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OIST、新口動物群が共通祖先から進化してきたことを示す科学的証拠を発見

OIST、新口動物群が共通祖先から進化してきたことを示す科学的証拠を発見 

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は10月29日、米国カリフォルニア大学バークレー校、米国ハーバード大学医学部などの協力を得て、ウニ(棘皮動物)、ギボシムシ(半索動物:画像1)、ナメクジウオ(頭索動物)、ホヤ(尾索)動物)、ヒト(脊椎動物)を含む「新口動物」群が、共通祖先から進化してきたことを示すゲノム科学的証拠を得たと発表した。

 成果は、OISTの佐藤矩行教授らの研究グループであるマリンゲノミックス・ユニットによるもの。研究の詳細な内容は、生物学術誌「Current Biology」の印刷版11月6日号に掲載される予定だ。

 画像1。半索動物のギボシムシ

 ヒトを含む脊椎動物は、ナメクジウオの「頭索動物」、ホヤの「尾索動物」と共に「脊索動物」と呼ばれる動物群に含まれている。これらの動物はすべて脊索や「背側神経管」を持つことから、共通祖先から進化してきたものと考えられている(画像2・Aの最下段のマウス)。

 脊索動物に近縁な動物群が、ウニやヒトデなどの「棘皮動物」、ギボシムシなどの「半索動物」だ。この2種類は発生様式の類似性などから「歩帯動物」群と呼ばれている(画像2・Aの上段)。

 また、この歩帯動物と脊索動物は発生の初期で消化管を作る時に、最初に陥入した部分(原口)が将来の肛門になり、口は後に新しく開くという共通点を持つ。そのことから、新口動物(または後口動物)群と呼ばれている(この逆に最初に陥入した部分が口になる動物は、旧口(前口)動物といわれる)。

 したがって、脊索動物も、新口動物の共通祖先から進化してきたと考えられてきた。つまりヒトは、新口動物の祖先、脊索動物の祖先、脊椎動物の祖先、ほ乳類の祖先を通して進化してきたことになる。

 21世紀に入ってから、ウニ、ナメクジウオ、ホヤ、脊椎動物のゲノムが解読され、遺伝子や発生の比較から、脊索動物と歩帯動物のそれぞれが共通祖先から進化してきたことはわかっていたが、脊索動物と歩帯動物との間の進化関係は不明のままだった。また、新口動物の共通祖先の存在を示す証拠は得られていなかったのである。

 ほぼすべての動物の体の前後軸の決定には、ホックス(ホメオボックス)遺伝子が重要な役割を担うことは、20年程前から徐々にわかってきていた。ホックス遺伝子は「Hox1」から「Hox13」まで複数存在し、それが染色体上に並んでクラスターを形成し、その並び順によって体の前後を決めている。

 特にナメクジウオ(画像2・AおよびBの中程)は、1から13まですべてそろっており、なおかつそのゲノム内できれいに番号順に並んだホックスクラスターを持つ。

 したがって、ホックスクラスターを比較することで、動物の進化、近縁性を考えることが可能だ。これまで、ウニ(棘皮動物)のホックスクラスターが明らかにされているが、ウニのホックスクラスターはHox4と12の2つが失われていたり、並びがHox5~11・13・1~3と変化していたり(画像2・AおよびBの上段)しており、ナメクジウオのホックスクラスターと直接的に比べることができなかった。

 今回、OISTがヒメギボシムシ、米国の研究チームはコワレフスキーギボシムシと、それぞれが独立しての2種のギボシムシ(半索動物)のゲノムを研究したところ、両者のゲノム内に12個の遺伝子からなる典型的な「ホックス・クラスター」が存在することがわかった。Hox12は失われているが、この両者ともにHox1からHox13に至る12の遺伝子がゲノム内にきれいに並んでいることが発見されたのである(画像2・Bの2、3段目)。

 同様のクラスターが脊索動物のナメクジウオ・ゲノムに存在することから、ギボシムシとナメクジウオが進化的につながること、すなわち新口動物を構成するすべての動物群が共通祖先から進化してきたことを支持する初めてのゲノム科学的な証拠が得られたのである。

 画像2。これまで考えられてきた進化系統図がA。それに対し、今回の研究でBであることがわかった。図中の数字は、Hoxの番号を表す

 つまり、今回の発見とこれまでの知見を合わせると、半索動物と脊索動物にはHox1からHox13に至る12のホックス遺伝子を持った共通祖先が存在し、そこから、歩帯動物、脊索動物がそれぞれ進化してきたと考えることができるという。

 今回の成果により、これまで発生様式、幼生や成体の形態の共通性などを基にいわれてきた新口動物の共通祖先性を示す初めてのゲノム科学的証拠が得られたというわけである。

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