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「コンビニパンは危険」は間違い?「食品添加物は危険」のウソ、毒性誇張のまやかし
コンビニエンスストアで売られているパンの原材料欄には、見たことも聞いたこともない化学物質が大量に書かれています。「リン酸塩はカルシウムの吸収を阻害し、防腐剤は発がん性がある」といった記事も見かけますが、コンビニパンを食べて障害が起きる確率は極めて低く、まったく問題ありません。
どうしてそんなことが言えるのでしょうか?
“フードホラー”ともいうべき食べ物に関する誤った情報が氾濫していますので、今回は食品添加物を正しく理解するための思考法を解説します。
●添加物の毒性
まず、インターネットで添加物について調べると、「発がん性がある」「腫瘍ができた」「~の吸収を阻害する」といった情報が大量に出てきます。もちろん、これらの情報の大半は嘘ではありません。事実だと考えられます。
しかし、ここで大きな勘違いが起きるのです。十分な施設の整った研究機関で、正しい手順で実験を行った結果として得られた毒性に関する情報は、「この分量を使うと危険が生じる」ということを示しています。食品に混合する化学物質については、人が摂取しても安全かどうか、どのような毒性があるのかをすべて調べています。さまざまな動物に、大量の化学物質を投与し、毒性が出るまで調べます。
どんな化学物質でも、大量投与すれば、必ずなんらかの害が出ます。水でも一気に10リットルほど飲めば死ぬのです。また、食卓塩も一度に100グラムほど食べると、死ぬ可能性があります。動物実験では、もっと少量で死に至ることもあります。
このような情報を耳にして、「水や塩は猛毒だ」「人を殺す物質だ」と騒ぐ人はいないでしょう。あらゆる物質には、摂取できる限度があるということなのです。
これに対し、「ほんの少しでも含まれていると、大量投与した場合と同じ害がある」と言うことは、明確にインチキだといえます。これがフードホラーを煽る人の商売の種なのです。
●添加物は本来不要な化学物質?
そうはいっても、食品添加物は本来食品には不要なものであって、体に必須の水や塩と比較するのがおかしいという考え方は正常です。 確かに、ポリリン酸○○、ソルビン酸○○、○○ガム、増粘剤、pH調整剤など、耳慣れない成分が食品表示欄に記載されていれば、不気味に思うのもわかります。
しかし、大半の添加物を個別に知ると、それぞれのメリットがあってこそ使われていることがわかります。当たり前ですが、食べた人を病気にするために添加されているわけではありません。
添加物は、天然に含まれている成分も多く、例えば、猛毒と恐れられている亜硝酸ナトリウムも、元々は岩塩の中に多く含まれている成分です。岩塩を入れてソーセージをつくると発色が良くなり、食中毒が起きにくいという先人の知恵から得られたものです。岩塩に含まれる亜硝酸塩が食中毒を防ぎ、発色を良くしていたのです。そこから研究が進み、安全な分量を確認した上で食品に添加されているのです。
この安全な分量はADI(Acceptable Daily Intake:一日摂取許容量)と呼ばれ、生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日当たりの量と考えられているものです。謎の化学物質がむやみに添加されているわけではなく、すべて目的があり、安全な量の範囲内で使用されているのです。
●食品添加物は危険ではない
酸化防止剤やpH調整剤は、消費者が適正に保存し、衛生的な環境下で食べる保証がないからこそ、食中毒のリスクを下げ、品質が悪くなりにくくするためにわざわざ添加しているのです。もちろん、手を抜いて簡単に味をととのえ、栄養価も低い商品を売りつけて利益を上げることもできますが、そのような企業姿勢と毒性があるかどうかは別問題なので、今回は毒性にだけスポットを当てて論じます。
名前の印象から、「気持ち悪い」「危険な気がする」というのは単なる感情論で、それに便乗して「怖い」「危ない」と騒ぐのは、文明人としていかがなものかと筆者は述べたいのです。
研究者が解き明かしたからこそ、正しく使えば食中毒のリスクを下げ、また発色を良くし、日持ちさせられるのです。すべては、消費者がずぼらに管理しても「それなりに良い物」を食べられるように使用されているということを覚えましょう。 食品添加物は、添加物という概念がない時代から人類が編み出した、食品加工技術の一端です。そもそも、「100%安全」と言い切れる食べ物など存在しません。街中を歩く場合も、絶対に車にひかれないという保証はありませんが、自分がルールを守っていれば事故に遭う確率は低いので、無駄に恐れることなく町を歩けるのです。「添加物が怖いからコンビニパンを食べない」と言うのは、「交通事故が怖いから外出しない」と言っているようなものなのです。
では、「自作農園でつくった野菜なら絶対安心」といえるでしょうか。例えば、通りすがりの誰かが畑にタバコの吸い殻を捨てただけで、出荷できないレベルの毒性を含む野菜となる可能性もあります。もしかしたら、使用した肥料が粗悪な製品で、危険な毒を含んでいるかもしれません。野菜を育てる前に使用した除草剤が発がん性物質を含んでいたなど、危険性に関して可能性を言い出すとキリがないわけです。
「たられば」をすべて恐れてリスクを拒否すると、不必要に高い商品を売りつけられるカモになってしまうこともあります。生きていくためには、リスクをすべてなくすことはできません。賢く判断することが必要であり、そのためには「何を信頼するか」という目利きの基準を持つことが重要になります。
食品添加物に限れば、日本人は平均して年間で赤ちゃんの頭の大きさほどの量を摂取しているといわれていますが、それでも毎年平均寿命が延びていますから、食べたらすぐに危険が生じるということはないと考えられるのではないでしょうか。
添加物の使用量が増えるにつれ、死亡者が激増しているというデータがあるわけでもなく、添加物を怖がることは理論的とはいえません。
(文=へるどくたークラレ/サイエンスライター)