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原料高騰、円安追い打ち もやしが値上げピンチ
[写真]“国民的食材”もやし。このもやし業界がいま苦境に立たされている(アフロ)
アベノミクスによる円安が続いています。2011年に1ドル70円台まで進んだ円高は、2015年3月には120円台まで円安になっています。この円安で輸出産業が息を吹き返す一方、輸入産業にとっては逆風になっています。その一つが「もやし業界」です。私たちの食卓を支える“国民的食材”が値上げのピンチを迎えています。
もやし生産者「企業努力は限界」
[図表]もやし原料種子の価格動向(もやし生産者協会サイトより)
昨年12月、もやしの生産者を束ねる工業組合「もやし生産者協会」が異例の声明を発表しました。タイトルは「もやし原料種子の高騰について」。そこには、もやしの原料種子である緑豆が高騰し、苦しい状況に置かれている業界の切実な訴えが書かれています。
日本で生産されるもやしの原料種子は8割が緑豆で、これは主に中国で産出されています。しかし、中国国内での緑豆需要の増加や、より価格の高いトウモロコシ栽培への転換による作付面積の減少、昨秋の雨による良質な緑豆の収穫量減などにより、緑豆は前年比で3割以上、値上がりしたといいます。
それに追い打ちをかけたのが円安です。2014年産(2015年輸入)の価格は、10年前と比較しても約3倍に、前年比では40%~50%の増加が予想されています。
にも関わらず、もやしの小売価格は10年前より14%下落しているといいます。これまでは企業努力で対応してきたものの、「これ以上の経費削減は限界を超え、健全な経営が出来ていない」としています。2009年に200社以上あった生産者は廃業が相次ぎ、今では150社を切る状態。この声明は市場やスーパーなど計544か所に送付され、ホームページ上にも掲載されています。
2005年の緑豆価格ともやし小売価格を100%としたグラフをみると、2014年12月時点での緑豆価格は216%で、2015年は300%に届く勢いと予想されています。実際、2015年1月は296%まで上昇。新物の緑豆の輸入時期は毎年4月がピークになることが多いため、間もなく高騰した緑豆価格の影響が直撃するのでは、といわれています。
過去できなかった小売価格の値上げ
[写真]もやしの主な原料種子である「緑豆」(アフロ)
同協会の理事長・林正二さんは、小売店との値上げ交渉についてこう語ります。
「実はこのような通知をしたのは過去にもありますが、さすがに今回の高騰に関しては、生産者さんと小売店さんで価格の交渉が続いている中で、小売店さんにも現状の理解をしていただいています。しかし『では来月から(小売価格を)上げましょう』というのは全国各地さまざまな事情もあるので、今後具体的にどのように価格に反映されていくかは調整中です」
しかし、もやしといえばスーパーの中でも「値段が安いのにおいしい野菜」の代表格。安いのが当たり前、という中で値上げがしづらいという状況もあります。実際、以前同様の声明が出された時(2011年)には、実質的に値上げは行われませんでした。
「現在のもやしの小売価格の全国平均は1袋29円ですが、これが38円になればもやし生産者の生活が守れます。現状のままでは、利益を出せるもやし生産者はいません。納入価格は3倍になりつつありますが、小売価格を3倍にしてほしいというお願いではないのでご理解いただければと思います」と林理事長は訴えます。それでは価格を上げる以外の方法はないのでしょうか。
「今高騰しているのが、世界中の緑豆の中で最ももやしに適している中国産のものなんです。他国の緑豆はここまで高騰していないので、安く仕入れるためには原料を変更すれば良いのですが、今日本で販売されているもやしのような、味も見た目も良いもやしを提供できなくなってしまいます」(林理事長)
緑豆輸入のピークを乗りきれるか
[写真]もやしをふんだんに使うジンギスカン。値上げされた場合の影響はいかに?
このように、もやしの原料種子の高騰は今後、私たち消費者にも影響を与えることが懸念されます。では、もやしを食材として大量に使用している飲食店ではどのように考えているのでしょうか。
北海道を中心に全国10店舗(フランチャイズ含む)のジンギスカン店を経営している株式会社マツオ(本社・北海道滝川市)の松尾ジンギスカン滝川本店によると、「仕入れ先から仕入れ価格値上げの要請もありませんし、他店舗からも同様の話は聞いておりません。しかしながら年間1トン以上のもやしを仕入れていますので、今後何かしらの影響があるかもしれないとは思います。現状では様子見の段階ですね」とのこと。
間もなく緑豆輸入のピークが見込まれる4月を迎えます。小売店との価格交渉が続けられる中、もやし価格はどうなっていくのでしょうか。
(ライター・橋場了吾)
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