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女子プロ“顔面殴打”事件の真相。安川惡斗が世IV虎と病室での一部始終を激白!
人気女子プロレス団体「スターダム」で起きた“顔面殴打”事件。
大きな波紋を呼んだ乱闘劇で骨折し入院した女子プロレスラー、安川惡斗(あくと)が主演する映画『がむしゃら』がタイムリーにも3月28日から公開される。
【写真】安川選手の主演作、試合画像はこちら!
作品は、数々の困難を乗り越え、悪役レスラーとして開花していく安川の半生を追うドキュメンタリー。まだ28歳にもかかわらず、幼少時からのいじめ、レイプ、自殺未遂…加えて白内障、バセドウ病、解離性人格障害と、まさに艱難辛苦(かんなんしんく)のオンパレード!な壮絶人生が明かされている。
そこで、退院したばかりの安川選手を直撃し思いのたけを語ってもらったところ、繊細さと天然さ、プロレスへの情熱、そしてなぜか応援したくなる魔性まで入り乱れたものに!
不幸な生い立ちにも関わらず、映画で見せる本人像は困難にもまったくへこたれない。それどころか他人を否定せず、微笑みをたたえて自らの悲劇を晒(さら)す様には心配を通り越して苛立ちを覚えるほど…。
一体、彼女は強いのか、弱いのか? 人格者なのか、それとも「バカ」なのか? そして今回、問題となった“顔面ガチボッコ”の当事者、世IV虎(よしこ)との因縁、関係は!?
* * *
―映画の中で「誰も悪くない」と言っていましたが、そんなひどい目にあってもなぜ人を否定しないんですか!?
安川 生い立ちですかね。おじいちゃんがアルツハイマー、おばあちゃんは乳がん、お兄ちゃんは反抗期、お父さんは単身赴任で、それでお母さんは気が滅入っちゃって夜な夜な泣いて…。
じゃあ誰が悪いのか考えたけど、誰も悪くないって。でも逆に、溜めに溜めたあたしも悪いし、お母さんもワガママのひとつふたつ言ってもよかったんじゃないか、お兄ちゃんも壁に穴とか開けてないで母親支えろよ!とか。みんな、ボタンを掛け違えてて。
だからこそ自分の非は何か、まず考えるんです。なぜこの人を怒らせているのか、悲しませているのか。わからなければ本人に聞けばいいし、同期のコたちが辞めていく時も、全員に話を聞いて「おまえがそういう気持ちならわかった!」と。
―面倒見がいいんですか?
安川 なんか首突っ込んじゃうんですね。バカなんです(笑)。恋人同士の痴話喧嘩の間に入っちゃって、終電逃してあたしだけ床で寝て、ふたりはベッドでイチャイチャしてたり(笑)。同期のレスラーの宝城(ほうじょう)カイリからのメールが心配で、夜中、タクシーに1万円払って駆けつけたら本人の中ではもう解決してたってことも(笑)。
空回っちゃうんですよ。自分がいいことしてる自覚はないんですけど、気になって仕方ないことはどうしても知りたい。噂話で左右されるのはおかしいと思うんですよね。
―その状況でキレてないと、逆に心配になるんですが…!?
安川 自己防衛ですかね。スポーツカウンセラーに「ツラいことほど笑ってしまう癖がありますね」って言われたことがあります。映画を観直したら、確かにずっと笑ってるんですよね。「うわっ、気持ちワル!」って(笑)。
特に病気で入院を勧められた時、すごくヘコんでたんですけど、カメラ回したらムリして笑ってて。ああ、あたしが気持ち悪いのはこういう部分か、と勉強になりました。だから人にも誤解されやすいっていうのもあるだろうし。
―キレイだし、ジェラシーも持たれるのでは?
安川 そうですか!? 最近ツイッターとかで「美人レスラー」と言われてますけど、今まで言われてなかったし(笑)。 “悪の女優魂”とか“イカれたレスラー”として会社には使ってもらってたんで。「あれ、あたし、いつからビジュアルレスラーになったんだ!?」ってビックリしてます(笑)。
正直、不器用なんで…。体も中堅だし、スピードやパワーがあるわけでなし。技術も突出したものはなくて、全部パフォーマンスで補っているという(笑)。でも戦っている時は演技してないですよ。必死ですもん(笑)。
―そこを補うためにゴールドジムにも通い始めた?
安川 あ、寝技は自信あるんですよ! 同期から下には負けたことないですし。でも確実に一本取られるのは引退した夏樹☆たいよう選手。あの人には勝てませんでした! たぶんスターダムでケンカが一番強いのは夏樹さんです。世IV虎さんも夏樹さんの言うことだけはちゃんと聞いてました(笑)。
―人に対してぶつけない怒りが、初めてプロレスで出せたという?
安川 そうなんですよ。「戦う人間になりたい」という大雑把な夢を持っていて、そこから女優業、プロレスラーとつながっているんですけど。スカウトされた時は「ココだ!」って思いました。その時、初めて観たスターダムは華やかで「スゲー!」って。でも「何か足りない…悪役だ! 悪役やります!」って。でも腕立て1回もできないっていう(笑)
―よくなれましたね(笑)。
安川 練習生だった時に総合格闘技を習い始めて、なんとかプロテストのレベルまで上げてもらって。ホント気持ちだけでゴリ押しした感じ。だから同期のみんなより遅いデビューになったんですけど。
練習生の時にバセドウ病だってわかったから、それも良かった。それまで300mも歩けば座り込んだり、階段上がるだけでゼーハー言ったり動けないのが当たり前で。ホント、ひ弱がぴったりくる女のコだったんです。首のヘルニアをやった後からはミッドブレスさんで見てもらって、体もできてきて。昔は1試合やったら全身打撲みたいで動けなくなってたんですけど、あれ?痛くない、もう1試合できるって。人の顔面にドロップキックが届くようになって、それも楽しくて。
やった分だけ技もスキルも上がるし、お客さんも応えてくれるし、ホント裏切らないですね、頑張った分は。練習では「ちゃんとやらないとこんな風になるぞ」って怒られる見本みたいな劣等生だと思うんですけど、評価してくれるのはお客さんじゃないですか。
―怒りや悔しさを表現のエネルギーにするしかないと?
安川 はい。試合で出せばちゃんとお客さんも応えてくれるし、チャンピオンにも4度目の正直でやっとなれたし。ただ、病気とかで去年は全然活躍できなかったんで、「チクショー! 2015年はヤったるぜ、スターダムかき乱してやるぜ!」と思ってたら、こんな世間様を騒がせるかき乱し方をしちゃったという(笑)。
―さすが悪運が強い(笑)。ところで、上下関係はやっぱり厳しいんですか?
安川 厳しいです。昔の全女時代に比べたらぜんぜんユルいかもしれませんけど、ミーティングとかあると、先輩がいる前では後輩の発言ってめっちゃ少ないんですよ。でも「スミマセン、それっておかしいんじゃないですか!?」って言っちゃったり。空気読んでないのはわかってるんですけど…たぶん嫌われるタイプだと思います(笑)。
1期上だったら敬語で、だからといって年齢が上の人生の先輩に対してはどうなのか、プライベートでもそうするのか…とか難しいんですよね。そういう歪(ゆが)みも今回の事件で出たとは思います。あたしは世IV虎さんより7つくらい年上ですけど、でも世IV虎さんは先輩です。口をきいてもらえなかったら「話し合おうよ」って強くは出られない。コミュニケーションが取れてなかったですね。
でも病院に来て手を握ってくれた時は、ホントに…。まだ見えないし口もうまく動かなかったんですけど、謝って、思ってることを全部言って。「もういいよ。ゴメンありがとう」って言ってくれて。それでもう、お互い喋らず…。ずっと眠れなかったんですけど、初めてその夜に眠れました。来てくれて、心の引っ掛かりがひとつ抜けたんじゃないかなと思います。
何が正解かわかんないですよね。歯止めが効かなかった部分もあったでしょうし、最初から折ってやろうなんて気持ちはなかったと思うんです。開始1分で折れてたんですよ。で、ギブアップしても折れてるものは変わんないし(笑)、「鼻血出てるな」くらいで痛くなかったんです。まぁ後半は気合いだけで立ってて、うろ覚えですけど。
―さすがプロレスラー! 試合を観ずに「プロ意識がない」とか言う人には「外野は黙っとけ」って?
安川 昨日の試写会でも「プロレス観にこいやー!」って言っておきました(笑)。
―世IV虎選手にも「早く出てこいやー!」とかは…?
安川 言いたいんですけどね…。あたしも知りたいんですよ、どうしてほしかったのか。あたしはたくさん喋らせてもらったし、あとは世IV虎さん待ちなんで。彼女から何か発信があったらいいなって。
―復帰は10月だそうですが。結構ありますね。
安川 復帰できるって、なんか…想像できるんで。あー、あたし、10月(リングに)立ってるなって、自信はあります。バキバキにシックスパックにして出ようかな!
―絶対、やっぱりプロレス向いてますね!
安川 たぶん向いてます。耐えるスポーツじゃないですか。忍耐強さだけはあるんで(笑)。
(取材・文・撮影/明知真理子)
●映画『がむしゃら』は、渋谷・イメージフォーラムほかで3月28日(土)より公開