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トップ下で別格の存在感を放った香川…“主戦場”で取り戻したエースの自信
文=青山知雄
日本代表MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)が、わずか30分間で強烈な存在感を発揮。得意のポジションで大きな輝きを放った。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の初陣となった27日のチュニジア代表戦は、指揮官が試合前日に「新しいメンバーを使う」と話していたとおり、今年1月のアジアカップで日本代表に入らなかった選手が7名もスタメンに名を連ねるフレッシュな布陣でスタート。香川は前半、ベンチから戦況を見つめた。
スコアレスのまま迎えた60分、本田圭佑(ミラン/イタリア)とともにピッチへ送り込まれた香川は、自分自身で「一番慣れ親しんでいたポジション」と話していたトップ下に入る。これが試合の流れを大きく変えた。
投入直後から積極的に前へ仕掛けてチャンスを作ると、本田、岡崎慎司(マインツ/ドイツ)と近い距離でプレーすることで日本がポゼッション率を一気に高める。前半50.2%だったボール支配率は、60分~75分までが65.3%、さらに75分~試合終了までは68%へと上昇。香川は「あの時間帯になって相手の動きが落ちてきた」と分析したが、「圭佑くんとも『リズムを変えよう』と話していた」ことが実り、日本が主導権を引き寄せた。
ボールに触れる回数を増やすことで自分のリズムをつかむ香川にとって、チームメートからのパスが集まるトップ下はやはり最適なポジションだ。前監督のハビエル・アギーレ氏が率いたチームでは4-1-2-3のインサイドハーフ、アルベルト・ザッケローニ元監督の時代には主に4-2-3-1の左MFに置かれたため、これまで日本代表で得意のポジションを任される機会は少なく、自分の良さを存分に出し切れない時期が続いていた。得意のポジションに戻り、ようやく千両役者の本領発揮といったところだろう。
投入時にハリルホジッチ監督から「攻撃でどんどんボールを受けて、リズムを作っていくように」と言われた香川は、その言葉どおりにピッチで踊り始める。78分にはドリブルで持ち上がって左前方へスルーパス。これは若干タイミングが合わずに長く伸びてしまったが、粘り強く追いかけた本田がダイレクトでふわりと上げ、ファーサイドの岡崎慎司が頭で叩きつけて“ハリルJAPAN初ゴール”につなげた。続く83分には岡崎がつないだボールを受けて敵陣深くへドリブルを仕掛けてシュート性のボールを折り返すと、このこぼれ球に本田が滑り込んで追加点。指揮官の初陣でしっかりと2ゴールを演出した。
香川の“ダンス”は止まらない。86分には中央でボールを持って右へ持ち出すと、右足で強烈なミドルシュート。続く89分には左へ流れるドリブルから宇佐美貴史(ガンバ大阪)の飛び出しに合わせて巧みなボールタッチで絶妙なスルーパスを供給する。ミドルシュートやスルーパスはいずれもスタジアム内がざわめくほど完璧。ミドルシュートは相手GKに阻まれ、スルーパスは宇佐美が右ポストに当ててしまい得点にはつながらなかったが、自信を持ってゴールに向かう姿は頼もしいばかり。香川真司というプレーヤーが最も生きるポジションがどこなのかを存分に見せつける30分間となった。
ハリルホジッチ監督が目指すスタイルに関しても「求めるものはすごく激しい。球際の守備や攻撃のスピード感への要求は高いけど、それが日本代表に欠けていたものだと思う。監督のやりたいサッカーをみんなも意識しているし、細かいパス回しや速い展開、攻守の切り替えは、もっともっと質を上げてやっていける」と手応えを感じている様子だ。
たかが初戦。されど初戦。これから日本代表が自信を持って前へ進んでいくために、新体制の船出を勝利で飾れたことは大きい。香川自身も「勝ちにこだわっていた中で勝てたことは良かった」と笑顔を浮かべた。この勝利と活躍は、自分自身にとっても大きな結果となったことだろう。もう日本代表の背番号10がPKを外して涙するような姿は見たくない。このチュニジア戦で披露したトップ下での活躍は、彼が近年失っていた自信を取り戻すための大きなターニングポイントになるかもしれない。