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深海底の熱水ヒントに“ナノ・エマルション”生成

深海底の熱水ヒントに“ナノ・エマルション”生成 

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)海洋・極限環境生物圏領域の出口茂チームリーダーらは横浜市立大学と連携し、粒の直径が61ナノメートル(ナノは10億分の1)という超微細な油滴を水に分散させた「ナノ・エマルション(乳濁液)」を作り出すことに成功した。この方法では10秒以内でエマルションが生成でき、化粧品や食品、医薬品など、エマルションを必要とするさまざまな産業分野での利用が期待されるという。

 実験で得られた透明度の高いナノエマルション(左)と直径が数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の油滴からなる通常のエマルション
 (提供:海洋研究開発機構)

 油滴が水に分散したエマルションを作るには、ドレッシングを作るときのように水・油・分散剤の混合物を激しく撹拌(かくはん)し、大きな油滴を繰り返し引きちぎりながら小さな油滴にしていく方法があるが、ナノサイズにまで微細化するのは困難だ。一方、ナノサイズの粒子を作るには、原子や分子を化学反応や再結晶によって集積し、それを粒子へと組み上げていく方法があるが、本来が混ざり合わない水と油を均一に溶解させた状態を作る必要がある。

 研究チームは水深が数千メートル以上ある深海底では温度が数百℃もの熱水が噴出している所があり、そうした高温・高圧の環境下では、熱水が気体でも液体でもない「超臨界状態」になっていることに着目した。超臨界状態を出現させる実験装置を作り、「ドデカン」という油(炭素数12の炭化水素、融点-12℃・沸点216.2℃)を水と一緒に250気圧の高圧下で加熱した。

 その結果、337℃付近でドデカンと水が完全に混ざり合った均一な溶液となり、油滴が消失した。その溶液を10秒以内に室温程度にまで急冷させたところ、直径が61ナノメートルのサイズのそろった油滴が水に分散した、透明度の高いナノ・エマルションができた。高温処理に伴うドデカンの分解も1%以下に抑えられたという。

 研究論文“Bottom-Up Formation of Dodecane-in-Water Nanoemulsions from Hydrothermal Homogeneous Solutions”はドイツの化学誌「Angewandte Chemie International Edition」(オンライン版)に13日掲載された。

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