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東大、鉄系高温超伝導が生じる仕組みをスパコン「京」を用いて解明

 

 東京大学は12月22日、スーパーコンピュータ「京」を駆使することで、計算機の中で鉄系高温超伝導体の超伝導を再現することに成功し、さらに超伝導が起きる仕組みも明らかにしたと発表した。

 同成果は、同大大学院 工学系研究科 物理工学専攻の三澤貴宏助教、今田正俊教授らによるもの。詳細は、「Nature Communications」に掲載された。

 鉄系超伝導体は2008年に、東京工業大学の細野秀雄教授のグループにより発見されて以来、この物質群に属する化合物が多数発見されている。物質が超伝導を示す温度(転移温度)が-220℃を上回る高温超伝導体を含むことから、この物質群で超伝導が起きる仕組みを明らかにすることで、より高い転移温度の超伝導体を作る指針になると考えられ、全世界で精力的な研究が行われている。しかし、超伝導が生じる仕組みは未だよく明らかにされていない。その1つの原因として、最近まで鉄系超伝導体のような複雑な化合物の理論模型を調べる有効な方法がなかったことが挙げられるという。

 研究グループは、スーパーコンピュータ「京」を活用し、鉄系超伝導体を第一原理計算によって理論解析することで、従来はあまり重要と思われていなかった一様な電荷感受率と呼ばれる電子密度のゆらぎの増大が超伝導の原因であることを見出した。具体的には、量子力学・統計力学の法則に従って、鉄系超伝導体の物質構造だけを入力して、実験結果と一致する性質を持つ超伝導状態を計算機の中で数値的に生み出すことに成功した。さらに、実験では直接制御することが困難な物質中の電子間に働く相互作用をコンピュータの中で制御することで、超伝導を生じさせている主な要素を突き止めた。その結果、電子密度のゆらぎが増大するときに例外なく超伝導が生じるという証拠を得た。これは長年の高温超伝導の仕組みを解明しようとする基礎研究の中で重要な意義を持つものであるという。また、この研究で得られた超伝導の仕組みをガイドラインにした物質を設計することで、超伝導体になる温度を上昇させる実験探索にはずみがつくことが期待できるとコメントしている。

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