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話題の1冊 著者インタビュー 中大輔 『延長50回の絆 中京vs崇徳 球史に刻まれた死闘の全貌』 竹書房 1300円(本体価格)
−−昨年の中京vs崇徳の延長50回の死闘に日本中が驚きました。そもそも軟式野球は点数が入らない競技なんでしょうか?
中 中京高校軟式野球部の平中亮太監督は、軟式と硬式の違いについて「サッカーとバスケットボールほど違う競技」だと言っています。その違いを決定的にしているのは使用するボールの特性でしょう。軟球は中が空洞になっているゴム製なので、硬球よりも軟らかく非常に跳ねます。この性質上、軟球はバットの芯で捉えないとゴロやフライになってしまい、なかなか得点に結び付きません。延長50回という途方もない記録の背景には、このボール特性の違いが大きく影響していると思います。
−−球数制限、タイブレーク制など球児の体力的問題が取り沙汰されていますが、どうお考えですか?
中 延長50回の後、さまざまな世論が沸き起こりました。中には「残酷だ」「酷使だ」という声も。選手たちの身体を心配してこその意見だと思うのですが、私はまず何よりも、あれだけの激闘を戦い抜いた選手たちを心からたたえたいと思います。709球を投げ抜いた中京高校の松井大河投手も、689球を投げ続けた崇徳高校の石岡樹輝弥投手も、自らの意志で「絶対に相手より先にマウンドを降りたくない!」という意地とプライドで戦い抜きました。選手たちは皆、延長50回の戦いを“人生の宝物”のように大切にしています。
−−やり遂げたことを誇りに思っているんですね。
中 松井投手はタイブレーク制について「反対です。実力じゃなくて、まぐれの部分がある」と言っています。私も同感です。球数制限については、二つの条件をクリアするよう工夫した上でなら賛成です。一つは競技本来の魅力を削ぐようなことがないこと。もう一つは、選手数や投手数が少ない学校が著しく不利にならないことです。彼らをはじめとした全てのアスリートたちによる“限界への挑戦”に敬意を表した上で、ルール等については改めて熟慮されるべき問題だと思います。
−−実際に軟式野球選手たちに接してみて、どんなところに魅力を感じますか?
中 軟式は極めてロースコアな投手戦になることが多いです。緊張感に満ちた守備、繊細なプレーと緻密な作戦によって、一つ一つアウトを積み重ねていく。点が入りづらい故に、1点の意味、重み、喜びが大きいのです。延長50回でスポットを浴びた軟式野球が、今後、より多くの人に観られるようになったらうれしいですね。
(聞き手:程原ケン)
中大輔(なか だいすけ)
1975年、岐阜県生まれ。日本大学法学部卒。フリーの雑誌記者等を経た後、漫画の原作や『破天荒』(三輪光著/竹書房)等の書籍構成などを手掛ける。本作で作家デビュー。