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京大、タンザニアでチンパンジーがヒョウに補食されている初の証拠を発見

京大、タンザニアでチンパンジーがヒョウに補食されている初の証拠を発見 

 京都大学は5月21日、タンザニアのマハレ山塊国立公園における研究対象のチンパンジー集団の遊動域を中心にして定量的にヒョウの糞を収集してその内容物を調査した結果、チンパンジーの膝蓋骨2個および指骨2個を発見したと発表した。

 成果は、京大 野生動物研究センターの中村美知夫准教授、同・理学研究科の中務真人教授、同・井上英治助教、同・仲澤伸子大学院生、花村俊吉日本学術振興会特別研究員らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、5月21日付けで人類の進化を扱った国際学術誌「Journal of Human Evolution」に掲載された。

 人類進化の過程において、大型ネコ科動物による捕食が重要な淘汰圧となったとする仮説があり、実際に「プロコンスル」などの初期のヒト上科が食肉類に捕食されていたことを示唆する化石証拠も残っている。その一方で捕食圧を正しく評価するためには、現生の大型類人猿に対する実際の捕食に関する情報を蓄積することも不可欠だ。

 タンザニアのマハレ山塊国立公園では、これまで50年近くの間、野生のチンパンジーに関する研究が、京大を中心とする研究チームによって継続されてきており、研究対象のチンパンジー集団「M集団」については、出生年や血縁関係など詳細な情報が蓄積されている。

 マハレには大型肉食獣としてヒョウが生息していることが知られているが、これまでヒョウを対象とした研究がなかったこと、夜行性が強いことなどから、ヒョウの行動や生態については詳しくわかっていなかった(画像1)。そうしたことから、これまでにマハレで実際にヒョウがチンパンジーを食べているという報告例がなかったのである。

 それにより、一部の研究者は東アフリカのチンパンジーには捕食圧はほとんどかかっておらず、それが彼らの社会構造などにも影響を与えている、といった見解が示されていた。

 画像1。トラップカメラで撮影されたマハレのヒョウ

 そこで研究チームは今回、M集団の遊動域を中心にして定量的にヒョウの糞を収集し、その内容物の調査を実施。そしてその中の1つから、チンパンジーの膝蓋骨2個および指骨2個を発見したのである(画像2)。形態学的に分析したところ、骨の縫合や大きさなどの特徴から、オトナのメスのチンパンジーであることが推定された。

 画像2。ヒョウの糞から発見されたチンパンジーの骨

 また、骨の1つを粉砕してDNAを抽出し、該当期間にM集団から消失したチンパンジーのDNAとの比較も行われた。DNAからもメスのチンパンジーであることが支持されたが、消失したM集団の個体のDNAとは一致しなかった。このことからヒョウは、M集団以外のチンパンジーを食べ、M集団の遊動域内で排泄したことが示唆されるという。

 今回の発見は、マハレのみならず東アフリカのチンパンジー亜種で初めてチンパンジーがヒョウに食べられたことが確かめられた事例であり、ヒョウによる潜在的な捕食圧が広く存在していることを示唆する重要なものだと研究グループは説明する。そのため、これまでマハレのチンパンジーの死亡やケガなどについて、ヒョウが関与しているとは考えられてこなかったが、今回の発見を考慮すれば、そうした可能性も今後は検討していく必要があるとコメントしている。

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