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福島第一原発から約6キロ、ある家族の「一時帰宅」に同行した

 福島第一原発から約6キロ、ある家族の「一時帰宅」に同行した

 東日本大震災から4年が経った。しかし、福島第一原発事故による汚染のため、わが家に帰れないまま避難生活を続ける人は、福島県だけでまだ約12万2000人(2014年末)もいる。関東なら国分寺市、関西なら富田林市といった大都市近郊の中規模都市ひとつが、地図から消えてしまった計算になる。
 
  その人たちは今どうしているのだろう。どんな気持ちでいるのだろう。特に、今も「強制避難」「立入禁止」が続く「帰還困難区域」に家がある人たちは数カ月に1回の「一時帰宅」しか許可されない。彼らの思いを知りたくて、富岡町から避難してきた人たちが暮らす、福島県いわき市にある仮設住宅を訪ねた。そうした「立入禁止区域」に入るには、立ち入りの許可証を持つ住民に同行するしか方法がない。そして2015年2月、ある家族のご厚意で「一時帰宅」に同行することができた。
 
  いわき市の「泉玉露仮設住宅」はJR常磐線の線路のすぐそばにある。東京・上野から特急に乗って約2時間。泉駅で降りて跨線橋(こせんきょう)に上がると、駐車場の向こうに灰色の平屋プレハブ住宅が並ぶ「団地」が見渡せた。
 
  目指す西原清士さん(63)・千賀子さん(65)の部屋は一番奥のようだ。「B1~3」「C2~4」などと機械的な部屋番号を確かめながら、プレハブとプレハブの間の通路を歩いた。干された布団や洗濯物の間を、身をくねらせながら進む。棚に大きな盆栽が並んでいる棟もある。避難の時に持ち出す余裕はなかったはずだし、屋外のものは汚染の恐れがあると持ち出しも禁止されていたはずだから、ここに入居してからのものだろう。「仮設」の「避難先」とはいえ、4年もの年月が経つと、好むと好まざるとにかかわらず生活はそれなりに定着する。それだけの時間が流れたのだ。
 
  西原さん夫妻はワゴン車のエンジンをかけて待っていてくれた。1月、東京圏のボランティア団体「ウシトラ旅団」に同行して、泉玉露団地のもちつき大会を取材に来た。その時に紹介してもらったのが西原さん夫妻だった。千賀子さんは、もちをこね、きな粉やあんこをまぶす奥さんたちの間をてきぱきと走り回っては、全体の作業を前に進めていた。仮設団地の役員なのだろう。世話好きな人に見えた。
 
  「ひとつだけ条件があります」
 
  一時帰宅に同行させてもらえませんか、とお願いすると千賀子さんは厳しい声で注文を出した。
 
  「今までいろんな新聞や雑誌が取材に来たんだけど、東京新聞以外はどこも掲載した紙面を送って来ないのよね」
 
  なるほど。…

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