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アルテックがタイでの3Dプリンタ販売に本格進出–その先に見据える新しいものづくり

アルテックがタイでの3Dプリンタ販売に本格進出–その先に見据える新しいものづくり 

 3Dプリンタはどこで最も力を発揮するか。それはものづくりの現場だ。近年の技術的進歩によって、ラピッド・プロトタイピング(迅速な試作品づくり)にだけでなくDDM(Direct Digital Manufacturing=3Dプリンタで最終製品を製作すること)も可能になったことで、治具(部品や工具の位置合わせなどに使う器具)や試作品の製作期間を著しく短縮し、生産・開発の効率を向上させることができるようになった。日本のメーカーでも工場に導入するケースが増えてきており、産業界における存在感はますます高まっている。

 アルテック株式会社 取締役 執行役員 陶山秀彦氏

 そのような状況の中、大手3Dプリンタ・メーカーであるストラタシスの日本販売代理店であるアルテックが、10月よりタイでの3Dプリンタ販売を開始すると発表した。タイ進出の狙いや取り組み、今後の展望について同社 取締役 執行役員 陶山秀彦氏に話を聞いた。

タイに眠る3Dプリンタ需要

 数年前に顕在化したチャイナリスクによって、日系企業が中国から東南アジア、中でもタイへ製造拠点を続々と移転している。陶山氏によれば現在その数は約9000社に上り、その中で製造業は約2500社を占めるとのこと。

 陶山氏は「タイでは日系メーカーの工場の周りに下請けの工場があり、城下町を形成しています」と語る。工場がそれだけあれば、当然3Dプリンタのニーズもあるはず。しかし、タイでは販売代理店が1社しかなかったことから、あまり普及しておらず、「われわれに声がかかった」という。

高いノウハウを持つ主力社員を派遣 – 日本と同じレベルのサポートを提供

 同社は2002年にバンコクに現地法人を設立し、事業を展開してきた。同国での事業は好調とのことで、陶山氏は3Dプリンタ販売事業にも自信を見せる。

 「我々は、産業機械の専門商社として、ものづくりの現場におけるニーズを熟知しています。開発段階の試作品づくりだけでなく、製造ライン上でも3DプリンタによるDDMのニーズは必ず存在する。例えば、治具のように多品種・小ロットなものの場合、アルミの削り出しで作ると少なくとも数十万円はかかってしまうが、3Dプリンタで出力すればそれを数万円に抑えることができる。実際に使うことのできる治具や工具が、今までよりはるかに低コストかつ短期間で製作できるようになるのです」

 かねてから3Dプリンタ事業の海外展開を検討していた同社にとって、今回のタイ進出は重要な契機という認識を示しており、主力社員をタイに送り込むことで、その本気度を内外に示す。具体的には3Dプリンタ事業の豊富な経験と実績を持つ トップセールススタッフに加え、ストラタシスよりトレーニングを受けたエンジニアを併せて派遣する。同社が本気で海外展開を行っていく姿勢の表れであり、「お客様に安心してご利用いただくために、日本と同じレベルのサポートを提供していく」ための決断だ。

万全の体制づくり、現地にショールームもオープン

 アルテックでは、当面は国内のクライアントでタイに進出しているメーカーに対する営業活動をベースとして、現地のメーカーをはじめ、日系以外の顧客獲得も目指していく。主力社員を派遣し、日本のスタッフと連携をしながら高いサービスクオリティを保つと同時に、タイ人スタッフの雇用も並行して進めているという。また、現地のソフトウェア販売代理店と提携して販売チャネルのさらなる強化・拡大を図るなど、販売・サポートの基盤作りに余念はない。

 10月には営業所を兼ねた3Dプリンタのショールームも開設。FDM方式の機種ではuPrint SE Plus、Polyjet方式の機種ではObjet30pro、Objet EDEN260VそしてObjet 500 CONNEXの5機種が展示される。先日発表されたばかりのFortus450も11月末には展示される予定となっており、今後、現地のニーズに応じた最新機種を常に揃えた状態を目指すという。

 陶山氏は、「1年目は基盤づくりです。年間20台の販売、売り上げ1億円を見込んでおり、3年目には年間売り上げ3億円を達成したい」と具体的な目標を明かす。

  Objet 500 CONNEX

 uPrintSEPlus

 Objet30pro ※台座は製品に含まず

東南アジア各国への展開、DDMを活かしたサービスビューローも視野に

 冒頭で述べたように、技術の進歩、特に素材の進化によってDDMが実現したことで、3Dプリンタの可能性はまた一段と広がった。「これからどんどん最終製品に使える素材は増えていく。日本で設計した製品データを、タイやインドネシアの工場へ送って、向こうで出力するようになる」と陶山氏は確信している。物流がなくなり、データのやり取りだけで製品の開発・製造が行われるようになるのだ。

 そうなると3Dプリンタ自体の需要はもちろん、設計までは自分たちで行い、出力は外注するといったニーズが発生する。同社はそうしたニーズに応えるサービスビューロー事業も視野にいれており、現地に実機を運び込んだという意味で、バンコクに新しくショールームをオープンしたことはその布石ともいえる。

 「最終的には機械販売だけでなく、DDMを含めたトータルなサービスを提供していきたい」というビジョンの実現に向けて、タイへの進出はその足がかりとなる。ゆくゆくは、すでに営業所のあるインドネシアをはじめ、ベトナムなど、東南アジア各国へ3Dプリンタ販売事業を広げていくことも検討しているという。

 ニーズの多様化、開発・製造のボーダレス化など、3Dプリンタを中心にものづくりの現場で起こっているさまざまな変化に対して、アルテックがどのような策を打ち出していくのか、これからも注目していきたい。

 アルテック株式会社については⇒こちら

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