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京都府大など、花びらをまっすぐ伸ばすのに必要な遺伝子「FOP1」を同定
京都府立大学(京都府大)は、基礎生物学研究所(NIBB)、東京大学との共同研究により、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、花びら(花弁)をまっすぐ伸ばすのに必要な遺伝子「FOP1」を同定したと発表した。
成果は、京都府大の武田征士助教、NIBBの岩崎晃院生、同・立松圭助教、同・岡田清孝所長、東大大学院 理学研究科の植村知博助教らの共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、米科学雑誌「Plant Physiology」に掲載される予定だ。
花は植物にとって花粉を媒介する虫や鳥を惹き付け、受粉によって次世代に遺伝情報をつなぐ重要な器官だ。顕花植物(花をつける植物)は、世界中で40万種以上あるといわれており、さまざまな色や形、においを持つ花を咲かせる。
通常、花は外側から「がく片」、花弁、雄しべ、雌しべが同心円状に配置され、その色や形、形成場所などは種によって決まっている。花器官の中で最初に発達するのはがく片であり、つぼみを覆うことで、中の花器官を保護する役割がある。雄しべ、雌しべは生殖を司る器官であり、花弁は視覚的に花粉媒介者を誘因する役割がある。このため、花弁は顕花植物の中で最も多様な形態を持つ器官となっている。
シロイヌナズナ(画像1)では、4枚のがく片、4枚の花弁、6本の雄しべ(うち2本はほかの4本に比べて短い)、2枚の融合した心皮からなる雌しべが形成される。雄しべの上部に「葯(やく)」ができる頃、花弁はその葯とがく片に挟まれた極めて狭い領域をスルスルとまっすぐ伸長し、やがて開花へと至る仕組みだ。
そしてシロイヌナズナの変異体スクリーニングによって、研究グループは開花時に花弁が曲がる突然変異体を見つけ出した。花弁伸長が異常になっており、それを解析したところ、花弁の細胞膜にあるワックス合成酵素様タンパク質が重要な役割を果たすことがわかったのである。また、その突然変異体は「folded petals1(fop1)と」命名された(画像2)。
画像1。実体顕微鏡像で見たシロイヌナズナの野生型の花
画像2。同じく実体顕微鏡像で見たシロイヌナズナのfop1突然変異体
研究の結果、fop1突然変異体では、花弁原基形成や初期発生は正常であったが、葯とがく片の間の狭い領域を伸長する際、花弁ががく片や葯に引っかかったまま伸長を続け、その結果花弁が曲がったまま開花することが判明。
つぼみの段階でがく片を除去すると花弁はまっすぐ伸長したこと、また花弁表皮細胞表層の「ナノリッジ構造」(花弁の表皮細胞表層に見られる筋状の構造)が押しつぶされたような形跡が見られたことから(画像3・4)、つぼみ内での狭いスペースと、花弁-がく片間の物理的な接触が原因であると予想された。
画像3。走査型電子顕微鏡で見た野生型のシロイヌナズナの花弁の表皮細胞
画像4。同じく走査型電子顕微鏡で見たfop1突然変異体の花弁の表皮細胞。ナノリッジ構造が上から押しつぶされたようになっている(矢印)
突然変異体の原因遺伝子を特定する手法の1つである「ポジショナルクローニング」によって原因遺伝子を同定したところ、その遺伝子FOP1は「ワックスエステル合成酵素/ジアシルグリセロール・アシルトランスフェラーゼ」様の酵素をコードすることがわかった。
FOP1は伸長中の花弁で発現し、細胞膜に局在していることも解明。これらの結果から、FOP1は花弁の表層で、花弁がスムーズに伸びていくための潤滑油のような役割を持つ物質(ワックスエステルだと予想される)を合成していることが示唆された。
花弁伸長は、花の形作りのため、ひいては花粉媒介者を正しく惹き寄せるために重要だ。また、さまざまな形の花弁を持つ花き品種が多く売られており、花弁形態の調節は花き産業にとっても重要である。FOP1遺伝子のノックダウン株をさまざまな花き品種に適用することで、今までにないような形の品種を作出できる可能性があるという。
シロイヌナズナfop1と似たような表現型で、アサガオの「台咲」変異が知られている。この原因遺伝子や、花弁が曲がる原因などはまだ明らかにされていないが、今回の研究成果の利用により、園芸価値のある品種について分子レベルでその仕組みがわかることが示唆されたと、研究グループはコメントしている。