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繁殖に貢献か、それとも闇取引の温床か? 中国の「トラ牧場」

繁殖に貢献か、それとも闇取引の温床か? 中国の「トラ牧場」

【AFP=時事】羽をばたつかせるニワトリを口にくわえ、うなり声を上げるトラ──これは、中国に数多く存在するトラの繁殖施設での来園者による餌付けの様子だ。しかし、自然保護活動家たちは、これら「娯楽」施設が、ますますトラを絶滅に追い込んでいるとして警告を発している。

【関連写真】高層ビルを背にして寝そべるシベリアトラ

 中国東北部・黒竜江(Heilongjiang)省ハルビン(Harbin)にある東北虎林園 (Siberian Tiger Park)では、ニワトリのほか、ウシなどさまざまな動物を餌付け向けに用意しており、来園客はトラにエサとして与えることができる。

 ニワトリの骨をトラがかみ砕く音が響く中、来園者の一人は「なんてどう猛なの。あのトラは周りにほかのトラを寄せ付ようとしないわ」と話しながら、スマートフォンでこの光景を撮影していた。

 だが自然保護活動家たちは、中国各地に存在するこうした「トラ牧場」と呼ばれるトラの繁殖施設が、死んだ後のトラを解体し、さまざまな部位を売却することで巨額の利益を手にしており、結果的にトラの絶滅を助長していると主張する。

 国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature、IUCN)は、世界全体における野生のトラの個体数が、密猟や生息地の減少などから1世紀前の10万頭から現在は3000頭にまで激減しているとして、トラを絶滅危惧種と位置づけている。

 一方、繁殖施設の関係者たちは、飼育下にある動物を取引することで、野生のトラへの圧力を緩和できると説明する。しかし自然保護活動家らは、この動きがトラやその部位を買うことへのためらいを軽減してしまい、結果的に新たな需要を生む可能性があると指摘する。

 英ロンドン(London)の非政府組織(NGO)「環境捜査局(Environmental Investigation Agency、EIA)」のデビー・バンクス(Debbie Banks)氏はAFPの取材に対し、飼育トラの部位を販売することで「需要を刺激したり、密猟への圧力を持続させる」ことになると述べ、また「成体になるまでトラを飼育することは、野生のトラを密猟する以上のコストがかかる」と説明した。

 野生のトラが生息する13か国中、トラ牧場が存在しないインドとネパールでは生息数が上昇しているが、商業目的でのトラの繁殖が合法的に認められているラオス、ベトナム、タイ、中国では状況が改善していないとバンクス氏は説明した。

 他方、野生動物取引の監視団体「トラフィック(TRAFFIC)」のデータでは、2000年~2014年4月までの間に、少なくとも1590頭のトラが世界的に密猟されているとされ、これは1週間に2匹が殺されている計算になるという。

 中国各地に約200か所存在する繁殖施設で飼育されているトラの個体数は約6000匹。世界の野生のトラの個体数の約2倍に当たる数字だ。

■生死を問わず

 生きている間は、娯楽目的で利用される飼育下のトラ。死んだ後の骨や皮はどうなるのだろうか? この問題をめぐっては、ベールに包まれ見えにくくなっている部分もあるようだ。

 中国では、トラの骨に滋養強壮の効果があると信じられており、伝統薬の成分として長い間珍重されてきた。1993年には、取引が禁止されたが、自然保護活動家たちは、この法律が順守されていないと指摘する。

 活動家らによると、施設で繁殖させた個体については、絶滅の危機に瀕した動物と法律上規定されるのか否かがあいまいで、またトラが死んだ際に申告するべき内容についてもほぼ決まりがないに等しい状況だという。

 中国でトラは財力の象徴だ。トラの毛皮でつくったカーペットはぜいたく品として高い人気があり、東北虎林園の売店でも、トラの骨が入っているとされる酒が一本約5000元(約9万5000円)で販売されている。

 昨年12月には、裕福な中国人実業家が、購入した3匹のトラを殺して食べた罪で禁錮13年の刑が言い渡された。

 国内メディアの報道によると、この事件に関与した犯罪グループは、計10匹のトラを殺したとされる。うち数頭は東南アジア諸国から生きたまま密輸されたという。1頭当たり20万~30万元(約380万円~570万円)でトラを売買し、1頭あたり10万元(約190万円)以上の利益を得ていたと報じられている。

■「虎骨酒」ではなく「骨強化酒」

 EIAによると中国の野生の個体数は約45匹ほどという。一方、1986年に開園した東北虎林園では、当時わずか8頭だったトラが、現在は1000頭以上飼育されているという。

 同園の代表者らは、飼育下にあるトラを利用した製品を取引することで、需要の矛先が野生のトラに向かうのを緩和し、また将来的には、飼育したトラの一部を野生に戻したいと繰り返し主張している。

 だが、死んだトラの部位を販売したり、製品に利用したりしているかどうかについてAFPが再三コメントを求めたにもかかわらず、同園からの返答は得られなかった。

 園内の売店では、「骨強化酒」との名前の酒が販売されている。販売員は、この製品にトラの骨の成分が入っていないことを訪れた外国人観光客に説明していたが、AFPが電話で問い合わせたところ、ある販売員は「取り締まりを避ける目的で、製品の名前を虎骨酒から骨強化酒に変えた」と説明した。【翻訳編集】 AFPBB News

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上原健二
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