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幼・老アブラムシが共同防衛戦線

 

 常緑樹のイスノキに作った巣(虫こぶ)の中で集団生活をする「ヨシノミヤアブラムシ」は、敵の侵入時に、最も若い幼虫と繁殖を終えた“おばあちゃん”アブラムシが共同で防衛戦線に加わり、集団の繁殖を維持していることが、東京大学大学院総合文化研究科の嶋田正和教授と柴尾晴信特任研究員、植松圭吾・日本学術振興会海外特別研究員らの研究で分かった。集団内の最年少と最年長の個体が同時に利他的な行動を取る例は、社会性昆虫としては世界でも初めての発見だという。研究論文は英国王立協会の「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」(16日、オンライン版)に掲載された。

 ヨシノミヤアブラムシは、直径3センチメートルほどの虫こぶの中でイスノキの師管液を吸って成長し、雄を必要としない単為生殖によって子どもを増やす。はじめに生まれた虫は翅(はね)を持たない無翅(し)成虫となり、次いで無翅成虫から生まれた子どもが翅を持った有翅成虫となる。有翅成虫は翌年の春に虫こぶに開いた穴から出て、新たな繁殖地を求めて飛び出すが、この時に、虫こぶはテントウムシなどの天敵に襲われやすい。

 こうした侵入者へのヨシノミヤアブラムシの防衛行動としては、生まれたばかりの1齢幼虫が口吻(ふん)を突き出して敵を攻撃することや、繁殖後も無翅成虫として長生きしている“おばあちゃん”アブラムシが腹部から分泌液を出して、敵に体ごと付着して撃沈するといった2種類の形態があることを、これまで研究グループが明らかにしてきた。

 今回研究グループは、穴の開いた虫こぶを開口部から奥へ、天敵に捕食されやすさにもとづいて3区分し、それぞれにいるアブラムシの個体数を調べた。その結果、捕食リスクの高い開口部近くには1齢幼虫と無翅成虫が多く分布し、その他の個体は安全な一番奥の方に多く見られた。さらに人為的に穴を開けて12時間後の分布を調べたところ、穴の周りに1齢幼虫と無翅成虫が集合し、その他の個体は穴から遠ざかることが分かった。

 一番年下と年上の個体が防衛を担うのは、若い幼虫は成長して成虫になるまでに多くの栄養資源源と長い時間を必要とし、年老いた無翅成虫は子を産み終えて、将来の繁殖には寄与しない。そのため、繁殖の期待値が少ないこれらを防衛に回し、繁殖の期待値が高い残りの個体を安全な所に逃すことで、子孫の数を最大化していることが考えられるという。

 さらに2種類の防衛行動が進化的に維持されていることについても、積極的に口吻で突き刺す1齢幼虫と分泌液で動きを止める無翅成虫という「全くメカニズムの異なる2つの防衛行動が組み合わされることで、単なる足し算以上の効果をもたらしているのかもしれない」と話している。

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