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封切り前情報『迷宮カフェ』 娘を白血病で失った女性が企画。骨髄移植の大切さを描く
そのカフェは、自然豊かな群馬の山奥にある。落ち着いた雰囲気の店を営むのは、ミステリアスで美しい女主人マリコ。そこへ落ちぶれた週刊誌記者・榎木田が、「カフェに向かった痕跡だけを残し、客が何人も消える」という噂を聞きつけてやって来る。
”消えた”といわれている常連客は、気が弱く妻から離婚を突きつけられた筋肉男の松浦、婚約者に逃げられたアスカ、周囲から孤立し無差別殺人を計画したスグルの3人。全員が自殺志願者だ。マリコは彼らに簡単に死ねるという薬の入ったカプセルを渡すが、骨髄バンクへの登録と、適合者が見つかるまでは自殺を保留することが条件だった。
「どうせ捨てる命ならリサイクルしてみませんか?」と言うマリコ。優しく穏やかで決して悪人には見えない彼女だが、犯罪のような行為を行っているのは、過去の悲しい出来事への自責の念からだった……。
実際に娘を急性骨髄性白血病で失った女性が企画
この作品の企画を立ち上げたのは、2008年に14歳の娘を急性骨髄性白血病で失った女性だ。「命の貴さと助け合う心の大切さを知ってほしい」という彼女の思いを、帆根川廣監督が心温まるストーリーと美しい映像に昇華させた。シリアスなテーマを扱いながらも、後に残るのは爽やかな風が吹き抜けたような心地良さ。押し付けがましくはないが、多くの患者を救う骨髄移植の大切さを十分伝えている。
骨髄移植とは、白血病などで正常な血液を作れなくなった患者に、ドナー(提供者)から血液細胞を作り出す骨髄幹細胞を移植する治療のこと。骨髄バンク登録者のHLA(ヒト白血球型抗原)が患者に適合すると同バンクから連絡が入り、最終同意へと進む。適合する確率は兄弟姉妹間で4分の1、親子や他人では数百分から数万分の1だという。
この作品では、最終同意時の説明を行う調整医師を吉井怜が演じている。彼女はアイドルとして絶頂期にあった2000年に急性骨髄性白血病を発症。一度は寛解維持療法を選択したが、翌年母親から骨髄提供を受けた。今ここで骨髄移植の重要性を説くことができるのは、幸いにも母親のHLAが適合し移植を受けたからだ。彼女の口から出る言葉は、骨髄移植を推進するパンフレットに寄せられるどんなコメントよりも説得力がある。
安易なドナー登録は弊害をもたらす
日本骨髄バンクのHPによると、ドナー登録者数は44万人超。骨髄・末梢血幹細胞移植希望患者の9割以上に1名以上のドナーが見つかるものの、そのうち6割の患者しか移植を受けることができないという。…というのも、ドナーには登録はしたものの、実際に適合通知が来ると、骨髄提供を辞退する人がいるからだ。妊娠や出産、体調不良、家族の同意が得られない、仕事の都合、連絡が取れなくなった、理由はさまざまだ。また、いざとなると尻込みする人もいる。やむを得ない事情なら仕方がないが、適合通知後に辞退することは、移植を待つ患者を落胆させることにもなりかねない。安易な気持ちからではなく、デメリットなども十分理解したうえで登録すべきである。
一方、作品内でそのデメリットに触れているのは、「麻酔に伴い体に管を入れる時の痛みや、採取時の痛みが残ることがある」というセリフのみ。確率が低いとはいえ、全身麻酔のリスクや血腫や神経障害などの後遺症が残る可能性、入院中の休業補償が出ないことなど、ドナー側の負担にもう少し言及してもよかったのではないだろうか。
適合通知が来るまで共同生活をする松浦、アスカ、スグルの3人は、他人の命を救うという使命を持ったことで生きる意味を見出していく。自分の骨髄が誰かの体に入り、移植が成功すれば、その人は第2の人生を生きることができるのだ。潜入取材をしていた榎木田、そして重い過去を背負ったマリコの心にも変化が生じる。
骨髄移植に関わりながら、彼らが人生の迷宮から抜け出せるのかどうかをぜひ見届けてほしい。
(文=編集部)
『迷宮カフェ』
2015年/日本/ビスタ/カラー/DCP 5.1ch/112分
監督・脚本・編集:帆根川 廣
プロデューサー:橋口一成
出演:関 めぐみ/市川由衣/藤原 薫/角田信朗/大迫一平/荒川ちか/柴田杏花/吉井 怜/生島ヒロシ/螢 雪次朗/津川雅彦
配給:KADOKAWA
宣伝:太秦
© 2015/ワンワークス
公式HP:http://www.meikyu-cafe.com/
2015年3月7日(土)角川シネマ新宿ほか全国順次公開