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SiCパワー半導体を普及させる世界初の電子部品
近年、産業機器系のアプリケーションにおいても省エネ意識が高まっており、大きな電力に対応可能なパワー半導体や電源ICの採用が進んでいる。それに伴い、半導体業界ではSiCパワー半導体という文字を目にすることが多くなってきた。
「SiC」はSilicon Carbideの略称で、シリコンと炭素の化合物を指す。シリコンよりも高効率化が可能な半導体材料として注目される新素材で、これを利用したSiCパワー半導体は既存のシリコン(Si)パワー半導体に比べて、さらに高電圧対応、小型化、省電力化が可能となる。
パワー半導体は、家電、コンピュータ、自動車、鉄道などあらゆる機器に幅広く使われているが、SiCパワー半導体はとくにハイブリッド車や電気自動車などのモーター駆動力を制御するパワーコントロールユニットへの導入が期待されていることもあり、トヨタ自動車<7203>など日本の自動車メーカーも積極的に開発を進めている分野で、世界的にも順調な市場成長が見込まれている。とくに総電力消費の半分以上をモーターで消費しているといわれている日本では、SiCパワー半導体導入によって得られる省エネ効果は絶大で、その規模は原子力発電所4基分相当と試算されている。
そんな中、ローム<6963>が2015年3月、世界初となるSiC-MOSFET駆動用のAC-DCコンバータ制御IC「BD7682FJ-LB」を発表したことで、業界内外から大きな注目を集めている。同製品は、SiC-MOSFETの性能を最大限に引き出すもので、インバータ装置や産業機器などに用いられる。Si-MOSFETを使用した従来のAC-DCコンバータシステムと比較すると、50Wクラスの電源の場合、電力効率を最大6%も改善することができるうえ、放熱部品を削減することができるなどAC-DCコンバータシステムの劇的な省電力化、小型化も可能となる。さらに、一般の産業機器で使用されるAC400Vだけでなく、高電圧AC690Vでも動作可能な電源電圧端子の過電圧保護や入力電圧端子の定電圧入力動作禁止機能、過電流保護機能など、多数の保護機能を備えており、信頼性も高い。この「BD7682FJ-LB」の登場により、SiCの普及に拍車がかかるのは間違いないだろう。
ちなみに、モーターを使うほとんどの家電には、直流電力を交流電力に変換するインバータが搭載されており、そのインバータには必ずといっていいほどパワー半導体が使われている。…