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スカイマーク、破綻招いた危険な素人経営 燃料枯渇寸前、為替ヘッジなしの巨額リース…
国内航空3位スカイマークが1月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請して事実上経営破綻した。破綻の理由について、身の丈にあわない欧州エアバス製大型機「A380」の導入や、エアバスに支払う巨額違約金問題ばかりがクローズアップされているが、結局のところ「円安倒産」だったという視点は見逃されている。さらに経営破綻後も、ある石油元売り大手から一時、燃料供給を止められそうになって、慌てて手当てするなどの経緯も明らかになっている。
スカイマークが円安倒産といえる理由は、そもそも高い燃料費や客足が伸びないことで経営不振だったことに加えて、ドル建ての巨額リース債務がのしかかったからである。同社はエンジンや機体を海外のリース企業から借り、ドル建てでリース料を支払っていた。リース支払い債務は約5億ドルと巨額だったが、あろうことかスカイマークは為替ヘッジを行っていなかった。このため急激な円安の影響をもろに受けて、円に直した支払い額が急増する羽目になった。
なぜ為替ヘッジを行っていなかったのか。それは、スカイマークが無借金経営を掲げ、銀行との接点がほとんどなかったからである。これまでメガバンクを含む複数の銀行が取引をもちかけても、スカイマーク側は受け付けなかった。銀行との関係が希薄だったゆえに、為替リスクへの対処という基本的なノウハウを身につけられず、多額の金額をやりとりする企業としての「基本動作」が完全におろそかになっていたのである。あるメガバンクの幹部は「うちがメーンバンクだったら必ず為替ヘッジをやらせていた。銀行に頼らなかったことが完全に裏目に出ている」と話す。
スカイマークの経営破綻は、実に17カ月ぶりの上場企業の倒産だったが、結局はあまたの中小企業の倒産同様に資金繰り破綻であった。1月末に必要な航空機リース代や人権費の支払いなどに必要な決済資金は約40億円だったが、手元に残っていた資金はわずか約3億円程度という有り様だった。かりそめにも14年3月期に売上高859億円を上げていた企業規模を考えると、最後の段階でいかに資金が底をついていたかがわかる。
●燃料供給の拒否寸前
民事再生法の適用申請後も、スカイカークは一部路線を運休しつつ運航を続けているが、それが危うくなりそうな局面もあった。同社は民事再生法の申請と同時に、支払いの停止を求めた保全決定によって資金不足に陥る事態は回避されたが、その背後で、ある石油元売り大手から燃料供給を拒否されそうになっていた。スカイマークは元売り大手から直接、燃料の供給を受けている。航空会社は毎月予定する運航数と燃料費単価にもとづいて購入燃料費を元売り側に「前払い」する仕組みを取っている。このため急な倒産などが起きても、元売りが代金を取りはぐれることはない。
しかし、天候不順などで運航ダイヤが乱れ予定外の運航が増えた場合は、追加の燃料費を翌月末に精算して支払わないといけない。このため急な倒産といった事態が起きると、この分の支払いが滞ることになる。実際に、スカイマークには「不足分の燃料代を支払わなければ供給を止める」という通告が一部の元売りからなされ、あわてて保全処分の一部解除を行って支払いにあてた経過が、スカイマークが裁判所に提出した資料から明らかになっている。
経営破綻後、投資ファンドの資金支援を受けて再生を図ろうとしているスカイマークだが、破綻の経緯やその後の状況をつぶさにみてゆくと決して一筋縄ではいかない様子が見て取れる。これまでに複数の企業が支援を申し出ているが、スカイマークはスポンサー企業選びを進めた上で、5月下旬に再生計画案をまとめて東京地裁に提出する。その後、6月下旬の債権者集会で同案の承認を受け、地裁から再生計画の認可決定を得たい考えだ。
実現可能性があり、収益や集客に結びつけられるしっかりとした内容を再生計画に盛り込めるか、スカイマーク新経営陣の力量が問われることになる。
(文=中原宏実/経済ジャーナリスト)