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「スマホの使いすぎで小指が変形=テキストサム損傷」は誤用? いつから誤解が広まったのか調べてみた
スマートフォンの長時間使用が原因で、指の形が変わってしまったり、しびれや痛みを感じたりする「テキストサム損傷」が話題になっています。
【誤解が広まるきっかけになったまとめ】
――が、そもそも本来の「テキストサム損傷(text thumb injury / texting thumb)」は、「サム(親指)」と言う名のとおり、スマホの使いすぎで生じる親指の腱鞘炎などを指す造語。今回話題になっていたのは「スマホの使いすぎによる小指の変形」でしたが、いつのまに「親指の腱鞘炎」だけでなく「小指の変形」もテキストサム損傷と呼ばれるようになったのか? 気になったので、日本での「テキストサム損傷」の使われ方について調べてみたところ、誤解が広がるきっかけになった「震源」をほぼ特定することができました。
●2011年12月5日:AFP通信が「テキストサム損傷」について報じる
テキストサム損傷について、おそらく日本で最初に報じたのはAFP通信の「スマートフォン使用で体を痛める人が増加、使いすぎにご用心」(2011年12月)という記事。これ以前でネットやTwitterを検索しても「テキストサム損傷」という単語は出てこず、この記事が初出とみてほぼ間違いなさそうです。
記事内では、「小さな画面を長時間眺めたり、小さなキーを打ち続けることによって、体を痛めることもある」「スマートフォンの使いすぎで親指が腱鞘炎になった患者を診た」などとあり、ここでは小指の変形については触れられていません。
●2012年12月ごろ:ネットで「小指の変形」が話題に
それから1年ほどして、今度はネットやTwitterなどで「スマホの使いすぎで小指が変形した」といった投稿が現れはじめます。こうしたツイートを集めたNaverまとめも作られ、心当たりがある人が「やばい!」と拡散。ただ、このころはまだ「テキストサム損傷」という言葉は使われていませんでした。
●2012年12月29日:JCASTニュースが「小指の変形」報道 ← ここで誤解発生?
そしておそらく、「小指の変形=テキストサム損傷」という誤解が決定的に広まったのがここ。上記Twitterの報告をもとに、JCASTニュースが「スマホ使いすぎで小指が変形した! 『怖すぎる症状』の訴え増える」という記事を掲載するのですが、この中で「海外ではこうしたスマホなどが原因で起こる指へのダメージはすでに『テキスト・サム損傷』と呼ばれ、問題視する声が広がっている」と説明されているのが確認できます。
ただ、記事ではおそらく「スマホによる指へのダメージが問題になっている一例」としてテキストサム損傷をあげていたと思われますが、これを読んだ一部の読者が「小指の変形=テキストサム損傷」と誤解。翌日には「スマホの使い過ぎで指が変形するのは『テキスト・サム損傷』って言うらしい」というまとめまで作られ、「サムって親指のことだけど、親指以外の指にでも『テキストサム損傷』って使えるんですね」と、ますます誤解が広がっていきます。これまでは別々の話題だった「テキストサム損傷」と「小指の変形」が、ここで完全に合体してしまいました。
●2013年以降~ 「テキストサム損傷=小指の変形」という認識が定着
結局、上記記事やまとめが決定打となり、2013年以降になると「小指が変形してた=テキストサム損傷だ!」という認識がほぼ定着。Twitterでも「テキストサム損傷=小指の変形」というツイートが頻繁に見られるようになっていきます。
また、そもそも「テキストサム損傷」という言葉を作った海外ではどうなのか、念のため調べてみたのですが、ざっと検索してみたかぎり、海外では「テキストサム損傷」はやはり親指の腱鞘炎を指す言葉であり、小指の変形という意味で使っている例は見当たりませんでした。となるとやはり「テキストサム損傷=小指の変形」というのは、誤解から発展した、日本独自の呼び方と考えてよさそうです。
●ドコモは「ネットで話題になっていたので」
以上を踏まえて、あらためてドコモ広報部に問い合わせてみたところ、今回のツイートは「特に医学的な背景があったわけではありませんが、インターネット上で話題になっており、実際に痛みを訴えている人も多かったことから、スマホを使う際の注意喚起としてツイートさせていただきました」(ドコモ広報部)とのことでした。
当初ねとらぼでも、「サムなのになぜ小指……?」と疑問に思いつつ、2013年の時点ですでにかなりの人が「小指の変形」という意味で使用していたこと、もともと正式な病名ではなく造語であったことなどから、「テキストサム損傷=スマホによる指へのダメージ全般」という意味合いで記事を作成していました。が、調べてみるとやはり「小指の変形」はもともとテキストサム損傷とは関係のない症状で、誤解により広まった日本独自の呼び方という可能性が高そうです。