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きっかけはビール? 革新的と大反響の“泡立つ”カップ麺が誕生したエースコックの社風
ひとり暮らしの、そして金欠の時の救世主といえばカップ麺。
しかし、コンビニやスーパーを見わたせば、新作といえども正直どれも似たようなモノばかり…。もはやカップ麺の進化は限界に達したのか!?
そんな中、4月6日に“衝撃”的なデビューを果たしたのが「スーパーカップ1.5倍 衝撃の泡立ち 豚骨醤油ラーメン/鶏白湯ラーメン」だ。同商品の特長は名前の通り、スープがカプチーノのように“泡立つ”というもの。先月、エースコックからリリースが発表されるやいなや、瞬く間にSNSで拡散されて話題になったのだ。
今月1日にはCM動画もリリースされたが、それを見る限り、確かにしっかり泡立っている。とはいえ、メニュー写真が実物よりも盛られているのは、もはや常識。実際どうなのか…商品を手に入れて説明通り、粉を入れてかき回してみると…。
マジか!? ホントに泡立った! ふわふわとした雲のような泡ができている! 見た目はもちろんだが、食べてみるとしっかり泡の食感が残るという斬新さ。そして泡のおかげなのか味わいもクリーミーだ。
カップ麺の新たな境地を切り開いた、この「衝撃の泡立ち」。一体、どんな天才が考え出したんだ!?
「いやいや、そんな。新商品の企画会議で『ビールを飲んでいる時の泡って、口の中に広がってクリーミーだったり口当たりがいいよね』という話からできたので、ホントたまたまですよ」
というのは発案者であるエースコックの竹林雅史氏だ。
「泡ってシズル感もあるし美味しそうじゃないですか。それで商品化できないかという流れに。それにカップ麺では今までなかったものなのでウケるかなと思って…。
アイディアはいいと周りから言われたんですけど、同時に『いざ中身を作ってみないとわからない』と疑心暗鬼でした。研究している側のスタッフからは『無理だろ、できるかわからん』とはっきりした反応でしたし」
確かにインパクトはあるが、これまでにない商品。周囲もやはりその実現性に疑いを持ったそう。しかし謙遜気味に話す竹林氏だが、意外と図太かった。
「文系の人間なので、わからないけど『いいからやってくれ』としか思わなかったです(笑)。とにかく、なんとかなってくれないかなって。結果論ですけど、ある意味、理系だったり食品に長く携わっている人だと一線を引いてしまうから、知らない方がこういう時はいいのかなと思いますね」
とはいえ当然、開発は難航。通常、企画から発売までかかる期間はおよそ半年。しかし、今回は1年近くかかったという。
「何しろこれまで作ったことがないから、今までのノウハウもないんですよ。普段、そこまではないんですけど、試作も50回は繰り返しましたね。特に一番こだわったのは『泡』です。でも、どれくらい泡立てばいいのか、泡をどれくらい持続させればいいのか手探り状態でした。でも精度が上がるにつれて、他のスタッフも『イケるよ、これ!』とリアクションが変わってきたのは嬉しかったですね」
正解がわからず開発に苦労したが、類似品もない、革命的ともいえる今回の「衝撃の泡」。“味”でくくれば他社からも様々な商品が出ているが、コンセプトからして一線を画す。確かに面白いが、こうした奇抜なアイディアを採用するには不安も大きいはずだ。
「カップ麺でもインスタント麺にもワンタン麺って今は普通にありますよね。でも、あれを最初に商品化したのはエースコックなんですよ。普通の麺と幅の広い麺のふたつの食感を楽しめるようにと『ワンタンメン』を1963年に発売したんです。だから、昔から世の中にないような商品を作ろうという姿勢なんですよ」
竹林さんいわく、この「スーパーカップ」シリーズ自体も今ではロングセラーだが、当時は若者向けに量の多いモノがほとんどなかったそう。斬新さを追求する方針は代々受け継がれているのだ。
「いろいろな商品がある中で毎回ユーザーの方に飽きさせないようにするのは大変。月一で会議をして一度に40個くらい発案はありますけど、実際に商品化されるのは1個あるかないか。同じ業界だけでなく、ラーメンのトレンドなど違う分野の新しいことにも常に目を向けて、ヒントにしようと思ってますね」
同社で商品企画を担当するのは15人ほどだが、発売されるのは年間約200品。リニューアル品もあるとはいえ、新たなアイディアを生むには視野を狭めてはいけないのだ。とはいえ…、
「世間のラーメン店では果物やコーヒーなど使った商品もあるので、会議でも出てくるんですよ。でもユーザーが絞られ過ぎてしまってまだ実現できないんですよね(笑)」
さすがにカップ麺となると、開発にかかるコストも流通量も違う。そこまでの無茶はできないようだ(笑)。では最後に今後、カップ麺業界はどんな進化をするのだろうか?
「2月に弊社でも発売しているんですけど、今は減塩ブームです。これからは若い人の人口も減り、ユーザーのターゲット層も高齢化するので“健康”というワードは切って離せないのかなと思います。その中でも、面白いモノを作っていこうと思います」
(取材・文/週プレNEWS編集部)