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渋谷区の「同性カップル証明書」全国初の条例は広がるか
[写真]さまざまな文化が行き交う渋谷。3月末に「同性カップル証明書」条例が成立した(アフロ)
渋谷区議会の本会議で3月31日、同性カップルを「婚姻に相当する関係」と認める、「パートナーシップ」証明書の発行を盛り込んだ「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が賛成多数で可決、成立しました。自民党などが反対しましたが、4月1日から施行されます。同性のパートナーシップを行政が認めるのは全国で初めてのことです。
条例で何ができるようになる?
[図表]渋谷区の「同性カップル証明書」条例の主な概要
今回の同性パートナーシップ証明書は、公正証書の作成が条件になっています。取得できるのは区内在住の20歳以上で、戸籍上の性別が同じカップルです。法的拘束力はありませんが、渋谷区では「婚姻関係相当」と見なされるため、家族向けの区民住宅への申し込みができます。4月1日施行です。証明書の発行は、区の規則が必要になりますが、夏頃までに規則を定める見込みとなっています。
婚姻は憲法24条で「両性の合意のみに基づいて」と定められています。そのため、現在の婚姻制度は異性同士の結婚を前提につくられていますが、同性同士は、明示されていません。昨年6月、女性同士のカップルが青森市役所に婚姻届を提出しましたが、受理されませんでした。異性愛者中心の現行の結婚制度に、LGBT(女性同性愛者「Lesbian」、男性同性愛者「Gay」、両性愛者「Bisexual」、性同一性障害「Transgender」の人々を意味する頭字語)などのセクシャルマイノリティ(性的少数者)の当事者たちは疎外感を抱いてきました。
同性カップルは「婚姻関係」が認められないため、不動産契約、病院での付き添いなどで断られるケースもあります。また、夫婦間の財産などの相続もできません。 条例では、任意後見契約にかかわる公正証書の作成と登記を条件に、パートナーシップ証明書を発行して区が「婚姻関係相当」と認める制度となっています。行政のお墨付きを与えることで、マンションなどの契約の手続きができるようになるというわけです。ただ財産相続については、国の法律が上位にあるため、これまでと変わりません。
苦情があった場合には区長が指導をすることになっていますが、条例の趣旨に著しく反する行為を行っている場合は、関係者に勧告をすることができます。この勧告に従わない場合、区長は関係者の名前を公表することができます。
多様性を受容する国際都市へ
[写真]外国特派員協会での会見で「同性カップル証明書」条例案の意義について説明する渋谷区の桑原敏武区長(Rodrigo Reyes Marin/アフロ、2015年3月23日撮影)
31日の本会議では賛成と反対の立場から討論が行われました。反対意見は「区側の説明が不十分」、「男女共同参画社会さえ達していない」などで、賛成は「条例によって共生のメッセージが伝わる」、「偏見や差別、不便さが解消する」といったものでした。採決では出席議員31人のうち、自民ら10人の区議が反対しましたが、賛成多数で成立しました。
委員会の審議の中で、セクシャルマイノリティだけでなく、男女平等に関する条例でもあることから、理念を守るように、区民や事業者に理解を求めたり、規則については議論の余地があり、慎重な運用が求められることから、この条例には、附帯決議が付きました。特に、公表規定については避けるように求めています。議員提案で削除を求める可能性を示唆しています。
区議会で最初にパートナーシップ証明書の発行が提案されたのは2012年6月定例会でした。提案したのは長谷部健議員です。「この証明書を発行することでLGBTの方々の区民が増えると思います。ファッション、アートを盛り上げるには、彼らの感性は大きな要素となるでしょう」などと、多様性を受容する国際都市づくりの文脈で、区長に提案していたのです。その後も別の議員が同様の質問をしました。
これらの提案を受けて、渋谷区では昨年7月、弁護士や有識者ら8人のメンバーで検討委員会を立ち上げ、当事者からヒアリングをしてきました。
世田谷区でも同様の条例案をつくる動きがみられます。2月15日に「性的少数者の成人式」を開催。その席で保坂展人区長は、渋谷区と同様に、支援策を準備していると述べています。
同性カップル「これを機に議論加速を」
「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の共同代表をしている遠藤まめたさんは「『好きな人と安心して暮らしたい』という当たり前の願いが、LGBTの場合には難しい現状があります。渋谷区の条例は、自治体の権限内の制約はあるものの、大きな転換点です。法律や慣例、社会の中にある誤解や偏見など、様々な課題はありますが、時代を突破する一歩として歓迎します」と評価しています。
今月に女優・杉森茜さんと結婚式を挙げる予定のタレントの一ノ瀬文香さんはこう話しています。
「新たな一歩で大変嬉しいです。ただ、証明書を発行してもらうために、労力と(手数料や登記料を含めて)数万~10万円程度のお金を使って公正証書を作らなくてはいけないという条件付き。また、法的効力がないので、婚姻届に比べて役立つ割合がかなり低いと予想されます。これを機に、他の先進国同様に議論が加速してほしいです。オリンピック前に、杉森茜と法的にも結婚したい!GHQ草案を読むと分かりますが、憲法で同性婚は禁止されていませんしね」
ただし、複雑な気持ちを抱く当事者もいます。匿名を条件に取材に答えたレズビアンの女性は、渋谷区が宮下公園からホームレス(野宿者)を排除したとして、「渋谷区の公園で暮らしている友人がいます。野宿者の中のセクマイと繋がりもあります。渋谷区が野宿者に何をしてきたのかを知っていますので、混乱しています。軽々しく賛成とは言えません」と違和感を覚えています。つまり、セクシャルマイノリティの人々の権利拡充は歓迎しつつも、他の人権施策への姿勢に懸念を示しているのです。
アメリカでは30の州まで広がる
現在、アジア太平洋地域で同性婚ができる国はニュージーランドだけです。ベトナムでは1月から同性同士の結婚式をすることの罰則が廃止されましたが、手続きはできません。国内およびアジアでは同性婚の議論が高まっていません。
同性パートナーの法的地位は、異性間と同様の「婚姻型」と、婚姻とは別の枠組みの「パートナーシップ型」があります。渋谷区の条例は「パートナーシップ型」となります。この条例の施行によって、他の地域や国でも同性パートナーシップや同性婚の議論が進む可能性があります。
アメリカでは憲法の規定はありませんが、婚姻手続きの権限は州にあります。1993年、ハワイ州で同性婚が有効でないのは平等権に違反すると州最高裁が判断しました。その後、婚姻と類似のパートナーシップ制度を決めました。ただし、婚姻が男女間でなされることに意味があるとした共和党から提起された婚姻防衛法(DOMA)が1996年にできました。そのため、手続きは州に権限がありますが、健康保険や年金、相続等の権利義務は同性の配偶者には認められませんでした。しかし、2013年6月、DOMAに対する訴訟で、憲法違反の判決が出ました。
2004年5月にマサチューセッツ州が初めて同性婚を認めて以来、今ではワシントンDCと30の州まで拡大しました。
同性パートナーシップ制度にしても、同性婚にしても、性的少数者への理解が必要になります。性別や性自認、性的指向による差別のないような社会にしていきたいものです。
(ライター・渋井哲也)
本記事は「THE PAGE」から提供を受けております。
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