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亡き児童のために…思い出校舎で〈最後の授業〉

 亡き児童のために…思い出校舎で〈最後の授業〉

 

◇きょう高取・旧育成小、卒業生40人集まり

 

 

  • 卒業後も交流を続け、同窓会の準備をする森さん(中央)と教え子ら(15日、高取町の旧育成小で)=守屋由子撮影
  •   7年前に統廃合された奈良県高取町の旧町立育成小の校舎で、21日、同小の元教諭で橿原市立耳成小校長の森英彰(ひであき)さん(60)と育成小の卒業生約40人が〈最後の授業〉を行う。29年前、育成小5年2組の担任教諭だった森さんは交通事故で児童を亡くした。以来、命日には必ず、教え子の卒業生と遺影に手を合わせてきた。今月末の定年退職を前に、「もう一度、人とのつながりの大切さを伝えたい」としている。

     

      最後の授業が行われるのは、旧校舎3階の音楽教室。21日は当時2クラスあった6年生の同窓会で、45分間、森さんが、人とのつながりや豊かさとは何か、子育てについて授業を行う。

     

      育成小は1900年開校。90年には430人の児童がいたが、2007年には162人に減少。08年3月で旧高取小と統廃合され、たかむち小が開校した。旧育成小の校舎は使われなくなり、町は県内の医療機関と賃貸契約を結び、校舎やグラウンドなどを貸し出す交渉を進めている。

     

      1986年4月29日夕方、町内で、芦高俊樹君(当時10歳)が自転車に乗っていてトラックにひかれ、死亡した。芦高君は担任の森さんを自宅に訪ね、帰宅中だった。森さんは「教師にとって教え子を失うほどつらいことはない。何も考えられなかった」と振り返る。

     

      「とっちん(俊樹君)を忘れるのではなく、一緒に卒業しよう」。森さんや児童らは話し合い、広島への修学旅行にも芦高君の写真を持参。移動のバスも1席確保した。88年の卒業アルバムには、6年2組の仲間として芦高君の笑顔の写真を掲載した。

     

      卒業後も、毎年4月29日には、森さんや十数人の卒業生が芦高君の実家に集まり、近況を報告しあう。就職、結婚して、子どもを連れてくる卒業生もいる。その中の一人、同町職員植山訓行(のりゆき)さん(39)は「とっちんが、みんなをつないでくれている」と話す。

     

      昨年4月の芦高君の命日に、森さんは植山さんらに1年後に定年退職することを伝え、「最後に君たちに授業をしたい。できれば育成小で」と話した。町教委も内容を審査し、許可した。

     

      15日には、森さんや植山さんらが集まり、音楽室で掃除や飾り付けなどの準備を行った。森さんは卒業生への最後の授業で「仕事も子育ても今が最もしんどい時期だと思う。人生の先輩として力になりたい」としている。(小沢亮介)

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