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農研機構、福島のヒマワリからバイオ燃料製造 -放射性セシウムは検出されず
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 中央農業総合研究センターは、東京電力福島第一原子力発電所の事故により計画的避難区域に指定された福島県飯舘村二枚橋の畑圃場において栽培・収穫されたヒマワリ種子を用いて搾油試験を実施。油などへの放射性セシウムの移行動態を明らかにし、バイオディーゼル燃料製造原料としての利用の可能性を検討したことを発表した。
その結果、ヒマワリ種子に移行した放射性セシウム(セシウム134および137)は、ほとんどが種子の搾油滓に残留し、油やバイオディーゼル燃料への移行は確認されなかったと言う。
試験に使用したヒマワリ種子は、土壌の放射性セシウム濃度が栽培開始時点で7,700Bq/kgの農地で栽培したもの。種子に移行した放射性セシウム(濃度81.4Bq/kg)は、搾油滓に残留し、ろ過処理した油からは検出されなかった(検出限界は1.1Bq/kg)。
また、このろ過処理した油を原料としたバイオディーゼル燃料の製造試験を実施。同センターが開発したSTING法によって製造することで、グリセリンなどの副産物の生成を抑えることができた。このバイオディーゼル燃料の放射性セシウム濃度は、ろ過処理した油と同等と考えられると言う。
福島県飯舘村産ヒマワリの搾油とバイオディーゼル燃料製造のフロー図
福島県飯館村二枚橋の畑圃場で収穫したヒマワリ種子の放射性セシウム濃度は81.4Bq/kg。エクスペラー(スクリューの圧力で油を絞り出す装置)による圧搾法で、8.9kgのヒマワリ種子から1.3kgの圧搾油と、7.6kgの搾油滓が得られた。
放射性セシウムの濃度は、圧搾油の2.58Bq/kgに対して、搾油滓では117Bq/kgであり、搾油滓にほとんどの放射性セシウムが残留していることが明らかになったが圧搾油を静置して固形分を沈殿させ上澄みをろ過処理した油(1.2kg)においては、放射性セシウム濃度は、検出限界(1.1Bq/kg)を上回らず、このことから、ろ過処理工程において夾雑物とともに放射性セシウムが除去され、ろ過処理した油の放射性セシウム濃度が低減した(不検出)と考えられると言う。
また、上記試験で得られたろ過処理した油を原料として、アルカリ触媒法と、同センターで開発したSTING法による、バイオディーゼル燃料製造工程の検討も実施された。
アルカリ触媒法は、動植物油脂からバイオディーゼル燃料を製造する技術で、触媒としてアルカリ性の水酸化カリウムなどを用いるもの。低温・低圧で比較的安価に製造できる利点があり、世界中で広く利用されているが、水や遊離脂肪酸などの不純物の混入で収率が悪化しやすく、製造時に副産物として生成されるグリセリンの処理などが問題になることもある。
STING法は、動植物油脂をメタノールと混合し、高温・高圧で短時間処理することで、重油・軽油代替燃料に変換する技術。
反応に高温・高圧を要するため製造装置がやや高額となるが、触媒を必要としない、副産物のグリセリンがほとんど生成されない、水や遊離脂肪酸などが混入しても収率が低下しにくいなどの利点がある。
製油1kgから、アルカリ触媒法では0.86kgのバイオディーゼル燃料とともに0.14kgのグリセリンが生成されるが、STING法ではほぼグリセリンなどの副産物を生成せずに0.95kgのバイオディーゼル燃料製造が可能だったと言う。
なお同センターでは、今後もナタネなど油糧作物種子による搾油およびバイオディーゼル燃料製造試験を継続して実施し、燃料への放射性セシウムの移行動態を検討していく予定としている。