ポスト2015年3月20日号