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小泉今日子が「トラウマ告白本」を書かなかった理由〈dot.〉
どうすれば小泉今日子のように、齢とともに魅力を増していけるのか―― その秘密を知ることは、現代を生きる私たちにとって大きな意味があるはず。
日本文学研究者である助川幸逸郎氏が、現代社会における“小泉今日子”の存在を分析し、今の時代を生きる我々がいかにして“小泉今日子”的に生きるべきかを考察する。
※「『いい女』は36歳で死ぬ? 小泉今日子の『36歳問題』の乗り越え方」よりつづく
* * *
1990年代後半から2000年代前半にかけて、文化の領域は「ダークなもの」の全盛期でした。
このころブームになっていたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』は、登場人物のほぼ全員がメンタル面に問題を抱えています。幼児期に虐待を受けた主人公が、凄惨な犯罪をくり返すドラマも流行りました。
出版の領域では、『薬ミシュラン』(太田出版)のような、抗精神病薬をポップに解説する本が幾つも出されています。「尖がった文化」にかかわる人間なら、「心の薬」ぐらい飲んでないとカッコ悪い。そのころはそんな空気さえありました。当時、カルト的な人気を誇るミュージシャンたちが、自分の「心の病」や「犯罪的な体験」を得意げに語っていたのはこのためです。
「少年少女だったころのトラウマを告白した自伝」が大挙してベストセラーになったのも、こうした流れの影響でした。16歳で暴力団組長の妻となり、そこから更生して司法試験合格を遂げた大平光代の『だから、あなたも生きぬいて』(講談社)。アトピー性皮膚炎のためイジメに遭い、自分の居場所を探して、バンドの追っかけから右翼になった雨宮処凛の『生き地獄天国』(筑摩書房)。風俗嬢、AV女優を経て人気タレントに登りつめた飯島愛『PLATONIC SEX』(小学館)。これらはいずれも、2000年の出版です。
こうした「ダークな文化」は、バブル経済の時代に日本人が抱えこんだ「過剰な自己重要感」の断末魔の姿です。
1980年代末には「中世ヨーロッパの貴族と日本の一般庶民は、1人あたり同じ量の富を消費する」とさえ言われました。外国車に乗り、欧米の高級リゾート地で休日を過ごす。そんな「映画スターでもなければできない生活」を、「普通の人々」も――部分的とはいえ――体験していました。中には、「自分は映画スターのように特別な存在かもしれない」と勘ちがいする「一般庶民」も現われます。
景気が後退すると、バブル時代のような「贅沢」はできなくなりました。…