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昨年嵐で傷み撤去されたオーガスタ17番の松の木が“アイクズツリー”と呼ばれたゆえん
“アイクズツリー”までは、マスターズティからは210ヤード、メンバーズティからは125ヤードほどだ 写真・Getty Images
今シーズン最初のメジャー・マスターズが近づいてきた。“アイク”の愛称で親しまれたドワイト・D・アイゼンハワー大統領は大のゴルフ好きで、オーガスタナショナルGCのメンバーだったが、17番マスターズティから210ヤード先、フェアウエー中央よりやや左に立つ、高さ20メートルほどの樹齢150年ともいわれる松の木が天敵だった。学生時代、フットボールで左ヒザを痛めたアイクのスイングはものすごい手打ちのスライスボールで、この木にたびたびボールをぶつけていた。
昨年2月、この木が猛烈な冬の嵐で修復不可能とされるまでに傷み、撤去された。
飛距離300ヤード超の時代、この木はマスターズにおいて戦略上それほど重要ではない。それでも1989年、このホールで2打目を直接決めてイーグルを記録している中嶋常幸は、「あの松の木はティショットでけっこうプレッシャーになる」と存在意義を説明し、昨年のマスターズで初めて木のなくなった17番を見た多くのファンから「間が抜けたようでつまらない、とにかく寂しい」と声が上がった。53年、クラブのメンバー会議の終盤、ボビー・ジョーンズとともにオーガスタナショナルGCを造り、マスターズ委員長でもあるクリフ・ロバーツが「他に提案などありませんか」というと、出席していたアイクが「あの17番の松の木だが……」と切り出した。ロバーツ委員長は「その件はすでに終わっていますので閉会」と遮るようにしてミーティングを閉じた。
合衆国大統領の意見を遮ったと、松の木には“アイクズツリー”という名がついた。
このときロバーツ委員長が「クラブについては私に任せて、あなたは国のことを考えていればいい」といったとも伝えられるが、それは誇張されたものだ。普段からアイクはロバーツに「17番の木を切ったらどうか」といっていて、その中であったやりとりであり、大勢のメンバーがいる場で大統領に恥をかかせるような言葉が使われたのではない。
まだ正式な発表はないが、クラブはアイクズツリーの復元に向けて着々と準備している。
歴史的樹木の重要さをクラブは十分認識しているし、木がない17番はやさしすぎる。「アイクズツリーのDNAを採取し、最も原木に近い樹木を探している。松の木に限らず景観、戦略性、強度などあらゆる面から新しい木を模索中」とは、あるクラブ関係者からの情報だ。
今年も残念ながら17番にツリーはないが、おそらく来年のマスターズには復活するだろう。
文・岩田禎夫
週刊パーゴルフ(2015年3月31日号)掲載
岩田禎夫(いわた・さだお)
1933年生まれ、神奈川県出身。報知新聞にてゴルフをメーンとするスポーツ担当記者として活躍後、70年にフリーのゴルフジャーナリストに転向。以降、現在まで米PGAツアーを中心に世界のゴルフを追いかけている。
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